近年の第四次産業革命といわれる、5G、IoT、ビッグデータ・AIなどの情報通信技術の発展は、世界経済のグローバル化を一層進展させ、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった流れを一変させた。高度な情報通信技術は、サプライチェーン上の情報を国家の枠組みを超えて集約、リファインし最適化できるようにした。その結果、高い経済合理性を実現し世界市場を席捲する企業の出現をみる状況にある。
市場がローカルから世界規模となり、富のスケールが桁違いに大きくなった一方で、富の配分の偏り、格差の拡大をもたらし、さらにはリテラシーや教育の格差、個人の購買情報等の囲い込みのみならず個々人自身が監視される時代になり、人権問題まで議論が及ぶ状況にもなっている。
このようにイノベーションによる経済拡大が進む一方で、社会の混迷が深まっていくような世の中において、「グローバルエコノミー」の研究対象は、一国のマクロ経済政策にとどまらず、世界経済から人間の活動のあり方まで、その研究対象のすそ野はどんどん広がっている。
経済理論、経済政策、通商政策、地域経済(中国他)、AI・ビッグデータ、農業政策・ゲノム、医療経済、経済史など
プロジェクトリーダー | 研究主幹 渡辺 努 |
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プロジェクトメンバー | 主任研究員 水野 貴之 ・ 主任研究員 大西 立顕 ・ 研究員 久野 遼平 ・ 上席研究員 家富 洋 ・ 研究員 渡辺 広太 |
外部協力メンバー | 石川温(金沢学院大学)、藤本 祥二(金沢学院大学)、Didier Sornette (ETH Zurich)、池田裕一(京都大学)、飯野隆史(新潟大学)、吉川悠一(新潟大学) |
プロジェクトの目的 | 大規模ビジネスデータを収集し、企業・金融機関・家計・政府などの経済行動の背後にある仕組みを解明する。具体的には、経済ネットワーク(企業間ネットワークや貿易ネットワーク)の分析、人口動態の分析、資産価格変動の分析などを行う。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 渡辺 努 |
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プロジェクトメンバー | 主任研究員 水野 貴之 ・ 主任研究員 大西 立顕 ・ 研究員 久野 遼平 ・ 上席研究員 家富 洋 ・ 研究員 渡辺 広太 ・ 主任研究員 上田 晃三 |
外部協力メンバー | ジェス・ダイアモンド(法政大学)、藪友義(慶応大学)、庄司俊章(成蹊大学)、David Weinstein (Columbia Univ)、Jessie Handbury (Univ of Pennsylvania)、Taehun Jung (Kyungpook National University) |
プロジェクトの目的 | 商品価格(消費財、耐久家電など)と不動産価格(マンション売買価格、賃料など)の変動の仕組みを解明する。特に、個々の価格とその集計値(物価指数、不動産価格指数など)の変動特性とを統一的に理解することを通じて、インフレ、デフレや不動産バブルのメカニズムの解明を目指す。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 瀬口 清之 |
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プロジェクトの目的 | 新型コロナウイルス感染拡大や米中対立激化というリスク要因はあるが、中国経済は当面安定的に推移する見通しである。ただし、2020年代半ば以降、中国経済は高度成長期から安定成長期への移行が始まると見られており、その前にマクロ経済の安定確保と構造改革の実行をいかにして調和させるかが重要課題となる。そこに日米中関係のリスク要因が影響を及ぼすことが懸念される。このような現状を踏まえ、それぞれのファクターが相互に及ぼし合う影響に注目しながら、中国経済の全体像をわかりやすく描き出す。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 小林 慶一郎 |
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プロジェクトの目的 | 日本の生産性向上、経済成長促進のための新しいエクイティ・ガバナンス(株主による企業統治)の在り方、そのための資本市場改革を研究する。特に、従業員による株式保有に着目し、株主、経営陣、従業員の三位一体の経営構造の可能性を探る。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 小林 慶一郎 |
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プロジェクトメンバー | 主任研究員 小黒 一正 ・ 上席研究員 寺澤 達也 |
外部協力メンバー | 佐藤主光(一橋大学大学院経済学研究科教授)、小林庸平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社副主任研究員) |
プロジェクトの目的 | コロナ危機に対応して、医療提供体制改革の在り方と中小企業のバランスシート悪化に対する処方箋を検討し、実行可能な政策提言をとりまとめ、関係各所に発信する。さらに、間近に迫る超高齢化社会の政策課題を研究し、政策提言のとりまとめと発信を目指す。また、財政が危機的状況に陥った場合の政策対応、世代を超えた超長期の政策課題への対応について、包括的な研究を行う。ディープラーニングによる人工知能の進歩と市場や社会とのかかわりについても、世代間問題の観点から考察する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 小手川 大助 |
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プロジェクトの目的 | アジア開発銀行、香港銀行監督局、タイ・フィリピン・インドネシア・ベトナム・マレーシア・ラオスの各財務省/各中央銀行/各付属研究機関や大学との間で、幹部人材訪日の際のシンポジウム開催などを通じて人的ネットワークを拡大する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 山下 一仁 |
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プロジェクトの目的 | 林政は、森林の多面的機能を林業保護の理由にすり替えてきた。単に業界が存在するから保護するというのではなく、国民経済的な視点からあるべき林業の姿や林業政策の必要性を検討する。さらに、林業の成長産業化や木材自給率向上の主張に基づく誤った政策によって、木材供給が増加し、山元の立木価格の低迷を招き、再造林、ひいては将来における木材の安定的な供給を困難にしている。これらを踏まえて、持続可能な林業のあり方、適切な林業政策について、検討する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 山下 一仁 |
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プロジェクトの目的 | 安倍政権下では、減反の実質的強化や不要な自由化対策など、制度改悪や農業保護が増大した。さらに、国民と農業の距離が遠くなっているため、農業についての誤った認識の上に政策が展開されている。また、農業経済学は費用便益分析に基づく政策分析を避けてきた。このような観点から、農政改革について政策提言を行う。 また、ITやAIの農業への活用については、農業IT協同組合の設立 、トレーサビリティへのブロックチェーンの活用についての検討が必要となる。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 山下 一仁 |
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プロジェクトの目的 | トランプはWTOを無視した通商政策をとってきた。WTOの立法的な役割は機能不全になり、協定作りは困難になっている。バイデン政権では、多国間の枠組み重視の政策に転換するものと考えられる。アメリカにTPPへの復帰を慫慂することにより、TPP協定の内容をWTOに盛り込み、WTOの立法的および司法的な機能を回復させることが期待できる。そのような観点から事態の推移に応じた分析と政策提言を行う。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 栗原 潤 |
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外部協力メンバー | 永岩俊道(元空将)、西田竜也(東海大学教授)、Anthony Saich |
プロジェクトの目的 | 米中間摩擦が激化するなか、日本は如何なる形で平和で安定した国際関係に貢献出来るのか。軍事的な視点およびDual Use Technology (DUT)の視点から検討を加え、内外研究機関との情報交換と政策提言を含む対外発信を行う。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡嵜 久実子 |
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プロジェクトの目的 | 中国の国際資本フローについて、現状分析を行い、資本取引規制緩和のあり方等について考察する。また、同国の国際金融市場におけるプレゼンス向上の原動力と、今後の課題について情報を整理する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡嵜 久実子 |
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プロジェクトの目的 | 中国財政の健全性及び持続可能性に関する研究を継続する。とくに地域間格差を埋める上で重要なインフラ整備と高齢化が進む中での社会保障制度の改革について、中央政府と地方政府の役割分担及び財源のあり方に重点をおき、考察を深める。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡嵜 久実子 |
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プロジェクトの目的 | 過剰債務問題への対処を進めながら、金融の市場化、イノベーション、対外開放に取り組む中国の金融セクターが直面する課題について、効率性、透明性、リスク管理能力の向上に焦点を当て、現状分析と問題解決への道筋を探る。 |
プロジェクトリーダー | 中島賢太郎(一橋大学イノベーション研究センター) |
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プロジェクトメンバー | 研究主幹 岡崎 哲二 |
外部協力メンバー | 齊藤有希子(早稲田大学)、井上寛康(兵庫県立大学) |
プロジェクトの目的 | 日本経済の持続的成長にとってイノベーションが必須であることはいうまでもない。本研究は、特許に関する長期マイクロ・データを構築し、その分析を通じてイノベーションの発生メカニズムとイノベーションに対する政策の効果等を明らかにする。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡崎 哲二 |
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外部協力メンバー | 坂井功治(京都産業大学経済学部)、澤田充(日本大学経済学部) |
プロジェクトの目的 | 戦前期日本のデータを用いて、銀行が地域間資金配分の効率性に与えた影響、中央銀行の流動性供給が金融システム、産業に与えた影響等を分析する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡崎 哲二 |
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外部協力メンバー | 大西健(米国連邦準備制度理事会)、若森直樹(東京大学経済学部) |
プロジェクトの目的 | 日本の電力産業は20世紀初めに多数の分散的な企業によって発展を始め、合併や企業間の連携を通じて大規模なネットワークを形成してきた。戦前期日本の電力産業を取り上げて、ネットワーク拡大のメカニズムとその含意について、マイクロ・データに基づいて分析する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡崎 哲二 |
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外部協力メンバー | 松本朋子(東京理科大学理学部) |
プロジェクトの目的 | 戦前以来の日本の長期的経済発展が、どのような政治的・社会的バックグラウンドの下で実現し、逆に経済発展が政治・社会の構造にどのようなインパクトを与えたかを、マイクロ・データに基づいて定量的に分析し、理解する。 |
プロジェクトリーダー | 研究主幹 岡崎 哲二 |
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外部協力メンバー | 宮川大介(一橋大学経営管理研究科)、庄司俊章(成蹊大学経済学部)、Serguey Braguinsky(メリーランド大学経済学部) |
プロジェクトの目的 | 経済発展の過程で産業・企業組織は大きく変化する。19世紀末以降の綿紡績業の企業別データを用いて日本企業の国際化を研究する。他に生産組織の変化が人々の働き方に与えた影響、複数プラント企業の成長とプラント管理等についても検証する。 |