エネルギー・環境

「エネルギー・環境」研究の目的

エネルギー・環境・資源に関する政策課題について、多様な角度から分析し、提言をしてゆく。

研究分野

  • イノベーションを通じたエネルギー・地球温暖化問題の解決に関する研究
  • 原子力安全の確保に関する法的分析
  • 脱炭素化がもたらす市場構造及び産業構造の変化に関する分析
  • 持続可能な海域の総合利用の検討と日中交流

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研究テーマ

プロジェクトリーダー 研究員 渡辺 凜
プロジェクトメンバー 研究主幹 芳川 恒志
プロジェクトの目的

今や世界的潮流となった「脱炭素」のうねりを受け、日本のエネルギー業界は急ピッチの変化を求められている。2050年までのカーボンニュートラルを目指す、といった野心的な目標の一方で、再エネ普及のためのインフラ整備や、福島事故の処理、核燃料サイクルの是非など、課題が山積している。

本研究では、こうした課題に対する日本の気候変動・エネルギー政策における対応について、次の2つの問題認識を持っている:

  • 市民社会に開かれた議論が十分に行われ、正当性や透明性のある形で政策形成にインプットされてこなかった可能性があること(幅広い利害関係者によるインプットの不足)
  • 国内外の、気候変動・エネルギー政策に関係する幅広い分野の専門的見解や知見、およびそれらの複合領域における課題に関する議論が、正当性や透明性のある形で政策形成にインプットされてこなかった可能性があること(幅広い専門性や複合的課題に関するインプットの不足)

喫緊の課題は、日本社会に特有の経緯や状況を踏まえ、エネルギー政策に対する国民の信頼の回復につながるような、社会的正統性の担保されたプロセスを整え、その中で日本のエネルギー利用のあり方について、市民社会を含む幅広い利害関係者による議論と、幅広い専門性やそれらを横断する課題に関する議論を重ね、未来に向けたビジョンを描くことではないだろうか。

日本(特に日本の公的な政策形成プロセス)では、気候変動問題やエネルギー利用をめぐるこうした社会的議論の経験が浅い。そのため、エネルギー変革の先進地でもある欧州のエネルギーおよび気候変動対策に関わる議論の内容およびプロセスを研究し、EUレベル、また主要国レベルでどのような議論が政策形成にインプットされているかを知ることは有用であり、本研究の目的である。

本来、欧州における政策に関する議論は(エネルギー分野に限らず)、市民社会の参画(public participation)や社会的包摂性(social inclusiveness)をめぐる議論、社会全体の連帯と、そのための世代間および国家間の差異をめぐる歴史的・倫理的議論や、環境問題やエネルギー貧困といった諸課題に関する道義的責任(obligations and responsibility)、あるいは社会

的意思決定の公正さ(justice)に関する議論といった、政治的価値に関する議論をはじめ、多岐にわたる論点が検討されている。日本では特にそうした議論に対する理解が欠落しており、そのため、欧州の先進事例に学ぼうとしても、政策の全容や肝となる考え方を十分に把握できない、という問題に直面していると考えられる。

こうした問題認識の下、本研究ではEUならびに欧州主要国の政策や制度、また気候変動やエネルギーをめぐる議論を調査し、丁寧に分析することで、欧州の政策に対する理解を深め、日本のエネルギー政策へのインプリケーションを導くことを目指してきた。具体的には、主として政策科学的なアプローチを用い、EUおよびその関連機関、また欧州主要国の政策文書等を分析した。

そこで本年は、これまでワーキングペーパーとして整理してきた(「日本への含意」を含む)分析の結果を踏まえ、さらなる文献調査や関係者へのヒアリングを行うと同時に、次の活動を始めたい。すなわち、若手研究者によるワークショップ形式で、幅広い利害関係者(a)や幅広い専門性や複合的課題(b)による、「日本社会にとっての気候変動・エネルギー問題」あるいは「日本社会が抱える諸課題と気候変動・エネルギー問題の関わり」を模索する研究会である。従来のエネルギー政策や、既に発表されているGX基本方針のスコープに留まらず、より広がりと深みのある形で、日本社会と気候変動・エネルギー問題を結びつけるような発想や知見が得られることを期待している。

こうした検討の趣旨については、日本のこれまでの政策文書(2021年に発表された第6期科学技術イノベーション基本計画など)においても、様々な課題を解決するための社会実装の推進と総合知の活用が重要であるとして、その必要性が認められている。

プロジェクトリーダー 研究主幹 杉山 大志
プロジェクトメンバー 主任研究員 堅田 元喜
外部協力メンバー Ronan Connoly博士(米国環境研究・地球科学センター)、Willie Soon博士(米国ハーバード大学)ほか
プロジェクトの目的

地球温暖化問題に関する科学的知見および環境影響評価の現状を多角的に調査し、経済や安全保障などとのバランスのとれた温暖化対策の在り方の検討に資する。

プロジェクトリーダー 研究主幹 芳川 恒志
プロジェクトメンバー 主任研究員 段 烽軍
外部協力メンバー タナカグローバル代表 田中伸男
プロジェクトの目的

2015年のパリ協定を経て世界の潮流となった脱炭素(ネットゼロ)への動きは、現在開催されている国連気候変動枠組条約会議(COP28)を持って新たなステージに向かおうとしている。脱炭素への動きとは、化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギーシフトを意味しており、変化のダイナミズムはエネルギー分野を大きく超えて我々の生活のあらゆる局面に現れてくることが予想される。その中でも特に大きな影響が予想されるのが地政学の分野である。従来、化石燃料の安全輸送、安定供給が、世界の富の配分や安全保障に大きな影響を与えてきた。そして化石燃料と比較してその偏在性のみならず貯蔵の方法、コストなどが全く異なる再生可能エネルギーへのシフトということは、輸送手段や安定供給のための新たな戦略、そして技術革新が求められることになる。

さらに、化石燃料から再生可能エネルギーがエネルギーの主流になることで最も大きな影響を受けるのが中東産油国である。中東産油国では、現在、様々な再生可能エネルギープロジェクトが始まっている。これらの国では、再生可能エネルギーを持って、国内の膨大なエネルギー需要を賄い、根強く残る石油依存経済構造からの脱却を図ろうとしている。しかし、その内実や現実的な展望はいまだ明らかにされていない。世界のエネルギー危機と相まって、化石燃料への依存はこのまま継続することが予想されるものの、中長期的には脱石油経済に向けてさらに多くの変革を行っていくことが求められている。また中東地域はもともと多くの不安定要素を抱えており、今後さらに中東情勢が流動化すると、中東の地政学、世界の安定に大きな影響を与える可能性もある。中東地域は国際政治を色濃く反映するとよく言われるが、中東の動向はただちに世界の安定と政治経済に大きな影響を与えることになろう。

一方、自国のエネルギー自給率の低い日本は、エネルギー需要はもとより、地球温暖化などの動向から今後さらに大きな影響を受けることになる。エネルギーシフトの時代に入って、継続するエネルギー危機に伴うエネルギー需要や地政学への影響を鑑み、日本は世界の動向を十分配慮しながら長期的な観点からエネルギー・温暖化政策を企画立案していく必要がある。

本研究会はこのような問題意識をもって、脱炭素、中東、エネルギー地政学という3つの分野に焦点を当てて研究を行っていく。現在、この3つの分野はそれぞれ急速に変化を遂げているが、これらを個々にではなく、総合的に考察していくことが本研究事業の重要なポイントである。2024年度は特にこれらの分野の相互作用に着目しながら研究活動を行う。

研究者一覧

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