フレーミングとは: 人間が状況を理解するために使う思考ツール
リフレーミングとは、新しいフレーミングで物事を改めて考えることである。 |
2024年の選挙戦は事前のほとんどの世論調査は僅差と伝え、トランプ自身も投票結果の僅差を予想して、投票開始直後に激戦州、ペンシルバニアで「大規模な不正投票が行われている」とSNSに投稿した。[1]
しかし、蓋を開けたらほぼ全ての激戦州でトランプの圧勝となった。ほとんどのメディアではハリスへの投票数とトランプへの投票数を比べるチャートが載った。
Source: https://www.nytimes.com/interactive/2024/11/05/us/elections/results-president.html
これらのビジュアル化は間違ってはいないが、今回のトランプ圧勝は投票データをリフレーミングした方が本質的な力学が分かりやすい。
投票の集計結果はまだ終わっていなく、この原稿を書く段階ではまだ98%程度なので最終的なデータではないが、おおよその結果は明確である。
実はトランプは前回の選挙に比べて得票数をあまり伸ばし
しかし、
つまり、「投票しなかった人」の大幅な増加が今回の結果をもたらしたのである。前回のコラムの無投票を含む選挙結果のリフレーミングに今回の選挙結果のデータを加えると、下記のようになる。
有権者のうち、最も多かった人の行動は「投票しない」というものだった。
また、トランプに圧勝をもたらすには人口のどれくらいの人が彼に投票したのか。アメリカの人口が昨年の時点では334ミリオンで、有権者の数は推定245ミリオンである。[2] アメリカでは日本と違い、有権者に自動的にハガキが届くのではなく、自ら投票登録をしなくてはいけない。別の機会に紹介するが、「どうすれば有権者を減らせるか」ということが、地域によっては政治戦略となっている。つまり、有権者数よりも実際に投票登録をした人の方が多少少ない。そこで、投票登録をした人たちが投票するわけだが、「そもそも投票登録をしない人」と、「投票登録をしているが投票しなかった」人たちの数は相当なものになるのだ。
逆にいうと、国民の23%、有権者の31%程度でトランプ圧勝と
有権者の行動が、アメリカ独特の選挙制度を通してこの結果をもたらしたので「アメリカがトランプを選んだ」というフレーミングには間違いではないが、国民の31%が選んだわけである。投票しなかった人は「どっちでもない」という考えだったり、「このままだったらトランプかもしれないが、それでもいい」という考え、及び「我々は社会から見放されているので社会を見放している」など、意図は様々である。今後、この人たちの世界観、価値観などが研究されていくだろう。しかし、この人たちは世論調査が最も届かない人たちでもある。
しかも、「前回はバイデンに投票したが、今回は誰にも投票しなかった」という人たちの実情がクローズアップされるだろう。
これからこのシリーズではアメリカの政治政道、選挙などのリフレーミングを続けていく。
[1] https://www.cbsnews.com/news/trump-victory-online-claims-election-fraud-quieted/
[2] University of Florida Election Labの推定。https://election.lab.ufl.edu/