イベント開催報告  エネルギー・環境

CIGS 原子力安全研究会 成果報告ワークショップ 「原子力のリスクと対策の考え方~社会との対話のために~」

2016年3月4日(金) 13:30 ~ 17:30 開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3

開催趣旨

 CIGS 原子力安全研究会は、原子力の現状における安全課題を明確化し、対策の考え方を体系的に整理して、社会に発信し議論していくことを目的に2014年10月に発足しました。
 この問題意識の原点は、「部分最適は全体最悪を生む」にあり、システムのバランスを見て総合的に安全性を向上させる「システム安全」の考え方にあります。要は、システムを過不足なくバランス良く設計し運用して安全を作り上げることが肝要なのです。
 福島第一発電所事故を受け、各機関において安全思想の基本概念である「深層防護」について様々な議論がなされていますが、深層防護の両輪である「安全設計」と「安全運用」の役割分担は未だに結論が見いだされていない状況にあります。
 原子力発電所では、安全設計や安全運用に加え、「安全規制」も加わり、それらが分担・協力して原子力の安全性を高めています。しかし、この安全の議論のもととなる定量的なリスクが不在のために、多数個別の安全対策に追われ、結果的に国民に負担を掛けることになっています。
 原子力は社会性が高いため、システムを合理的にとらえるリスクマネジメントの視点で安全を評価し社会と対話を図ることが必要とされています。
 以上の問題意識から、以下のような4つの課題に対し、研究会から提言するとともにワークショップにおいて議論を行いました。
① シビアアクシデント対策を含む深層防護の考え方を論理的に再構築する。
② 電気事業者が新規制基準に従い実施している安全対策とその費用に関する情報を収集し、安全対策の現状(対策の項目やコスト)を明らかにする。
③ 確率論的リスク評価は、現在の安全の水準を総合的に評価し定量化する特徴を持つので、安全評価と対策立案の過程に有効活用する方法を検討する。
④ 原子力の社会的受容を考えるに際し、リスク評価だけではなく、ベネフィット(例えば、気候変動対策、環境対策、エネルギーセキュリティーなどに対する有効性)も考慮してエネルギーシステムとして比較評価する方法を検討する。


報告書(PDF:3060KB)追加添付しました
付録集(PDF:11969KB)追加添付しました

プログラム(PDF:144KB)

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趣旨説明

  • 氏田 博士
    キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員
    「原子力の役割と安全」
    発表資料(PDF:2013KB)
    160304_ujita_photo.JPG

講演

  • 富永 研司
    原子力安全推進協会 部長
    「原子力の安全思想の再構築について」
    発表資料(PDF:2217KB)
    160304_tominaga_photo.JPG
  • 安藤 弘
    株式会社 原子力安全システム研究所 研究員
    「電気事業者の安全設備対策の状況」
    発表資料(PDF:6051KB)
    160304_andou_photo.JPG
  • 村松 健
    東京都市大学 客員教授
    「リスク情報を活用した安全確保・向上の考え方」
    発表資料(PDF:1375KB)
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  • 氏田 博士
    キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員
    「合理的な安全の考え方による社会との対話」
    発表資料(PDF:1340KB)
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パネルディスカッション

  • 【モデレーター】
    氏田 博士
    キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員
    「パネルディスカッションの進め方と提言」
    発表資料(PDF:700KB)

    【パネリスト】
    富永 研司 原子力安全推進協会 部長
    安藤 弘 株式会社 原子力安全システム研究所 研究員
    村松 健 東京都市大学 客員教授
    関村 直人 東京大学 教授
    発表資料(PDF:1271KB)
    <関村氏の発言要旨>
     ・公衆との対話では、安全性向上のための意思決定プロセスに組み込む必要があり、食物、自治体、風評被害、等「影響」の多面性を踏まえたリスク概念が必要である。
     ・深層防護では、外的事象の扱いが重要。外的事象を考えると、外力に対する各層の防護機能の耐性をどう決めるかが課題となる。発電所単体ではなく地域の防災まで含めた体系へ「深層防護」を拡大しなければならない。

    尾本 彰 東京工業大学 特任教授
    発表資料(PDF:1172KB)
    <尾本氏の発言要旨>
    ・信頼性データと手法への信頼が不十分、環境影響評価手法が未成熟、社会的安全目標、契約としての安全目標など、リスク評価を原子力界に根付かせるために考えねばならない課題である。
    ・「技術」「人とマネジメント」「制度」を考慮した包括的リスク評価が必要である。

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    (左から、氏田氏、富永氏、安藤氏)
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    (左から、村松氏、関村氏、尾本氏)