CIGS中国研究センター

現地報道からの情報
相次ぐ海底ケーブル切断事件(2025年9月)

台湾と東南アジアを結ぶECA2海底ケーブルが、9月1日に接続中断になり、台湾からシンガポールの通信に影響が出た。台湾のネットユーザーによる監視サイト「台湾海底ケーブル地図」によると、24本の国内・国際海底ケーブルのうち9本が既に断裂している。これに対して、台湾のデジタル発展省(数位発展部)は、「現在我が国の国内海底ケーブル10本は全て稼働中。国際海底ケーブル14本のうち3本が修理を待っている状態。事故の詳細原因については、自然災害か人為事故によるものか調査中だ」と声明した。今年に入り、台湾周辺の海底ケーブルが破壊される事件が頻発しており、台湾社会では不安が続いている。

2025年1月3日、基隆港の外海にある国際海底ケーブルが、カメルーン籍の貨物船「順興39」によって破壊されたと思われる事件があった。「順興39」は少なくとも2024年12月28日から台湾の北部海域を航行し、海底ケーブルの断裂点に錨を下ろしたままで航行していたこともあった。当該船は香港で登録した会社に属し、船員は全員中国籍で、所有者は香港籍、そして唯一の管理者は中国籍の郭文傑。台湾国家安全局はこの事件を「境外敵対勢力」による脅威だと認定したが、中国・国台弁はこれを「毎年世界中に何百件発生する事故」だと述べた。

2025年2月25日、台南の海巡署は、トーゴ籍の中国貨物船「宏泰58」が将軍漁港の北西方面海域で怪しい動きをしていることを発見、駆逐や監視に当たっていた。その後、同地点にある台湾本島と澎湖諸島を結ぶ3号海底ケーブルが切断されたとの通報を受けて、「宏泰58」の乗組員を拘束・連行した。当該船の船員は全員中国籍だった。船尾には「善美7」という別の船名をつけており、船を特定されないよう偽装していた可能性もある。

国台弁スポークスマンの朱鳳蓮は「このような事件は、毎年世界中には何百件もある。これは『極めてよくある海上事故』であり、『グレーゾーン作戦』というのは『民進党当局の政治的な操作』だ」と述べた。台湾の検察官・徐書翰は、「宏泰58」の船員が中国政府の指示を受けて行動したという直接の証拠や、中国の党・政・軍と関連するメッセージは見つかっていないことから、「現在は船長が意図的に海底ケーブルを破壊したということだけは認定できるが、中国から指示を受けたかどうかは認定できない」と表明した。

補足情報

中国のポンプ浚渫船(海底や川底の砂や泥を吸い上げて運搬・処理するための作業船)は頻繁に台湾海域に侵入しており、海巡署のデータによると、2020年1月から10月まで、3000便以上を駆逐した。また、2022年3月から4月にかけて、台湾本島と馬祖島を結ぶ「台馬3号」海底ケーブルは、何回も中国のポンプ浚渫船の作業によって切断され、馬祖の対外通信が一時停止された。

中国漁船も、台湾・馬祖海底ケーブルのある北竿と東引の間の水域で活発に行動しており、底引き網によるケーブル破壊事件も発生している。2021年8月、「台金2号」海底ケーブルは中国の漁船作業で破壊され、馬祖南竿の通信が一時的に停止された。

中国の大型船舶の市場占有率は世界の16%を占める。中国の大型貨物船は台湾周辺で錨を下ろす際には、海底ケーブルを破壊する行為が見られる。2020年には、錨に海底ケーブル切断ナイフをインストールする特許を発表している。

今年初め、台湾の国安局は海底ケーブル破壊が「境外敵対勢力」の対台湾グレーゾーン作戦の新形態になったと述べた。過去3年間で台湾周辺の海底ケーブル切断事件が1年に7、8回は発生しており、人為事故の割合が約8割と述べた。

米インド太平洋軍のパパロ司令官は、中国による台湾周辺の海底ケーブル切断行為は軍事攻撃とは言えないが、民間の代理人か非正規部隊による行動の可能性があり、その目的は台湾の通信インフラを弱体化し、安定性を撹乱することだろうと見ている。

バックナンバー