外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年8月14日(金)

デュポン・サークル便り(8月14日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンは相変わらずの暑さ。ですが、心なしか少しずつ湿度が落ちてきているような・・・関東は、茨城に台風が史上初めて上陸するなど、大荒れだそうですね。皆様どうか、安全を第一に、在宅ワーク可であれば是非それを利用していただければと思います。

さて!アメリカ政治の話題は、先週に引き続き、民主党内の路線対立です。春先から全米各州で実施されてきた予備選は最終局面を迎えつつありますが、8月11日にはウィスコンシン州やミネソタ州での予備選挙に注目が集まりました。

この日最も注目を集めた民主党予備選が行われたのはウィスコンシン州です。投票日の1週間前に実施された選挙前最後の世論調査によれば、知事選で一番優位に立ったのは、なんと最近一躍脚光を浴び始めた全米民主社会主義(DSA)公認候補のフランチェスカ・ホンさんという女性。若干37歳という若さもびっくりですが、それ以上に選挙戦で話題を集めていたのが、彼女の「私が知事になったら感謝祭の祝日は取り消します」発言。なんでも「感謝祭はアメリカ国内の全員が心から祝える祝日ではない。ネイティブ・アメリカンにとっては、白人による侵略を想起させる祝日だから」というのがその理由だそうですが・・・思わず「はい・・・・?」と聞き返したくなるようなコメント。「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということわざがしっくりくる、一言でいえば「とてもDSA公認候補らしい」主張です。まあ、この主張をマンハッタンやサンフランシスコで行う分には百歩譲ってまだ共感する人が出てくる可能性はあります。でもホン候補がこれを主張したのはアメリカのど真ん中、選挙のたびに「激戦州」「接戦州」に認定される、つまり無党派層が多く毎度毎度選挙のたびに「開けてびっくり玉手箱」的な州のウィスコンシンだったから、さあ大変。「彼女が勝ったら、絶対に本選はムリ」とパニック状態に陥る民主党関係者を傍目に見ながら、政治コメンテーターの大多数は「この州知事予備選は、DSAが民主党の支持が固い場所以外で選挙に勝てるか否かの試金石」などと冷静に投票を見守っていました。

ところが結果は・・・投票日1週間前の世論調査で他の候補を23ポイントも引き離して首位を独走していたホン候補が、なんと得票率にして1パーセントの僅差で黒人のデイビッド・クラウリー候補(前ミルウォーキー郡政府行政官)に敗れたのです。先週の「デュポンサークル便り」では同じような僅差でDSA公認の候補が勝利したミシガン州の予備選挙についてお伝えしましたが、今週はDSA系候補と民主党中央部の支援を受けた候補の「立場が逆転」となる結果でした。民主党内では、この結果を受けて安堵している人の方が多いのでは・・・?「ポリティカル・コレクト(政治的適切さ)」を前面に出すときはTPOをわきまえるべきです。普通のアメリカ人には日本のお盆と年末年始が一緒になった「アメリカ版お正月」的意味合いを持つ感謝祭を「ネイティブ・アメリカンの傷ついた気持ちに配慮して」キャンセルするという主張はやはり「woke」過ぎたようですね。この結果を受けて、やはりDSA系候補では「接戦州」や「激戦州」は勝てない、という認識が改めて再確認されました。DSAにとってはここからが正念場でしょう。

共和党側は、相変わらず、上院で「ミッチ(マコーネル)はどこ?」が紛糾中。最近まで「共和党上院院内総務」という米議会で最も影響力のある役職の一つを長年務めてきたミッチ・マコーネル上院議員。御年84歳の彼はもともとトランプ大統領とは折り合いが悪く、トランプ第1次政権の際には、マコーネル議員は、奥様の台湾系アメリカ人で、第1次トランプ政権の際には運輸長官も務めていたエレイン・チャオ氏に対するトランプ大統領の侮辱的ツイートに腹を立て、第一期政権終盤には口も利かない仲になっていたほど。でも彼が上院共和党の重鎮であることは変わりません。実は今年に入ってからこのマコーネル議員、トランプ大統領の暴走に歯止めをかけて大活躍(?)している「YOLO共和党議員」の仲間入りを果たしました。しかもトランプ大統領とは犬猿の仲の同議員、6月に救急車で自宅から病院に担ぎ込まれる様子を示す目撃映像が拡散して以降、一度も公の場に姿を見せていないのです。

今月に入りようやくマコーネル上院議員の「生存確認」はできました。でも、残念なことに9月の会期再開までの間に体調を整えることができるか否かという状態のようです。これが実はかなり問題で、マコーネル上院議員は上院院内総務ではなくなったものの、重鎮議員として共和党内のステータスは変わらず、現在も歳出委員会や軍事委員会などビッグな委員会に名前を連ねています。9月からは2026-2027年度連邦政府算の審議が始まりますが、もしマコーネル議員が「欠」の状態だと、歳出委員会の民主党と共和党の議員数は、民主党14人、共和党14人と拮抗します。要は、予算案の歳出委員会通過が極めて険しいのが今の上院なのです。選挙戦が佳境に入る10月に連邦政府が一時閉鎖になるような事態だけは避けようとジョン・スーン共和党上院院内総務は毎日、期限を12月上旬までに区切った予算継続決議を採決すべく必死で首をひねっている状態です。マコーネル上院議員の体調も心配ですが、連邦政府予算の行方はもっと大切。9月の議会では予算が最大の焦点になるかもしれません。

そうこうしている間に、これを書いている今日(13日)午後には、再び「ホルムズ海峡は閉鎖する」というイランの主張が放送されています。あぁ、まだまだガソリンの値段は上がるのね・・と一瞬、遠くを見てしまいました・・・・ほんとにトランプ大統領、中間選挙の結果って、気にしないんでしょうか・・・・  


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員