その他  外交・安全保障  2025.08.08

改正再エネ海域利用法における排他的経済水域での洋上風力発電

ー国際海洋法上の権利義務の実現による日本の海洋政策ー

海事振興連盟主催「年齢制限のない若手勉強会」(2025730日)に登壇

国際法・海洋

2025年730日に、日本海事振興連盟主催の、「海事振興連盟・海洋立国懇話会―年齢制限のない若手勉強会―」において、講演を致しました。

今年成立した「海洋再生可能エネルギー発電設備に関する法律(改正再エネ海域利用法と略称)」について、「改正再エネ海域利用法における排他的経済水域での洋上風力発電―国際海洋法上の権利義務の実現による日本の海洋政策―」という演題の講演です。

そこでは、次の三つの点をご説明いたしました。

第一に、一方で、国際法(海洋法)上の権利の実現及び義務の履行と、他方で、日本の国家(海洋)政策の策定及び実現は、相互に不即不離の関係にある。日本が海洋政策を策定及び実現することによって、国際法上の権利の実現と義務の履行が図られる。

第二に、排他的経済水域における洋上風力発電を重要な契機ととらえて、多様な海洋利用及び利害関係から選択・優先順位の決定を伴う、国家政策としての、海洋空間計画の策定が不可欠である。それは、「オールジャパン」の国の決定によるべきである。海洋空間計画の策定は、MDA(海洋状況把握)による情報収集と、「海しる(海洋状況表示システム)」による、多様な海洋利用と利害関係の認識に基づく。

第三に、多様な海洋利用を担い利害関係を反映するのは、多様なstakeholdersである。このstakeholdersによる、利益の、主体的で積極的な認識・主張・議論こそが、「オールジャパン」の海洋政策(=海洋空間計画)による、最適な海洋利用と国家利益の最大化を導く。

多様なstakeholdersは、たとえば、航行・漁業・資源開発・軍事演習・レジャーといった海洋利用の主体、洋上風力発電の実施を担う、産業界、技術・海上輸送・港湾設備・人材育成の従事者や有識者、気象や海底潮流といった自然要因の調査・研究の従事者などのすべてを含む。

関係省庁の縦割りと分断を超えた、「オールジャパン」の国家(海洋)政策こそが、まさに、2007年制定の海洋基本法の趣旨・目的である。はたして、改正再エネ海域利用法は、それにこたえているのだろうか?


本講演は、主に、以下の拙稿を基礎といたしました。

①「洋上風力発電を契機とする海洋空間計画」
https://cigs.canon/article/20250403_8763.html
公開日:202543

②「排他的経済水域での洋上風力発電」
https://cigs.canon/article/20250616_8977.html
拓殖大学海外事情研究所 『海外事情』202556月号より「再掲」
公開日:2025616

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【講演資料】改正再エネ海域利用法における排他的経済水域での洋上風力発電