メディア掲載  外交・安全保障  2025.06.16

排他的経済水域での洋上風力発電

Offshore Windfarm in Exclusive Economic Zones

『海外事情 56月号』(2025515日・拓殖大学海外事情研究所)に掲載

国際法・海洋

「排他的経済水域での洋上風力発電に係る法整備について、①「排他的経済水域での洋上風力発電」を再掲いたします。これは、国際法の視点からの検討です。

すでに、日本の海洋政策の視点から、②「洋上風力発電を契機とする海洋空間計画」を発信いたしております。

合わせて、ご高覧いただけますと幸いです。

①「排他的経済水域での洋上風力発電」(当ページ)
(初出)2025年『海外事情2025年5・6月号』(2025年5月15日、拓殖大学海外事情研究所)

② 「洋上風力発電を契機とする海洋空間計画」(公開日:2025年5月22日)
https://cigs.canon/article/20250403_8763.html



1.はじめに

(1)洋上風力発電をめぐる世界情勢と日本の現状

本稿は、日本の排他的経済水域(EEZ)における洋上風力発電について、国際法の観点からの検討を目的としている。それに先立ち、「1.はじめに」では、洋上風力発電をめぐる世界情勢や日本の現状を簡潔に確認しておきたい。

諸外国における洋上風力発電の現状については、例えば、次の統計がある。 offshore wind energy”として、2024年の発電量は、世界全体では79,434MW、アジアは43,592MW、 ヨーロッパは35,670MW、その内EU20,835MW、北米は171MW、その内米国は171MW(o)である。アジアの43,592MWの内、中国39,100MW(o)、台湾2,963MW(o)、日本290MW(u)、韓国136MW(e)、ヴェトナム1,104MW(o)である。世界全体の半分以上を中国が占めており、世界全体の4割強を欧州諸国が占めている。日本は、統計の示されている18カ国(EUは除く)の内、8位の発電量である。

2025年228日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、洋上風発電について、次のように記載する。「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、前述した我が国を取り巻く情勢変化も踏まえ、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する。(傍点筆者)」。

再生エネルギーをめぐる世界情勢については、第7次エネルギー基本計画は、脱炭素化との関連で、次の記載をしている。「国際エネルギー情勢の変化を受け、欧米各国を中心に、野心的な脱炭素目標を維持した上で、エネルギー安定供給を確保するための現実的な取組が進められている。…欧州各国では、ウクライナ侵略以降、ロシアからのエネルギー依存の脱却を目指して、再生可能エネルギーの導入・省エネルギーの強化や、原子力や水素などのエネルギー供給源の多様化を進めるとともに、…。同時に、欧米各国では、エネルギー安定供給の確保に向けて現実的な取組も進めている。…202311月から開催されたCOP28では、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を世界全体で3倍、エネルギー効率の改善率を世界平均で2倍へ拡大するといった野心的な取組に加え、原子力、排出削減が困難な分野でのCO2回収・有効利用・貯留などの低減・除去技術、低炭素水素製造を含む、排出ゼロ及び低排出技術を加速させるとの記載が決定文書に盛り込まれる…。」

さらに、同計画は、再生可能エネルギーに係る世界情勢と日本の現状について、次のように述べる。「再生可能エネルギーは、世界的に発電コストが急速に低減し、コスト競争力のある電源となってきており、導入量が急増している。我が国においても、20127月の固定価格買取制度(FIT制度)の導入以降、当時10%であった電源構成に占める再生可能エネルギー比率は2022年度には約22%にまで拡大した。特に、我が国は、陸上の平地面積が小さく、洋上は急峻な海底地形であるなど、地理的制約がある中で、導入容量は再生可能エネルギー全体で世界第6位となるなど、導入が着実に進展している。」。

洋上風力発電については、風力発電に係る「基本的考え方」として、「風力発電の導入に関し、陸上では、開発しやすい平野部での適地が減少している。また、洋上では、北海道や東北地方などの導入ポテンシャルの高い地域が存在することに加え、陸上に比べて大規模開発が可能となる一方で、欧州に比べて急峻な地形・複雑な地層であるほか、風速が相対的に小さい地点があるなどの日本の地理的特性がある。」としたうえで、洋上風力発電について、「洋上風力発電は、今後コスト低減が見込まれる電源として、我が国の電力供給の一定割合を占めることが見込まれ、急速なコストダウンと案件形成が進展する海外と同様、我が国の再生可能エネルギーの主力電源化に向けた「切り札」である。また、事業規模が大きく、産業の裾野も広いことから、建設やO&M等を通じ雇用創出にも貢献するなど、経済波及効果が期待される。こうした点を踏まえ、再エネ海域利用法19に基づく公募制度等を通じて、2030年までに10GW2040年までに浮体式も含む30GW45GWの案件を形成することを目指す。」と記載する。

こうした情勢の中で、日本は、排他的経済水域での洋上風力発電の実施に法的な担保を与えるために、法整備を進めている。

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排他的経済水域での洋上風力発電