東京都は太陽光発電の新築住宅への義務付けを進める方針だ。
9月20日、小池知事は所信表明にて、「『環境確保条例』の見直しを図ります」としたうえで、以下のように述べた。
「住宅などの新築中小建物に対する太陽光発電の整備などを大手住宅供給事業者などに義務づける全国初の制度を掲げました」
しかしいま、太陽光発電には問題が山積している。
筆者はこれまで一介の研究者としてエネルギー環境問題に従事してきたが、東京都議会の上田令子議員(江戸川区選出)に励まされ、一人の都民として請願を出すことにした。
これまでも本コラムで述べてきたように、太陽光パネルの義務付けは、中国政府によるジェノサイドへの加担となり、国民に経済的負担で迷惑をかけることを都民に強制するものだ。のみならず、水害時には感電により人命に関わる懸念がある。
筆者は9月20日付で、小池知事宛に義務付けを中止・撤回するよう請願書を提出した。また東京都議会にむけては、上田令子議員に紹介議員となっていただいて、環境建設委員会へ同内容の請願書も提出した。この後、上田議員とともに都庁で記者会見を行った。
筆者(左)と上田議員 Photo by Shinya Nishizaki
同日、上田議員の呼びかけで署名活動が始まった。ネット署名については、このウェブサイトを参照してほしい。
筆者による都知事あての請願について、原文のまま紹介しよう。
【小池百合子東京都知事宛請願】
新築物件への太陽光パネル等の設置義務化に関する請願書
令和4(2022)年9月20日提出
東京都知事 小池百合子 殿
杉山(すぎやま)大志(たいし)
貴職におかれましては、都民福祉と都政発展のため、日夜精励されておられると存じます。
憲法第16条及び請願法題3条に基づき、以下の事項を請願いたします。
同法第5条に則り、誠実な検討の上、私の願意への貴職のご所見を本年10月3日までに文書にてご回答ください。
(願意)
新築物件への太陽光パネル等の設置を義務化する条例改正を直ちに中止・撤回していただきたい。
(理由)
現在、東京都は新築物件の屋根に太陽光パネルの設置を義務付ける条例を検討しております。
しかし、パブリックコメントでも多数の反対意見が寄せられているように、今や太陽光発電には問題が山積しています。資料を添付いたしますので、ご参照ください。
出典:https://cigs.canon/article/20220810_6931.html
出典:https://cigs.canon/article/20220725_6883.html
9月20日に東京都庁で記者会見する上田議員(左)と筆者 Photo by Shinya Nishizaki
以下では特に、人権、経済、防災の観点から、3点に絞って意見を申し上げます。
1 中国政府によるジェノサイド・人権弾圧への加担を都民に義務付けることにならないか。
現在、世界の太陽光パネルの8割は中国製、半分は新疆ウイグル製と言われています。国際エネルギー機関の7月の報告(https://www.iea.org/reports/solar-pv-global-supply-chains)によれば、中国製のシェアは今後更に上がり、95%にも達する見込みです。
他方で、新疆ウイグル自治区における少数民族へのジェノサイド・人権弾圧の証拠は、国際社会が認めるところとなり、ますますはっきりしてきています。先進諸国は軒並みジェノサイドを認定し非難決議をしています。国連においても、人権高等弁務官事務所が「深刻な人権侵害が行われている」などとした報告書を8月末に公表しました。
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220901/k10013797911000.html)
強制労働(ジェノサイドの一部)と太陽光発電パネル製造の関係もはっきり指摘されています。(https://cigs.canon/article/20210705_6028.html)
米国では、ジェノサイドを問題視し、新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む製品は何であれ輸入を禁止するウイグル強制労働防止法を6月21日に施行しました。
(https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/bb5913bd889f6d2b.html)
かかる現状において、東京都が太陽光パネルを都民に義務付けるならば、それは事実上、ジェノサイドへの加担を義務づけることになります。だがこれは私たち都民の望むところではありません。
東京都は、太陽光パネルについて、その設置を義務付けるよりも、むしろ、米国と同様に、「新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む太陽光パネルの利用禁止」を公共調達や事業者において義務付けるべきです。
なお、都はこれまでの事業者へのヒヤリングにおいて「新疆ウイグル自治区の製品を使っていない」旨の回答を得ているとのことです。(太陽光発電設置解体新書スライド43)
だが、かかるヒヤリングだけでは全く不十分です。結果として都民をジェノサイド・人権弾圧に加担させた場合、都はどのようにしてその責任をとるのでしょうか。
東京都庁で記者会見する筆者 Photo by Shinya Nishizaki
2 国民・都民への負担が巨額に上るのではないか。
国土交通省の試算に基づけば、条件の良いところであれば、150万円のパネルを設置した場合、15年で元が取れるとされています。
確かに建築主は元が取れるようですが、これは一般国民の巨額の負担に依存するものです。太陽光発電による電力の本当の価値は50万円程度しかありません。残りの約100万円は一般国民の負担になります。このように負担の在り方が歪むのは、「再生可能エネルギー全量買取制度」を含め電気料金制度全体が、今のところ太陽光発電に極めて有利なように設計されているからです。だが太陽光発電の電力としての価値は、火力発電の燃料費を削減できる分だけであり、これは50万円程度にすぎません。
(https://gendai.media/articles/-/95936)
かかる事実が明らかになり、国民全般に負担を強要し迷惑をかけることを、東京都民は望んでいないと思います。
新築物件への太陽光パネル設置を義務付けることで、国民全般にどの程度の巨額の負担がかかるのか、東京都は明らかにすべきでしょう。
3 水害時に人命が失われるのではないか。
東京都では大規模水害が予測されています。江戸川区などでは最大で10メートル以上の浸水が1~2週間続く恐れがあると想定されています。
(https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e007/bosaianzen/bosai/kanrenmap/n_hazardmap.html)
水没した太陽光発電設備に感電・漏電の危険があることは、政府機関NEDOの調査で明らかになっています。
(https://www.jpea.gr.jp/news/533/)
(https://agora-web.jp/archives/220610233818.html)
感電・漏電による二次災害、感電の危険による避難・救助の遅れなどで、人命が失われる事態が想定される。水害の恐れのある地域において、太陽光パネルの設置を義務化すべきではなく、むしろ禁止すべきです。
以上の理由により、貴職による真摯な検討と太陽光パネル義務化の中止・撤回を求めます。
以上