第4回目は、農業だけでなく、食品加工、流通、外食など、食料供給についてのフードシステムについて、学びます。
本論に入る前に、コロナ危機で食料危機が起きるという誤った主張があるので、世界の食料供給と食料安全保障について、第二回目の講義に加えて、簡単に説明します。近年の穀物価格の特徴は原油価格と連動していることです。その原油価格がコロナ危機で大きく低下しています。これでも危機が起きますか?日本にとって最善の食料安全保障政策は減反を廃止して米を輸出することです。フードシステムですが、農業の川上に、機械、肥料、農薬等を供給する産業があります。しかし、これらの資材価格はすべてアメリカの倍もしています。なぜでしょうか?
食品加工業については、農業とのつながりの大きさから、地域での重要性、中小企業の多さ、食品を扱うことから、製造業の中の一割産業、収益の安定性という特徴があります。青果物の流通には、卸売り市場を経由するもの、それ以外のものがあり、それぞれ特徴があります。
国民のカロリー(熱量)については、農林水産省の供給熱量と厚生労働省の摂取熱量の二つのデータがあります。近年この差が拡大しています。今後の食料消費や購買行動の動向に、人口減少、少子高齢化、単独世帯の増加、女性の社会進出という要素が影響します。
農産物や食品の貿易についても、自動車と同じく産業内貿易が顕著にみられます。アメリカは世界最大の農産物輸出国であると同時に世界最大の農産物輸入国です。生産要素の賦存性の違いから産業間貿易を説明したヘクシャー・オリーン理論では現実の貿易を説明できなくなっています。国によって嗜好が異なることも、貿易を発生させる大きな要因です。
最後に、GAPや地理的表示という近年のフードシステムに関する政策的トピックについて説明します。
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