(左から岡崎氏・宮川氏)
プログラム:
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発表者:岡崎 哲二(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
題目:「Bank Behavior in Regional Finance and the Development of Regional Industries: The Case of Prewar Fukushima, Japan」
発表資料:
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発表概要:
第一次世界大戦後の長期不況期の下、金融システムが不安定化する中で、大蔵省は銀行合併を促進する政策を採った。これを反映して1920年代に大きな銀行合併の波が生じ、それは銀行数の減少と支店ネットワークの拡大をもたらした。この論文では、銀行支店ネットワーク拡大の影響を、福島県における銀行店舗レベルの預金・貸出データと郡・市レベルの織物産業データを用いて分析した。その結果、同じ郡・市に本店が所在する銀行店舗はそれ以外の地域(福島県の他の郡・市、および他府県)に本店が所在する店舗に比べて、高い貸出性向を有していることが明らかになった。また、他地域に本店がある銀行店舗の預金シェアの上昇は、織物業の生産と雇用にマイナスの影響を与えることも示された。第一次世界大戦後の銀行業における構造変化は、資金配分の変化を通じて地域産業に影響を与えたということができる。
発表者:宮川 大介(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 准教授)
題目:「Capital Supply Channel through Venture Capitals: Evidence from Matched Data」
発表資料:
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発表概要:
本研究は、(1)新興企業(ベンチャー企業)に対する資本性資金の主要な供給主体であるベンチャーキャピタル(VC)の属性(特に過去の投資経験)がVCの資金供給へ与える影響、および(2)こうしたメカニズムと株式市場の変動との関係を実証的に分析したものである。VCによる資本性資金の投資サイクルが、他の資金供給チャネルに比べて大きな変動を伴っていることは良く知られており、例えば、米国のデータを用いた既存研究では、投資経験の豊富なVCによる資金供給の変動がこうした投資サイクルの主要因であることを指摘している。しかし、こうした既存研究は、資金の需要サイドに関する要因と供給サイドに関する要因を識別できていないため、その結果の解釈が必ずしも容易ではない。本研究では、こうした問題点を踏まえて、資金供給サイドの要因を正確に識別する目的から、約2,600社のベンチャー企業と600社のVCからなる6,000ペアについて計測された企業-VCマッチレベルの資金供給データを用いることで、(資金需要要因を含む)企業レベルの時間を通じて変化する要因をコントロールした推定を行う。得られた結果から、第一に、過去の投資経験が豊富なVCが平均的に多くの資金を供給しているという自然なパターンが確認された。第二に、こうした投資経験と資金供給量の間の正の関係が、株式市場が低迷している時期において、より顕著に観察された。この結果は、資金の需要要因を取り除いた場合には、株式市場の低迷期における経験の乏しいVCによる資金供給の低下が、VCによる資金供給全体の変動を相対的により大きくドライブしていることを示唆している。また、この結果は、既存研究において指摘されている「投資経験の豊富なVCによる資金供給の変動がVCによる投資サイクルの主たる要因である」という結果が、資金需要サイドの要因を反映したものであることも意味している。
CIGSWorkshopとは、キヤノングローバル戦略研究所の研究員が各自行っている研究・分析の中間発表会で、アドバイザーを含む研究所メンバー及び共同研究者等の外部コメンテーターからコメントをもらい、今後の研究に生かしていくために開催されているものです。