台湾の大陸委員会(陸委会)が立法院に提出した最新報告書によれば、中国は「台湾独立勢力への処罰」を名目に、台湾政府関係者のみならず一般市民に対しても、継続的に越境弾圧を行っているという。さらに将来的には、中国側が制定を進める「民族団結進歩促進法」によって、その対象範囲が「統一を支持しない人々」にまで拡大される可能性があると分析している。
報告書はまた、台湾は中国による越境弾圧の唯一の被害者ではないと指摘した。こうした国際ルールを軽視する「非文明的な行為」は、両岸関係における健全な交流を損なうだけでなく、国際社会に対しても中国の対外的野心への警戒感を強める要因になっていると論じている。
陸委会は、中国による越境弾圧への対応について、関係省庁と連携しながら対策を進め、国民の権益を守ると同時に、「法の支配」という原則を堅持していく方針を強調した。
さらに陸委会の分析によれば、中国の対台湾政策は現在も「複合的圧力」と「融合政策」を軸に展開されている。2026年の対台湾工作会議および政府活動報告では、いずれも「両岸融合発展の深化」が強調されており、「第15次五カ年計画(十五五規画)」でも、より高度な両岸融合の推進が掲げられている。中国側は制度化を通じ、中国在住の台湾人を中国社会へ一体化させる狙いを持っているとみられる。
また、中国は各種補助政策や「同等待遇」措置を通じて、台湾企業、人材、資本を中国のサプライチェーンへ取り込み、あたかも両岸交流と融合が順調に進展しているかのようなイメージを演出しようとしているという。その背景には、「融合」を通じて最終的な統一促進につなげる意図があると、陸委会は警戒感を示している。
加えて、2026年3月に公表された中国の「両会」政府活動報告および「第15次五カ年計画綱要」では、中国経済の減速を背景に、「経済成長の安定化」「産業転換の促進」「リスク防止」が重点課題として掲げられた。経済政策は、国内循環を中心とする国家主導型へとさらに傾斜し、技術自立が産業戦略の中核に据えられている。陸委会は、こうした方向転換は、中国経済・金融・社会構造が深刻な圧力に直面していることを示すものであり、台湾企業にとって中国市場での経営リスクが大幅に高まっていることを意味すると分析している。
報告書は、景気低迷が長期化している中国国内では、社会的不満や生活不安が蓄積していると指摘。これらは中国社会の安定と統治体制に深刻な挑戦をもたらしているとの認識を示した。これに対し台湾政府は、「台湾優先」と「台湾を基点に世界へ進出する」という経済・貿易戦略を軸に、台湾企業によるサプライチェーンの多元化を支援し、企業の競争力とリスク対応能力の強化を進める方針を示している。あわせて、台湾経済の安全保障上のレジリエンスと主体性を高めていくとしている。
さらに、ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の混迷が継続する中、米中対立の激化、日中関係の変化、さらにはインド太平洋地域の安全保障環境の変動なども、台湾海峡情勢に影響を与えていると分析した。陸委会は今後も、中国の内政・外交情勢および対台湾政策の動向を注視し、それらが両岸関係へ及ぼす影響を総合的に評価しながら、台湾海峡の平和と現状維持に慎重に対応していく方針を示している。