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中国「民族団結進歩促進法」は差異の統合を狙うと専門家指摘(2026年3月)

以下は、中国が制定した「民族団結進歩促進法」(3月12日に正式可決、今年7月1日から施行予定)について、洪浦釗教授(台湾・東海大学中国・地域発展研究センター副執行長)が『鏡報』に寄稿した内容の抜粋である。

習近平政権は近年、憲法改正によって国家主席の任期制限を撤廃したが、いま新たに「民族」を国家主導で再定義する段階へ進もうとしている。現在審議されている「中華人民共和国民族団結進歩促進法(草案)」は、その立法目的として「習近平の民族工作に関する重要思想」を制度化し、法によって「中華民族共同体意識を強固にする」ことを明記している。

つまり、最高指導者が掲げる政治理念を国家法に組み込み、「中華民族共同体」という概念を単なる政治スローガンではなく、国家制度によって推進される新たなナショナル・アイデンティティへと転換しようとしているのである。

「多民族国家」から「単一民族共同体」へ

この立法は、中国の民族政策における大きな転換点を示している。長年、中国政府は「統一された多民族国家」という公式ナラティブを掲げ、民族区域自治制度を通じて各民族を管理してきた。56民族は国家を構成する多元的集団として位置付けられ、少なくとも建前の上では、それぞれの文化や差異への尊重が維持されていた。

しかし近年、中国政府は政策の重心を「中華民族共同体」へと急速に移している。新たな政治ナラティブの下では、各民族は並列的に存在する集団ではなく、単一の政治民族へと再編される対象となった。民族政策の焦点も、差異の尊重と管理から、「共同アイデンティティ」への統合と再構築へと変質している。

法律によって民族を「再定義」する

「民族団結進歩促進法」は、その方向転換を制度化する具体的な試みである。草案の内容を見る限り、中国政府は複数の制度的手段を通じて、この政治構想を推進しようとしている。

文化政策の面では、「中華民族共有の精神的家園」の建設を掲げ、教育や宣伝を通じて単一の文化アイデンティティを強化しようとしている。言語政策では、国家通用言語と文字の全面普及を推進する。こうした「法による文化介入」は抽象的な議論ではない。近年、新疆や内モンゴルで導入された言語教材をめぐる対立は、その前兆といえる。法律による強制が進めば、多元的な民族文化や母語が存続できる空間は、今後さらに縮小していく可能性が高い。

さらに社会・人口政策では、「互嵌式社区(相互融合型コミュニティ)」の建設を推進し、各民族の人口を都市空間の中で混住させることで、従来存在していた民族間の境界線を意図的に希薄化しようとしている。

これらの政策は個別の施策ではない。すべては、多民族社会を単一の「中華民族共同体」という枠組みに統合し、多元性を再編するという同一目標に向かっている。

民族は法律で作れるのか

本来、多くの民族アイデンティティは長い歴史の中で形成されてきたものであり、国家の立法によって人工的に創出されるものではない。法律は人々の行為を規範することはできても、人間の帰属意識そのものを定義することには限界がある。

しかし国家が法によって民族共同体を創出しようとする時、法律は単なる統治手段ではなく、民族やアイデンティティの境界線そのものへ介入し始める。

アイデンティティが国家制度へ組み込まれれば、社会に存在する差異もまた再解釈されることになる。民族ごとの言語、文化、歴史記憶は、最終的に「中華民族」という単一のモジュールへ統合されていく。民間社会の中で自然に形成されてきた文化交流は、徐々に国家統治の枠組みに組み込まれ、監督と管理の対象となっていく。中国共産党体制の下では、あらゆる民族が最終的に党への忠誠を求められるからである。

台湾と海外華人にも広がる「共同体」概念

さらに、この法律の政治的射程は中国国内にとどまらない。草案では香港・マカオを管理対象に含めるだけでなく、台湾も一方的に「中華民族共同体」の一部として位置付けている。これは単なる文化的表現ではない。民族アイデンティティを法的枠組みに組み込み、中国の政治的管轄を域外へ延長しようとする意図が見て取れる。

台湾にとって重要なのは、中国が「民族」と「国籍」の境界線を意図的に曖昧化しようとしている点である。もし台湾人が一方的に「中華民族共同体」の構成員として定義されれば、将来的に両岸交流や国際社会の場面で、「中国国民」とみなされる政治的圧力に直面する可能性も否定できない。それに伴い、法的リスクが拡大する可能性もある。

「違い」を消す時代の始まり

この観点から見れば、「民族団結進歩促進法」が意味するのは、中国民族政策の根本的な転換である。すなわち、「多民族の差異を認める国家」から、「国家立法によって単一民族を創出する国家」への移行だ。法律が絶対的統一を求める論理の下では、多元文化は社会の自然な現実として扱われにくくなる。むしろ「統合されるべき対象」「改造されるべき対象」として認識されるようになるだろう。

もしこの法律が施行されれば、それは単なる「民族団結」の強化ではない。国家が法律を用いて差異を消去し、単一のアイデンティティへ社会を再編する時代の到来を象徴することになる。

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