CIGS中国研究センター

現地報道からの情報
中国系SNSとメディアが台湾立法委員の個人情報を公開・拡散(2026年1月)

中国で734.4万フォロワーを有するWeiboアカウント「孤煙暮蟬」は、2026年元日、「沈伯洋、どこに逃げる?」と題する文章を発表し、衛星画像や周辺地図を掲載して沈伯洋立法委員の住所および職場を公開した。

翌2日には、中国福建広播影視集団・海峽衛視所属の「今日海峽」がソーシャルメディアのファンページで当該文章を転載。さらに沈立法委員の住所や職場の道路地図、周辺ランドマークまで具体的に公表した。加えて、国台弁系メディア「中国台湾網」所属の「両岸頭條」もFacebookで関連文章を転載した。

沈立法委員は3日、中国側の行動は軍事演習終了と同時に展開されたと指摘した。その理由について、①軍事演習の効果が乏しかったこと、②台湾株式市場が上昇したこと、③自身が引き続き国防関連の偽情報を解明していること、という三点を挙げ、中国がこれに対して怒り、自身に対する「精密な打撃」を試みた可能性があると分析した。

また沈立法委員は、今回の手法は「関西空港事件(*注)」の劣化版であり、中国が台湾社会を分断し、台湾民衆を威嚇する際によく用いるパターンだと指摘。しかし台湾社会はすでにこの種の手法に慣れており、中国の軍事演習と同様、その威嚇効果は次第に低下しているとコメントした。

同日、台湾外交部は中国の行動を強く批判した。中国が沈伯洋立法委員の逮捕を発表した後、個人情報の特定というデジタル権威主義的手段を通じて中華民国国民の安全に危害を加え、台湾の民主社会に恐怖と萎縮効果を生み出そうとすることは、「世界人権宣言」および「市民的及び政治的権利に関する国際規約」に明記された「あらゆる者のプライバシー、家庭、住宅への恣意的干渉の禁止」という人権保障に違反するものであり、個人のプライバシーを全面的に侵害し、文明社会の最低限の一線すら踏みにじる恥知らずな行為だと非難した。

外交部はさらに、中国が台湾および他国の人々に対して行っている越境的な弾圧、嫌がらせ、干渉行為はいずれも国際法の精神および国際人権規範に重大に違反するものであり、北京当局が文明社会における人権とプライバシーという基本的価値を無視していることを一層明確に示していると強調した。越境弾圧の被害を受けた人々はすべて中華民国政府の保護対象であり、中国に協力して越境弾圧に加担する国内の協力者については法に基づき制裁を受けるべきだと声明した。

また外交部は、今後も他の政府部門および国際社会と連携し、在外公館の緊急対応体制を強化して台湾国民の安全を確保するとともに、国際社会に対し中国の人権侵害を共に批判し、中国の域外管轄および越境弾圧を阻止するよう呼びかけた。

これに対し、中国国台弁の陳斌華報道官は7日の定例記者会見で、「沈伯洋は両岸関係を破壊し、国家分裂を図り、独立を求めて戦争を引き起こそうとしている」と批判。また、「孤煙暮蟬」の投稿は「自発的な行為」であり、多くの民衆が反対していることを示すものだと述べた。

さらに陳報道官は、民進党当局が類似のネットアカウントを弾圧し、「両岸交流を再検討する」とする姿勢について、「民進党と沈伯洋は一丘之貉(同じ穴のむじな)であり、その言論は虚偽である。実際には両岸の対立対抗を煽動し、両岸交流を阻止しようとしている」と強く批判した。

*注 「関西空港事件」とは、2018年9月、台風21号の影響で関西国際空港が一時閉鎖され、多数の利用客が空港内に取り残された際、中国のSNSや一部メディアで「中国の総領事館が中国人を優先的に救出した」「台湾の代表機関は十分な対応を行わなかった」といった情報が拡散した一連の事態を指す。これらの情報は、実際の空港運営や各国・地域の対応を単純化・誇張した内容であることが後に指摘されたが、台湾社会では大きな論争と世論の動揺を招いた。こうした状況の中で、関西空港対応をめぐる批判が強まる中、当時大阪に駐在していた台湾の代表が自殺する事態が起きている。

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