中国の軍事演習「正義使命-2025」はすでに終了したが、演習後に拡散した一枚のドローン映像が台湾社会で波紋を広げた。問題となったのは、台北101を捉えたとされる画像である。
一部のソーシャルメディア利用者やメディアは、「ドローンが台北101を俯瞰した」「ドローンが台湾上空を越えた」「解放軍のパイロットはいつでも台北に行けると言っている」などと伝え、あたかも解放軍のドローンがすでに台北上空に接近しているかのような印象を広めた。
しかし、情報の源流を追跡すると、当該画像は解放軍の公式Weiboアカウント「中国軍号」が公開した動画に由来することが確認できる。同動画も「解放軍のドローンが台北101を俯瞰した」と主張しており、中国官製メディアCCTVや解放軍東部戦区も類似の映像を発表していた。
2025年12月30日、台湾国防部の謝日升次長は記者会見で、中国の大型ドローンが台湾の24海里範囲内に進入した事実はないと明言した。一方で、解放軍や中国海警の船舶が24海里内に進入した事例はあり、仮に撮影を行うとすれば、船上から撮影することは技術的に容易であると指摘した。また謝次長は、解放軍が「台湾に接近している」という視覚効果を利用し、認知戦の目的を達成しようとしている可能性があると分析した。
退役空軍大佐でF-16戦闘機の訓練教官を務めた黄揚徳氏も、現在の技術水準であれば、中国のドローンは台湾に実際に接近しなくとも、台湾から約30海里(約56キロ)の地点から類似の写真を撮影できる可能性があると述べている。黄氏はさらに、中国側の動画が台湾の軍事施設を映していないことから直接的な軍事的脅威は認められないとしつつ、遠距離で撮影した映像を「台北101を俯瞰した」と宣伝する行為自体が心理戦の一環であると指摘した。
台湾ファクトチェックセンターは匿名のドローン業者に取材を行った。同業者によれば、中国側が公開した画像は地面からの「平視」構図に近く、高高度から撮影した特徴を備えていないという。この視覚効果は光学上の「望遠圧縮効果(テレフォト圧縮効果)」による可能性が高いと説明する。すなわち、極めて遠距離から高倍率レンズで撮影した場合、前景と背景の奥行きが圧縮され、背景の台北101と前景の淡江大橋があたかも隣接・重なっているかのように見える現象である。これは、ドローンが近距離や低空で市街地に進入して撮影した映像の特徴とは一致しない。
また、国防安全研究院中共政軍与作戦概念研究所の舒孝煌・副研究員は、中国が公表した写真には加工の可能性があると指摘している。
さらに、国立陽明交通大学スマートサイエンス・グリーンエネルギー学院の許志仲・副教授は、AI検出ツールによる分析結果として、ネット上で拡散している動画や写真の約7割が偽造である可能性があると述べた。