CIGS中国研究センター

現地報道からの情報
海外亡命中の中国人インフルエンサーが録音公開
台湾批判の“買収工作”を暴露(2025年12月)

海外に亡命している中国人の軍事系インフルエンサー「說真話的徐某人(ありのままを語る徐という人物)(*注1)」は、2025年12月18日、X(旧Twitter)上で、ある音声録音データを公開した。この録音では、中国人インフルエンサー「落日海盜」が、2024年9月以降、徐氏を中国の対外宣伝要員として買収しようとしていた実態が明らかにされている。

録音の中で「落日海盜」は、自身が人民解放軍の中間的な連絡役であり、かつて北京市公安局の情報偵察・世論分析部門に勤務していたと自称している。また、日本、イタリア、米国フィラデルフィアなどにおいて、音楽、旅行、グルメ、自動車といった分野のインフルエンサーを取り込んだうえで、「中国伝統文化の良さを宣伝する」よう求めてきたとも語っている。さらに、徐氏に対しては月額4万ユーロ(約740万)の報酬を提示し、台湾の軍事体制を批判することで台湾社会の自信を失わせることを目的としていたという。

録音によれば、「落日海盜」が徐氏に目を付けた理由は、徐氏が過去に台湾侵攻に関する動画を制作していたことにあるとされる。「台湾海峡での戦争の可能性」や「台湾軍の準備不足」について語らせ、台湾内部の防衛力に対する信頼を低下させることができれば、それを「上層部への報告材料」として提出できると述べた。また、「可能であれば、君の動画を『中天テレビ』(*注2)に転載したい」とも発言している。

さらに「落日海盜」は、徐氏が海外の中国語圏SNSにおいて「中立かつ客観的」な立場を取ることで、台湾独立勢力に対して打撃を与える、あるいは抑止効果を生み出せると主張した。その際、「潤物細無声(大々的に誇示せず、目立たない形で穏やかに深い影響を及ぼす)」ことが、今回「上の人」によって定められた基本方針であると説明している。

徐氏が許容できる「ボーダーライン」について問われると、「落日海盜」は「小罵大幫忙(小さく罵って大きく助ける)」という言葉を用い、共産党を軽く批判する程度であれば容認される一方、習近平個人については決して批判してはならないと明言した。また、ロシア・ウクライナ戦争に関しては、「組織」側がウクライナに対する理解を依然として十分に持っていないと述べ、徐氏に対し、外宣活動への協力に加えて、ウクライナ情勢に関する情報を「内参(内部参考資料)」として提供してほしいとも要請している。さらに、ウクライナの弱点に焦点を当てた発信は、結果として台湾の軍事力に対する信頼を削ぐ効果も持ち、それ自体が対外宣伝の一環になると語った。

「落日海盜」は最後に、海外亡命中の中国人インフルエンサーの中でも最も知名度が高いとされる「李老師不是你老師(李先生はあなたの先生ではない)」に言及し、「組織」は徐氏と李氏の関係が近いことを把握しているとしたうえで、「万が一、将来李老師に対して手を下すことになり、警察が君の家に来たとしても、そのとき『皆、身内の同志だ』と一言言えれば、少なくとも両親を不安や恐怖にさらさずに済むだろう」と発言した。

しかし、この録音データが公開された直後、「落日海盜」(Xアカウント:bright_hawkins)は、すべてのSNSアカウントを削除している。

本件について、台湾・国防安全研究院の国防戦略資源研究所所長である蘇紫雲氏は、「インフルエンサーに接触し、買収を通じて偽情報を拡散し、台湾社会の自信に影響を与える手法は、中国が一貫して用いてきた作戦である。現在は、その手口がより精密化しているにすぎない」と分析している。

*注1:「說真話的徐某人」はイタリア亡命中の中国人インフルエンサーだと言われ(IPアドレスがイタリアであるため)、主に国際軍事について発信している。台湾支持の立場を明確にしていることから、その投稿や論考は台湾メディアに転載されることも少なくない。徐氏のX(旧Twitter)のプロフィール欄には、「驅逐馬列,恢復中華;反川反共,拯救世界。(マルクス・レーニン主義を駆逐し、中華を復興する。共産党およびトランプに反対し、世界を救う)」と記されていることから、中国のリベラル派だと思われる。

*注2:中天テレビ(CTi News)は、台湾の旺旺中時メディアグループ傘下のニュース専門チャンネルで、保守・中国国民党(KMT)寄りの論調で知られる。中国大陸に友好的な報道姿勢が多いとの指摘もある。2020年には台湾の国家通信放送委員会(NCC)が放送免許の更新を認めず、地上波放送は停止されたがネット配信を通じて依然として影響力を持つ。

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