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現地報道からの情報
ロイター独自:台湾の外交高官がイスラエルを秘密訪問
『台湾の盾』構想で連携強化か(2025年12月)

ロイター通信の独自報道(12月11日付)によると、台湾外交部の呉志中政務次長は近頃イスラエルを秘密訪問した。訪問は台湾がイスラエルの国防分野における協力強化を模索しているタイミングで行われたと伝えている。

台湾の外交トップクラスの政治家が、正式な外交関係を持たない国を訪問する例は極めて珍しい。しかし台湾は、イスラエルを長年にわたり重要な民主パートナーと位置づけてきた。2023年10月に発生したハマスによるイスラエル南部への攻撃、およびそれに続くガザ戦争においても、台湾は明確にイスラエル支持の立場を示しており、それ以降、双方の接触は着実に増加している。

一方で、今回の訪問の詳細については、極めて慎重な対応が取られている。関係者は、頼清徳総統が10月に言及した「台湾の盾(T-Dome)」と呼ばれる防空システムを含め、呉氏が誰と会談し、どのような議題が話し合われたのかについては明らかにしていない。台湾外交部も本件に関する個別のコメントを拒否している。 ただし外交部は別途声明を発表し、「台湾とイスラエルは自由と民主という価値観を共有している」とした上で、貿易、テクノロジー、文化といった分野における実務的な交流と協力を今後も推進していく考えを示した。また、双方に利益をもたらす「ウィンウィンの協力関係」を歓迎すると強調している。

台湾とイスラエルの関係は目に見えて緊密化している。2025年9月には頼清徳総統が総統府でイスラエル国会議員の訪問団と会談した。翌10月のイベントに出席した際には、旧約聖書に登場する「ダビデが巨人ゴリアテを打ち倒した物語」を引用し、イスラエルが領土防衛に示す強い決意は台湾にとって価値の高い模範だと称賛した。

今回の秘密訪問の焦点は「台湾の盾」にある。頼総統は10月にこの構想を打ち出し、米国製のパトリオットミサイル、国産の天弓ミサイル、防空機関砲を統合し、より効率的な「センサーから射撃まで」(sensor-to-shooter)のキルチェーンを構築することを目指している。林佳龍・外交部長も11月、公の場で「台湾とイスラエルは技術と防衛面で相互に学び合っている」と述べ、さらに「台湾がT-Domeを提案したように、イスラエルにはアイアンドーム(Iron Dome)がある」と明言していた。

ハマス関連の通信機器爆発事件(BBコール事件)(*注)という問題はあったものの、台湾・イスラエル関係は冷え込むことなく、むしろ強化されている。公式関係を持たないがゆえに表に出にくい両者の関係は、現在、静かに、しかし着実に新たな段階へと進みつつあるように見える。

*注:2025年9月、ハマスを支援しているレバノンの武装組織ヒズボラが仕掛けた爆発事件。イスラエル国内で使用されていたポケットベル(BBコール)が遠隔操作で爆破され、多数の死傷者を出した。この呼び出し器の一部部品を台湾企業が製造しており、事件後に企業名が報道された。

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