台湾の刑事警察局は2025年12月4日、中国系SNSアプリ「小紅書(RED)」(英語圏では通称REDNOTE)」の台湾での利用者が300万人を越えている一方、国家安全局が実施した情報セキュリティ検査では15項目すべてが不合格となり、さらに2024年以降、同アプリが関与した詐欺事件が1706件に上ると発表した。これを受け、内政部は同アプリに対し、インターネット上でのドメイン解析(ドメイン名をIPアドレスに変換する処理)の停止措置およびアクセス制限命令を発出する方針で、暫定期間は1年間とされている。
内政部警政署(「警察庁」に相当)によれば、今回の措置は、「詐欺犯罪防制条例」第42条に定められた「詐欺犯罪防制緊急事件規定」に基づく行政命令。今後については、小紅書の親会社が誠意ある対応を示して、台湾の法律を順守して利用者のデジタル安全を保障するかどうかを見極めたうえで、追加措置を検討するとしている。
この問題について、馬士元・行政院詐欺対策指揮センター指揮官は、小紅書の台湾ユーザーが近年急増しているにもかかわらず、詐欺や違法行為が発生した場合、同社が台湾の司法管轄外にあるため、警察や検察が必要な資料を入手できず捜査が著しく困難になっていると指摘。これは単なる治安問題にとどまらず、「中華民国のデジタル主権を深刻に侵害している」との認識を示した。
利用者の個人情報を守るため台湾政府は一定期間の観察を経たうえで、2025年10月14日、両岸関係の台湾側窓口である海峡交流基金会を通じて、小紅書の親会社である中国・行吟信息科技(上海)有限公司に対して、具体的な改善策を提出して、台湾の法律を順守するよう求める正式通知を送付した。回答期限は20日以内としたが、相手からの返答はないという。(注*)
さらに馬指揮官は、中国政府がこれまでに小紅書に対して複数回の行政処分および罰金を科してきた事実、ならびに米国テキサス州において同アプリの使用禁止措置が講じられている状況にも言及し、小紅書が意図的に中華民国の法的管轄を回避しているとの認識を示した。加えて、同社が近年ネットショップ機能の運営にも着手していることから、台湾の利用者のみならず、同プラットフォーム上で商取引を行う事業者にとっても詐欺被害のリスクが高まっていると警告を発した。
一方、こうした台湾側の措置に対し、中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華報道官は、12月10日の記者会見で強い反発を示した。陳報道官は、小紅書が台湾の若年層の間で広く利用されており、同アプリを通じて「中国の真実を理解している」と主張したうえで、その結果、民進党政権がこれまで形成してきた「資訊繭房(外部からの情報が入りにくい閉鎖的な情報環境)」が崩れつつあり、これに対する警戒と苛立ちが今回の制限措置につながったのだと述べた。
陳報道官はさらに、民進党当局は「反詐欺」を名目としながら、実際には「反民主」の行為を行い、国民がSNSを利用する自由を奪っていると強く批判した。また、「大陸のショッピングプラットフォームや動画配信プラットフォームの封鎖に始まり、大陸系SNSの封鎖にまで及んでおり、民進党はすでに民衆と対立する“民禁擋”(民進党と同音で、“民の行為を禁じる”との意味を掛けた中国語の駄洒落的表現)と化した」と述べ、このような恣意的な振る舞いは、いずれ自らに跳ね返るだろうと警告した。
注*:海峡交流基金会は、形式上は民間団体とされているものの、実質的には台湾政府と中国政府の間の連絡窓口として機能してきた。中国側のカウンターパート機関は海峡両岸関係協会である。しかし現在、中国側がこのチャネルを凍結しているため、両者の窓口は事実上、機能停止の状態にある。