高市早苗首相が11月7日の衆議院予算委員会で述べた「(台湾有事は)日本の存立危機事態になり得る」という発言は中国の強い反発を招いた。薛剣・中国駐大阪総領事の「首切り」発言(Xに投稿。現在は削除)に加え、人民解放軍は黄海で実施していた実弾射撃訓練を当初予定の3日間から8日間に延長する事態となった。11月18日には、呉江浩・中国駐日大使がX(旧Twitter)で、国民党の馬英九・元総統と洪秀柱・元主席らの発言を引用し、「台湾社会でも高市発言への不満が広がっている」と主張した。
呉大使は「高市早苗首相の誤った発言は台湾社会で不満と批判を招き続けている。」と投稿。続けて馬英九の「高市氏の発言は台湾住民の利益を損なう。台湾問題は外国勢力を介入させるべきではなく、あくまで大陸と台湾双方が直接対話によって解決すべきだ。」との言葉を引用した。また、洪秀柱の「高市氏の発言は挑発であるだけでなく、台湾を危険な縁に追いやるものであり、日本の軍国主義の残滓が本質的にはいまだ払拭されていないことを露わにした。日本はかつて台湾を植民地支配し、抑圧し、台湾人に対する虐殺を行った歴史があり、台湾『慰安婦』の歴史的な痛みもいまだ真の意味での謝罪と賠償を得ていない。それにもかかわらず、日本はなおも台湾海峡問題に口出ししている。」とのコメントも紹介した。
さらに呉大使は、台湾の政治・時事評論誌『観察』(*注)の発行人・紀欣氏による「日本の植民地統治期に、台湾人民の抗日活動は形を変えつつも決して途絶えなかった。今、正義感を持つ台湾人であれば、高市早苗氏の悪質な言論に反対する。」という発言も引用した。呉大使が挙げた人物はいずれも台湾政治で「親中派」または紅統派(中国共産党による統一を支持)と位置づけられている。
11月19日、中国政府は「安全上のリスク」を理由に日本への旅行自粛を呼びかけ、北海道産ホタテなど日本産水産品の輸入再停止も発動した。翌20日、台湾の頼清徳総統が日本産の海鮮を食べる写真を投稿して日本への支持を示すと、これに反発する形で、中国外交部の毛寧報道官は「台湾は中国の台湾であり、中国の不可分の一部だ。頼清徳当局がどんな芝居をしても、この事実は変わらない」と述べた。
*補足情報:
『観察』は、台湾の政党「統一連盟党」の元主席・紀欣氏が2013年に創刊した政治・時事評論誌。台湾各地に存在する統一派勢力に働きかけ、「一国二制度」など「平和統一」理論の構築を進めるとともに、統一に否定的な考え方を改めることを目的として同誌を創刊した。また、中国の改革について台湾社会に紹介する役割も担っている。紀氏は、1996年から2005年まで統一志向の政党『新党』選出の国民大会代表。2009年に社会団体「中国統一連盟」で初の女性主席に就任。2019年に登録政党となった「統一連盟党」の初代主席を務めた。かつて東呉大学法学部副教授なども務めた法学者。