中国がソーシャルメディア上で大量の反民主主義的情報を発信し、台湾独立支持の軟化を図る試みは、すでに実質的な効果を上げているとされる。台湾の国防意識にも影響を及ぼしている可能性がある。台湾中央研究院の傅澤民研究員は、「もし戦争が発生した場合、若者が自発的に台湾防衛に参加しない可能性がある。このような態度は『脅威疲労』によるものだ。彼らは長期にわたり『戦争が起こるかもしれない』という情報に晒されてきたが、実際には起きていない。その結果、徐々に関心を失っている」と語った。蕭美琴副総統もメディアの取材に対し、「偽情報が民主主義社会の団結を損なうことは認識しているが、中国のソーシャルメディアを通じた認知戦に対抗するのは非常に困難だ」と述べた。
台湾の政治系インフルエンサー・敏廸は、台湾政府が情報戦の領域で中国を凌ぐのは不可能だと考えている。「台湾の若者は政治よりも、仕事・貯金・不動産など日常生活に関する話題に関心を持っている。地政学的な問題や中国の動向は優先事項ではない。彼らにとって最も重要なのは目の前の生活の課題であり、それらが解決されない限り、『国家の主権の重要性』を意識させるのは困難だ」と語った。 台湾民主実験室(*1)の調査によれば、TikTokのヘビーユーザーは政治・社会に関する情報源の選択において、非ヘビーユーザーと大きく異なる傾向を示している。ヘビーユーザーはインフルエンサー、ファンページ、特定の政治人物などからナラティブを吸収する傾向が強く、特にインフルエンサーとファンページの影響力が大きい。その割合は非ヘビーユーザーの2倍以上に達しており、情報源に対する信頼度も高いことが特徴である。
TikTokの利用頻度にかかわらず、民進党は調査において最も支持率の高い政党であると同時に、国民党と並んで「最も好かれていない政党」ともされている。中でもTikTokヘビーユーザーは民進党への支持率が明らかに低く、反対に台湾民衆党への支持率は非ヘビーユーザーよりも高い傾向が見られた。両岸問題に関する認識も、ヘビーユーザーと非ヘビーユーザーの間で大きく異なっている。台湾の一般市民の多くは、両岸関係の緊張を招いている主因は中国政府だと考えているが、TikTokヘビーユーザーは民進党政府やアメリカ政府に責任があるとする傾向がある。実際、TikTokヘビーユーザーの中では、民進党に責任があると考える割合は、中国政府を主因とする回答とほぼ同程度であった。
*1:台湾民主実験室は、主にデジタル領域における民主主義への脅威や情報操作の分析を行う非営利研究機関。