CIGS中国研究センター

法的根拠・公式見解
頼清徳の国家安全五条と17項目と統一戦線活動に対する対抗策

2025年3月13日、頼清徳総統は「五大国家安全・統一戦線に関する脅威」と「十七項目の対策」を発表し、中国を「境外敵対勢力」として初めて明確に位置づけた。また、政府が中華人民共和国の統一戦線工作に対処するための方策を国民に向けて説明した。内容の概略は、以下の通り。

台湾の国家主権に対する中国からの脅威に対応するため、以下の二つの方針を打ち出す。

  1. 国家安全会議(国安会)、国防部、行政チームが共同で「和平四大支柱行動方案(平和の四本柱行動計画)*註1」を推進し、併合を防止するという全民の共通認識と決意を内外に示す。
  2. 国安会および外交部が計画を策定し、友好国との連携を通じて、中国による国際社会における台湾の主権の矮小化・消滅を図る行為に対抗する。

中国による国軍(中華民国国軍、いわゆる台湾軍)への浸透およびスパイ活動に対応するため、以下の三つの方針を打ち出す。

  1. 現役軍人による軍事犯罪案件の処理を目的として、「軍事審判法」の見直しと修正を行い、軍事裁判制度の復活を図る。*註2
  2. 軍事法廷の制度改革を進めるため、「軍法官人事条例」や軍事裁判所・軍事検察署の組織法等の関連法規を新たに制定することを計画している。
  3. 現役および退役軍人による、国軍の士気を著しく損なう言動への対策として、国防部は「陸海空軍刑法」に「敵への忠誠表明」に関する処罰規定を新設することを検討しており、併せて退職金・年金受給者に関する規定の修正も進める必要がある。

中国による国民の国家アイデンティティの混乱をもたらす脅威に対応するため、以下の二つの方針を打ち出す。

  1. 内政部、大陸委員会(陸委会)などの関連機関は、台湾人が中国に申請する各種身分認定書類(パスポート、身分証、定住証、居住証など)について、必要な調査および管理を継続的に実施している。特に国家に忠誠義務を負う軍人、公務員、教職員に対しては、中国が「融合発展」を名目に、台湾人の国家アイデンティティを歪めようとする統一戦線工作を厳重に警戒・抑制する。
  2. 中国および香港・マカオ出身者の帰化制度については見直しを行い、中国籍保持者は中国の戸籍およびパスポートを確実に放棄することを求め、香港・マカオ出身者に対しては長期居留要件を追加している。

中国による両岸交流を通じた台湾社会への統一戦線浸透の脅威に対応するため、以下の八つの方針を打ち出す。

  1. 台湾人の中国渡航に伴うリスク認識を高め、訪中旅行の登録制度を徹底する。
  2. 公務員の訪中交流に関する情報公開制度を徹底し、内政部は宗教団体等の公益団体による訪中交流に関する情報公開制度を構築する。
  3. 中国人の台湾との交流に対してリスク管理を実施し、統一戦線の背景を持つ中国人の来台を厳格に制限し、統一戦線活動を禁止する。
  4. 両岸交流は「政治色の排除(脱政治化)」および「リスク排除(脱リスク化)」を原則とする。
  5. 行政院は台湾のローカルの文化産業の競争力向上策を検討し、中国の文化統一戦線による台湾主体性の弱体化に対抗する。
  6. 芸能人の中国での活動に関する指導・管理を強化し、責任機関は芸能人に対して中国での言動の留意事項を提供し、国家の尊厳を害する言動の取締範囲を明確化することで、中国からのプレッシャーによる国家尊厳を損なう発言・行動を回避する。
  7. 中国がインターネット、アプリケーション、AI等のツールを通じて台湾に対して認知戦や情報セキュリティへの脅威を仕掛けることを防止する。
  8. 上記に関わる関連法律を全面的に見直し、不備があれば速やかに改正を行う。

中国が「融合発展」を通じて台湾企業や台湾の若者を誘引する脅威に対応するため、以下の二つの方針を打ち出す。

  1. 「台湾優先」および「台湾から、世界に進出(立足臺灣、佈局全球)」という経済貿易戦略に基づき、台湾と中国の経済貿易関係の構造調整を行う。
  2. 若者や学生に対する中国認識(中国の実態を知る)の教育を強化する。

  • 「和平四大支柱行動方案」は、2024年8月21日に賴清德総統がケダグランフォーラム開幕式に参加した際に提唱された。四大支柱とは、1)国防力の強化、2)経済安全保障の構築、3)民主国家とのパートナーシップ強化、4)安定的かつ原則に基づく両岸関係におけるリーダーシップ能力の確立、である。
  • 発表時点では具体的立案段階には至っていない。なお、軍事裁判制度は2013年の法改正により軍法会議の適用が「戦時」に限定され、事実上、停止されていたが、法的に正式に廃止されていたわけではなかった。

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