CIGS中国研究センター

現地報道からの情報
「政党」を装った犯罪組織? 台湾政府が統促党の解散を申請(2026年7月)

台湾内政部は30日、記者会見を開き、中国と密接な関係を持つとされる「中華統一促進党(統促党)」について、憲法裁判所に解散を申請すると発表した。

内政部は、統促党について、中国の台湾における組織拡大に長期的に協力し、認知戦や社会への浸透、選挙への介入などに関与してきたと指摘。さらに、台湾の民主主義を威圧・沈黙させる「越境弾圧」に関与したほか、党幹部や党員が多数の重大犯罪事件に関与しているとして、「政党を装った犯罪組織」と厳しく批判した。

馬士元・内政部次長によれば、解散申請の理由は大きく三つある。第一は、統促党が長期にわたって中国による台湾での組織活動に協力し、認知戦、地域社会への浸透、中国資本を利用した選挙介入などを行ってきたとされること。第二は、台湾の民主主義に対する「越境弾圧」や言論の封殺に関与してきたとされること。第三は、政党という看板を掲げながら、実際には多数の党員・幹部が重大犯罪に関与しているとされることだ。

鄭英弘・内政部民政司長は、統促党が台湾各地の宮廟、祭礼・パレード団体、さらには犯罪組織などを利用して若者を取り込んできたと説明した。鄭司長によれば、2021年、統促党の実質的な指導者が中国の国営ラジオ「中国人民広播電台」のインタビューに応じた際、「赤色部隊」を育成し台湾海峡で戦争が始まる前に「戦線で蜂起する」構想を公然と語ったという。

また、自らの裏社会とのつながりを利用して台湾企業関係者を取り込み、「緑」(民進党支持)から「赤」(中国支持)へと転じさせているとも説明したという。統促党は2022年以降も、中国側の指示を受け、台湾国内で青幫や紅門などの勢力と連携しながら地域社会への浸透を拡大してきたという。さらに、中国側の指示に基づき、退役軍人や竹聯幫などとの関係強化も進めていたとされる。2024年には、中国側に取り込まれて中国のスパイ組織を構築した疑いで、統促党幹部2人が起訴された。

また、2025年9月30日付の『ワシントン・ポスト』も、台湾における統促党の活動の背後に、中国の諜報活動と犯罪組織との関係があるとの見方を報じている。2017年と2019年の10月1日、統促党は台北駅と国父紀念館広場で、それぞれ中華人民共和国の建国記念日を祝う集会を開催した。そこで参加者らは中台統一を叫び、「赤色部隊」を結成して「戦線で蜂起する」と訴えたという。さらに、中国を台湾の「守護者」と位置付け、五星紅旗を中華民国の国旗である青天白日満地紅旗の「保護者」と表現するなど、中国の政治的主張に沿った発言も行われたという。

地方社会への浸透についても、台湾政府は警戒を強めている。鄭司長によれば、統促党はすでに台湾各地の農村・地方部に活動範囲を広げ、村里、農会・漁会、宮廟などと中国側とのネットワークを積極的につないでいる。その狙いは「農村から都市を包囲する」ように社会の末端から影響力を広げることだという。2019年には、統促党の実質的な指導者が、台湾国内に30人の宮廟の主任委員との関係を持っていたとされる。

各種の社団や宗教団体でも、統促党の党員が重要な役職に就いているケースが確認されているという。また、原住民地域にも統一戦線工作を浸透させ、資金援助などを通じて取り込もうとしたという。さらに、統促党員である張姓の夫妻が旅行会社を経営し、中国共産党・政府・軍関係者の身分を持つ100人以上の人物を台湾へ違法に招き入れ、地方社会への浸透活動を行った疑いも指摘されている。

選挙への介入に関して、鄭司長によれば、2018年には彰化支部の統促党幹部が、選挙買収をめぐる不正に関与した疑いがある。2020年には、統促党幹部が有権者を中国・金門方面への旅行に招待したとして、選挙買収の疑いで起訴された。さらに2024年には、統促党の張姓・黄姓の幹部が中国側から7400万元(約3億7000万円)を受け取った疑いで、反浸透法違反などにより起訴された。その内容には、ラジオ放送を利用して世論を誘導し、選挙情勢に影響を与えようとした行為も含まれているという。2025年には、統促党の副主席と新聞副主席が、1人300元(約1500円)で1000人以上の総統選挙候補者の署名を買い取ったとして、懲役2年の判決を受けた。

越境弾圧に関して、鄭司長によれば、近年、台湾社会で注目を集めた暴力・脅迫事件の一部について、統促党員が関与していたことが捜査によって判明した。2017年には、空港で香港の民主活動家・黄之鋒に暴力を加えた事件、二・二八事件記念日に独立派団体を襲撃した事件、警察官への暴行、八田與一像の首を切断した事件、台湾大学で発生した「中国新歌声」関連事件(*注)などが挙げられる。2019年には、台湾を訪問した香港の歌手・何韻詩が赤い塗料を投げつけられた事件も発生した。

また統促党は、中国側の指示を受けて法輪功関係者の名簿を収集していたともされる。さらに今年には、中国籍の統促党員が結婚を通じて台湾に入国し、情報収集活動を行っていた疑いも浮上した。

林振禄・内政部宗教・礼制担当部門(宗禮司)司長によれば、統促党による浸透が確認されている、あるいは把握されている宮廟は少なくとも15か所に上り、7県市に分布している。内訳は台北市1か所、新北市2か所、彰化県2か所、嘉義県3か所、苗栗県1か所、雲林県4か所、台南市2か所。その中には、統促党の総裁である張安楽氏が、ある宮廟の名誉理事長を務めているケースも含まれるという。

邱紹洲・警政署刑事警察局長は、統促党を「犯罪組織の隠れみの」と表現した。刑事警察当局が2010年まで遡って統促党関連事件を調べたところ、組織犯罪を対象とする「治平専案」に該当する事件は98件、関係者は141人に上ったという。そのうち中核幹部が犯罪に関与したケースは32人。2回以上の犯罪に関与した人物も10人に上り、全体の約3割を占める。確認された犯罪には、殺人未遂、恐喝、脅迫、自由妨害、傷害、器物損壊などが含まれる。さらに詐欺や薬物関連の事件もあるとされる。

刑事警察局によれば、これらは組織犯罪に関する事件だけではない。個別の事件では、台湾の国家安全法、反浸透法、そして「台湾地区と大陸地区人民関係条例」などに違反した疑いの事件も確認されている。

*注:2017年、中国の音楽番組関連イベント「中国新歌声」が台湾大学で開催された際、統一派団体と抗議学生の間で衝突が発生し、学生が負傷した事件

バックナンバー