米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は19日、「中国海軍はいかにして台湾への締め付けを強めているのか(How China's Navy Is Tightening the Noose on Taiwan)」と題した記事を掲載し、中国人民解放軍が近年、台湾周辺への艦艇配備を常態化させていると報じた。現在では台湾周辺海域に常時5~6隻の艦艇を展開し、軍事的圧力と包囲網を段階的に強化しているという。
同紙は、中国の習近平国家主席が外交や国際社会への働きかけを通じて台湾の孤立を図る一方で、軍艦や軍用機を台湾周辺へ継続的に派遣し、哨戒や偵察活動を実施していると指摘。その狙いは、中国軍の急速な軍事力拡大を背景に、中国が台湾海峡の現状を長期的に変更する能力を有していることを台湾および国際社会に示すことだと分析している。
記事では、数年前であれば、解放軍の大型ミサイル駆逐艦が台湾周辺に現れるだけで、大規模軍事演習や軍事的威嚇と受け止められていたと説明。しかし現在では、そのような展開は「2026年の日常」と言える状況になったと評している。
台湾の安全保障関係者によると、2020年が中国軍による対台湾軍事展開の大きな転換点となった。中国は同年から台湾南北海域にそれぞれ1隻ずつ艦艇を常時配置し始め、2022年には東部海域へと展開を拡大。さらに2024年以降は東部海域の配備を増強し、現在では台湾周辺で常時5~6隻の中国艦艇が活動する体制が維持されているという。
同関係者は、この運用は単なる武力誇示ではなく、長期的な戦略の一環だと指摘する。各艦艇は約2週間ごとに交代し、任務終了後は別の艦艇が引き継ぐローテーション方式を採用している。これにより、より多くの艦艇と乗組員が台湾周辺海域の環境や作戦条件に習熟することを目的としているという。
また記事では、米情報機関が、習近平が解放軍に対し2027年までに台湾侵攻を実施できる能力を備えるよう求めていることにも触れている。ただし、この目標はあくまで作戦遂行能力と戦備態勢の整備期限を意味するものであり、2027年に中国が台湾への武力侵攻を開始することを意味するものではないとしている。
さらに台湾の安全保障関係者は、解放軍による軍事活動の段階的な強化は、中国政府が重要な政治的節目と位置付ける出来事の後に行われる傾向があると指摘した。具体例として、2020年の蔡英文前総統の再選、2022年の当時の米下院議長ナンシー・ペロシ氏の台湾訪問、そして2024年の頼清徳総統当選などを挙げている。
また、米海軍情報将校出身で、ミッチェル航空宇宙研究所の中国航空宇宙問題担当上級研究員を務めるマイケル・ダーム(Michael Dahm)氏の見解を紹介。ダーム研究員は、中国は大規模演習ではなく常態的な艦艇展開を通じて台湾包囲網を徐々に狭めており、この新たな手法は台湾海峡の安全保障環境に長期的かつ継続的な圧力をもたらすとの見方を示した。
記事によると、中国艦艇は通常、台湾の24カイリ接続水域の外側で活動しているが、不定期に軍用機と連携した「合同戦備警戒パトロール」を実施し、数カイリ内側まで接近することがあるという。一部の台湾安全保障関係者は、この戦術を「境界線への接触(bumping the boundary)」と呼び、境界線への接近と試探行動を繰り返すことで、台湾海峡における軍事活動の既成概念を徐々に塗り替えようとする手法だと分析している。