CIGS中国研究センター

現地報道からの情報
台湾、WTO閣僚会議出席見送り 開催国による「中国台湾省」表記に反発(2026年3月)

台湾外交部は20日、世界貿易機関(WTO)第14回閣僚会議に関する声明を発表した。外交部は、会議開催国であるカメルーンが中国の圧力に同調し、これまで開催国が尊重してきた台湾の独立したメンバーとしての地位に関する慣例を無視したとして、WTOの枠組みにおける台湾の平等な権利を損なう行為だと強く非難した。

WTO閣僚会議はWTOの最高意思決定機関であり、原則として2年ごとに開催される。第14回会議は3月26日から29日にかけてカメルーンの首都ヤウンデで開催される予定だった。台湾は2001年のWTO加盟以来、今回で11回目の閣僚会議参加となる見通しであり、楊珍妮・行政院政務委員兼通商交渉代表が、例年通り出席する予定だった。

しかし、カメルーン側が発行した入国関連の事前承認書類には、国籍欄に「Taiwan, Province of China(中国台湾省)」と記載されていた。台湾側はこれを台湾の地位を著しく矮小化する表現だとして問題視した。

外交部によれば、台湾はWTOに「台湾・澎湖・金門・馬祖独立関税領域(The Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu)」の名義で加盟しており、中国との従属関係は存在しない。今回の表記は、WTOにおける台湾の正式な会員資格および地位と明らかに矛盾するものだという。台湾代表団はWTO事務局に是正を求めるとともに、米国や日本など友好国の支援も得て対応に当たったが、カメルーン側は国際会議主催国としての責任を果たさず、当該表記は自国の「外交政策」に基づくものだと説明したとされる。

外交部はさらに、カメルーンが自国の外交方針をWTO全体の利益より優先したことは、国際機関の会議開催国として長年維持されてきた査証発給および入国手続き上の慣例に反すると指摘した。また、台湾がWTO加盟メンバーとして享受すべき公平かつ合理的な待遇を提供せず、台湾側が提案した柔軟な解決策も受け入れなかったとして強く抗議した。

外交部によれば、台湾は責任あるWTO加盟メンバーとして、WTO事務局およびカメルーン政府に対し正式な抗議を申し入れたほか、今後WTO閣僚会議を開催する加盟国に対しても、同様の事態を再発させないよう明確な保証を求める方針だという。

また、台湾の抗議を受けてカメルーン側は修正措置を講じたものの、再発行された書類には氏名や性別の誤記など多数の不備が見つかった。外交部は、こうした対応はカメルーン側の事務処理の杜撰さと誠意の欠如を示すものだと批判した。これらを総合的に判断した結果、台湾は今回の閣僚会議への出席を見送る決定を下したとしている。

この問題については、米国議会からも懸念の声が上がった。米下院の超党派議員連盟「Congressional Taiwan Caucus」の共同議長を務める共和党のマリオ・ディアス=バラート議員は3月23日、カメルーンが台湾のWTOにおける「独立関税領域」としての地位を低下させ、中国の外交的圧力に同調していることに深い懸念を表明した。

同議員は、中国が威圧的な手法を用いて台湾の国際機関への有意義な参加を排除しようとしており、今回の事例は危険な前例となりかねないと指摘した。また、台湾は米国および多くの国々にとって重要な経済・安全保障上のパートナーであり、台湾の国際社会への参加を引き続き支持していく考えを示した。

さらに、中国共産党との戦略的競争に関する米下院特別委員会の委員長である共和党のジョン・モーレナール議員と、民主党筆頭委員のロー・カンナ議員も25日に共同声明を発表した。両議員は、台湾が第14回WTO閣僚会議への参加を阻まれたことについて、中国が国際機関への影響力を拡大しようとする動きの一例であるとして強い懸念を表明した。

声明では、台湾は米国および世界経済にとって重要な貿易パートナーであり、加盟以降初めて閣僚会議への参加を見送る事態となったことは、WTO加盟国が共通の課題に取り組み、将来の世界貿易の方向性を議論する能力を損なうものだと指摘した。

また、この問題は単発の事例ではなく、中国が国際機関において不当な影響力を行使し、台湾を周辺化しようとする長年の取り組みの一環であるとの見方を示した。声明は、台湾を民主主義の模範であり、経済・技術分野における重要なパートナーと位置づけ、米国は今後も台湾との協力を継続するとともに、WTOが中国による圧力に適切に対処するよう注視していく考えを示した。

一方、フランス国民議会の対台湾友好議員連盟元会長であるエリック・ボトレル議員も24日、フランス紙『ル・フィガロ』の記事を引用し、「台湾は中国の一省ではない」と改めて強調した。

外交部によると、林佳龍外交部長は国際社会から寄せられた支持と連帯に謝意を表明した。台湾は今後も価値観を共有するWTO加盟国と緊密に連携し、国際社会における正当な権利と尊厳を守っていく方針だという。

バックナンバー