デンマーク紙『Berlingske』の報道によると、デンマーク在住の台湾人は2024年以降、居留証における国籍表記が「台湾」から「中国」へ変更されたことに対し、継続的に抗議を行っている。
これに対し、発行機関であるデンマーク国際リクルート・統合局(SIRI)は、「中国」表記への変更は誤りではなく、デンマーク政府が台湾を独立国家として承認していないことに基づく措置だと説明している。また、2025年5月からデンマーク移民・統合省が導入した行政上の「標準化」方針に沿って、台湾出身者の国籍・市民権欄から「台湾」や「中華民国」といった表記を削除し、出生地としてのみ「台湾」を記載できる運用に改められたという。
しかし、この措置はデンマーク政府が従来掲げてきた外交方針との整合性を欠くとの指摘も出ている。
デンマーク国際問題研究所(DIIS)のアンドレアス・B・フォースビー研究員は、デンマークの「一つの中国」政策は中華人民共和国を中国の唯一の合法政府として承認する一方、「中国による台湾への主権の主張そのものを承認したことはない」と指摘した。
また、長年にわたりデンマークの対台湾政策を注視してきた親台団体「Taiwan Corner」のマイケル・ダニエルセン代表は、デンマークがEU加盟国の中で唯一このような措置を講じていることについて、「デンマークの『一つの中国』政策が中国側の立場に過度に接近していることを示している」との見解を示した。
これに対し、台湾の鄭栄俊・駐デンマーク代表は、EUの「一つの中国」政策は台湾との協力や交流を妨げるものではないとした上で、今回の行政上の措置はEUの政策運用や実務慣行に反するとの認識を示した。鄭代表は現在、デンマーク政府に対して是正を求めており、「問題が解決されなければ、台湾とデンマークの関係に影響が及ぶ可能性がある」と警告した。
台湾の林佳龍外交部長も前日、立法院での答弁において、台湾政府はすでにデンマークの対台湾窓口機関に対する待遇の一部見直しなど、「対等と尊厳」の原則に基づく対応措置を講じていると説明した。また、友好国と連携しながら問題解決に向けた働きかけを強めていく方針を示した。
さらに、デンマーク台湾協会の黄伊敏会長は、「民主主義という共通の価値観を持つパートナーであるデンマークが台湾を排除するような対応を取ったことは、非常に失望させられる行為だ」と批判した。その上で、台湾政府による対抗措置への支持を表明し、デンマーク政府に対する抗議の姿勢を示した。
4月7日には、台湾外交部欧州局の黄鈞耀局長は、台湾政府がすでにデンマーク駐台湾代表に対する一部の外交上の優遇措置を取り消したことを明らかにした。また、デンマーク政府に対し、双方の関係に悪影響を及ぼさないよう速やかな解決策の提示を求めた。
黄局長はさらに、デンマーク政府に対し、台湾人の国籍表記を速やかに是正し、EUの対台湾政策および実務慣行を尊重するとともに、長年築いてきた台湾とデンマークの友好関係を維持するよう呼びかけた。