CIGS中国研究センター

現地報道からの情報
台商が元官僚を取り込み組織拡大 若手政治家も標的にした中国の対台湾工作(2026年1月)

<p>大陸でビジネスを展開する台湾人実業家(台商)の鄭明嘉が、台湾行政院を定年退職した元官僚の胡鵬年を取り込み、中国側の協力者として活動させていた疑いが浮上した。検察当局は、胡が現役および退役軍人の勧誘に加え、軍事機密の収集、各政党に属する若手政治家への接触、さらには政党や民意機関内部の情報収集などを担っていたとみている。</p>
<p>台湾高等検察署によれば、鄭は2008年に中国・広州市で事業を開始し、現地での利益確保を通じて中国側との関係を深めていった。2016年以降は、中国共産党統一戦線部の周辺組織とされる「広州台湾青年之家」の会長や、「広東海外聯誼会」青年部副主任を歴任し、さらに広州市政治協商会議の列席委員にも任じられていた。</p>
<p>検察は、鄭が2021年、中国で教職に就いていた胡鵬年に接触し、将来の地位維持に対する不安につけ込んで協力関係を築いたとみている。その後、鄭は胡を、統一戦線部関係者であり、中国共産党中央の対台湾工作グループ幹部とされる陳姓の男に引き合わせた。陳は、台湾の政治家や軍関係者の勧誘、情報収集に加え、特に政界に入りたての若手世代を重点対象とし、各党の党政機関や民意機関内部の機微な情報や機密情報を掌握するよう直接指示していたという。</p>
<p>その後、鄭と胡は複数回にわたり台湾に戻り、統一戦線部のための組織拡大活動を展開した。接触対象には、里長、退職公務員、国防部の契約業者などが含まれ、両者は対象者に中国への渡航や陳との面会を促し、任務の付与や「認可」を受けるよう働きかけていたとされる。</p>
<p>多くの接触対象はこれを拒否したものの、当局は本件がすでに台湾の国家安全に重大な影響を及ぼしたと判断した。法務部調査局は2025年9月以降、計4回の捜査を実施し、同月末には鄭と胡の接見を禁止。最終的に両名は「大陸地区のための組織発展」に関する罪で起訴された。</p>
<p>法務部調査局は、中国が台湾で組織網を拡大する際、従来は軍事機密に接近可能な現役・退役軍人が主な標的とされてきたと指摘する。しかし本件では、若手政治家が新たなターゲットとして浮上しており、政党や議会機関の内部に入り込み、情報を収集して報酬を得る構図が確認されたとしている。こうした点から、中国の対台湾情報工作はより多層化・高度化し、接触対象が一層広範囲に拡大している実態が浮かび上がっている。</p>

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