12月26日、台北地検は、ディアボロ(糸で操る中国ゴマ)の指導者として知られる魯紀賢について、機密漏洩などの容疑で再起訴・求刑した。新たな犯罪事実として、魯がチャイナエアラインの職員を通じ、蔡英文前総統の海外訪問に関する日程や専用機の情報を入手し中国側に提供したことを挙げている。検察は今回の事件について、魯に対し懲役15年以上を求刑した。魯はこれに先立つ2025年6月30日、中国側のために台湾で組織を形成したとして、国家安全法違反の罪で懲役10年6か月の判決を受けていた。
魯は2020年、ディアボロに関する演出について中国側に相談したことをきっかけに、中国の情報工作員に取り込まれた。その後、中国籍の田曦を通じて不正送金などの手段により、少なくとも中国から約570万元(約2850万円)の資金を受け取っていたとされる。2022年には、台北市士林区の物件を借りて組織拡大の拠点とし、元中士の林姿穎(空軍第一連隊)、林楚崡(旧名・林明慧)、常徳隆、下士の李得勝、海巡の下士・馮世維らを取り込んだ。これらの人物を通じ、接待や報酬の支給といった手法で現役軍人やその知人に接触し、組織への取り込みを図っていたとみられる。
台北地検の調査によると、魯は林を取り込んだ後、林を介して空軍第七通信航管資訊中隊の中士・陳旻琪を勧誘した。陳は2022年11月以降、駐屯地の公務用パソコンから軍内部のサイトにアクセスし、「空軍松山基地指揮部・112年精神戦力教育特別計画実施要領」などの機密資料を魯と林に提供し、それが中国の情報工作員へと送られたという。この見返りとして、陳は21万5000元(約107万円)の報酬を受け取っていた。
これらの行為に対し、台北地方裁判所は2025年6月、国家安全法違反などの罪で魯に懲役10年6か月、林に懲役2年の判決を言い渡した。他の被告も全員が有罪とされている。この中で、芸能人・郭書瑤の弟である郭伯廷は、口座の提供や拠点運営への関与により、懲役3年10か月の判決を受けた。
今回、台北地検は、魯が別の事件にも関与していた事実を明らかにした。魯はチャイナエアラインの運航管理部門に所属する葛倉豪を取り込み、2023年3月および4月、当時の蔡英文総統による「2023年民主パートナー共栄の旅」(*注)に関する海外訪問日程資料の提供を指示していた。
当時、葛は公務用パソコンでチャイナエアラインの内部ネットワークにアクセスし、「政府専用機の離着陸時間および空港情報」などの資料を撮影し、通信アプリを通じて魯に送信。魯はそれらの資料をさらに中国の情報工作員へ転送していた。葛はこれにより、合計4万5000元(約22万5000円)の報酬を受け取っていたという。
台北地検は、魯、林、陳、葛の4人は大陸地区への機密漏洩や公務機密文書・電子記録の提供、さらに汚職防止条例違反などの罪で再起訴した。起訴状では、中国のためにスパイ活動を行う行為は国家安全および社会の信頼関係を著しく損なうものであり、政府機関の正常な運営を阻害するだけでなく、国家利益や安全保障、さらには国民の福祉にも影響を及ぼす可能性があると指摘。「国家安全は取引の対象ではなく、いかなる国家利益を損なう金銭取引も、国家主権と民主制度に対する重大な侵害であり、断じて容認できない」と強く非難している。
また検察は、郭伯廷、趙亦偉、曾姿婷の3人が、魯に銀行口座を提供し、中国側からの資金や報酬を受け取っていたと認定した。3人はこのほか、組織の拠点運営や対中国組織の拡大に協力し、その対価として報酬を得ていたとされる。検察はこれらの行為について、国家安全法に基づく「大陸地区のための組織発展」の罪に当たるとして、3人を起訴した。さらに、不正な資金移動に関与したとして、田曦については銀行法違反で起訴した。
*注
2023年3月29日から4月7日まで行われた蔡英文前総統の海外訪問で、グアテマラ、ベリーズを公式訪問し、往復の途上で米国(ニューヨーク、ロサンゼルス)に立ち寄り、ロサンゼルスではケビン・マッカーシー米下院議長(当時)と会談した。