孫雯(Linda Sun)と夫の胡驍(Chris Hu)は、2024年9月、米国で中国のスパイとして活動していた疑いで逮捕され、ビザ不正取得詐欺やマネーロンダリング共謀などの罪で起訴された。この事件は2025年11月に審理に入った。
検察によれば、孫はニューヨーク州政府で副首席補佐官を務めており、各部局の職員は、中国系やアジア太平洋系コミュニティに関わる案件について、孫の意見を求めることが多かったという。一方で、孫は台湾や中国の外交問題に関して、台湾に不利となる対応を取ったり、意図的に距離を置いていた疑いがある。
裁判資料によると、台湾から送られたメールは孫が取り扱っていたため、対応が遅れたり、事実上放置されたりしていた。2020年のコロナ禍当時、駐ニューヨーク台北経済文化弁事処のJacky Kwan(中国語名は不明)主任は、台湾による20万枚のマスク寄贈について、キャシー・ホウクル副州知事との電話会談や公式な謝意表明を求めて州政府に再三働きかけたが、孫は「彼女に電話しておく」「後ほど返信する」などと述べて、実質的に処理を先送りしていた。
Kwan主任が再三にわたり催促した後、孫は副州知事との電話会談を手配し謝意も伝えられた。しかしその後、公式声明は発表されなかった。これは孫が副州知事補佐官に対し「いかなる公表も行わない。通話は簡潔で軽いものにするように」と提案していたからだという。
法廷での証言によると、州知事の名前が関わる招待状や表彰状の審査・記録を担当する証人は、アジア系コミュニティには詳しくなかったため、アジア系が関わる行事については、すべて孫の判断に委ねていたという。2019年10月、ニューヨークの台北経済文化弁事処が当時のアンドリュー・クオモ州知事を双十節のイベントに招待した際も、案件を孫に回した。孫は「代表は派遣しない、返信もしない」と回答したとされる。
他にも、2019年5月、台北経済文化弁事処が州政府に対し、蔡英文総統のニューヨーク訪問を通知し、当時のクオモ州知事を晩餐会に招待した際、孫はこのメールを自分の携帯電話から中国総領事館の李麗華副領事に転送し、「ご参考までに」と書き添えていた。翌日、孫は弁事処に返信し、州知事は「7月12日の職員向け夏季イベント」のため出席できないと断りの連絡を入れた。しかし、実際のイベントは12日ではなく11日に行われていた。
関係者によると、孫は州知事の代理として台北経済文化弁事処からの招待を断る前に、州知事室を担当する行政職員に緊急で電話をかけ、台湾側の招待を既に州知事へ伝えた者がいないかを確認していたという。「いない」との回答を得ると、孫は「完璧だ」と述べたとされる。さらに2022年には、5月8日から15日を「台湾系アメリカ人伝統週間」と定めるよう求める提案が州知事に寄せられたが、孫はこれについて「公表しない」と判断していた。
検察は、孫が州政府におけるアジア関連業務の専門的立場を長年にわたり利用し、台湾との外交的接触を抑える一方で、中国総領事館との関係を強めていたと指摘している。また、公務システムを不正に用いて表彰申請を行い、州知事の署名を偽造していた疑いもある。
メディアによれば、公判は12月中旬まで続く見通しで、今後さらに多くの資料が明らかになるとみられる。