外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年9月29日(火)

外交・安保カレンダー (9月28日-10月4日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


先週は連休のため本稿掲載が週後半にずれ込んでしまったが、今週最大のトピックは、やはり今年二回目となる「米中首脳会談」の顛末だろう。

前回本稿では「中身のない象徴的な『おみやげ』はあっても、安全保障、資源、経済、貿易問題、AIなどで中国側が譲歩する可能性は殆どない」し、「米側も同様だろう」などと書いた。されば、今週はあまり書くことがないかなぁ・・・とは思ったが、オッとどっこい、まだまだ「ツッコミどころ」は山ほどあるようだ。

その最たるものが米中首脳会談後に発表された「Fact Sheet」なる文章だ。過去40年間、毎回この種の「ペーパー」を読んではきたが、今回ほど中身の薄いファクトシートも珍しいのではないか。そこで今週は、記録のため以下に、この空疎なファクトシートの概要と、それに対応する中国側発表を並べ比較してみることにした。

ホワイトハウスのファクトシート(概要) 中国側発表まとめ
米大統領は米中関係を前進させ、国民を最優先
- 米国は、中国によるオピオイドの規制物質指定を歓迎。2種類のフェンタニル前駆物質の新たな輸出規制に留意。これら化学物質の恒久的規制指定を強く要請。
- 中国が米国情報に基づき逮捕した、対北米違法薬物製造・流通に関与した中国人21名につき、米国は死刑を含む最高刑の適用を強く要請。  
麻薬 違法薬物の取り締まりにも協力
- 米大統領、精製石油製品の生産を増やすよう中国国家主席に要請。 精製石油製品 なし
- 米国は2頭のジャイアントパンダのアトランタ動物園到着を歓迎。 パンダ アメリカに対し、パンダのつがいを貸与する
貿易・投資委員会の運用開始
両国は双方向で計300億ドル相当の非敏感品目により有利な関税待遇を適用する提言に合意、
農業分野の市場アクセス障壁解消のための作業部会を設立。
貿易委員会・関税・農業 米中双方は相互関税を300億ドル程度引き下げ
- 米輸出品目は農産物、魚介類、丸太・木材製品、化粧品、医療機器などを含む。
- 米輸入品目は小型家電、玩具、ホリデー用装飾品、子供用カーシートなどの消費財を含む。
対象品目 対象農産物等は、ソルガム、大豆油や大‌豆かすを含む植物油および油かす、肉類、乳製品など、但し、大豆は含まれず
-中国は2027、28年に米国から少なくとも1,000万トンの石炭を輸入する予定。 石炭 なし
- 両国は商業的に重要な投資関連の問題に対処するための体系的な枠組みを双方に提供する投資評議会を設立。 投資委員会
- 米中はレアアース他重要鉱物のサプライチェーン不足に関する米国の懸念につき、出荷量を適切な水準に戻すべく引き続き協議。 レアアース なし
「米国人のためのより安全な世界実現」:両首脳は平和繁栄促進につき協議、尊重、公平性、互恵を基盤に戦略的安定に基づく建設的関係の構築で合意。 建設的な戦略的安定関係を構築する
- 両国は、G20とAPECの主催国として相互支援し、両首脳は出席 国際会議出席 APECとG20首脳会議への両首脳参加を確認
 - 両首脳は、ロシア、北朝鮮、イランなどにつき協議。イランの核兵器保有は決して許されず、国際水路で通行料徴収を許さない点で合意。  国際情勢、イラン イランの核兵器開発に共に反対、ホルムズ海峡を念頭にいかなる国や機関も国際水路に通行料を課すべきではないと一致
- 両首脳は、第二次大戦において米国と中国が同盟国であり、勝利のため肩を並べて戦ったことを回顧。 第二次大戦 第二次大戦では米中が同盟国として戦い、勝利したことを確認
- 戦後、米国の前方展開軍事的プレゼンスは、自由で開かれたインド太平洋を維持し、米国繁栄に寄与。 戦後 なし
- 米大統領は、米中露3カ国による軍備管理交渉を提唱。 米中ロ軍備管理交渉 なし
- 両首脳は「スーパーインテリジェンス」なる用語使用で合意。
 - 両国は「米中スーパーインテリジェンス(SI)対話」を設立。SI関連の事案に対応すべく二国間連絡ルートの確立で合意。 
SI AIに関してリスクと利点について意見交換する対話の枠組みの立ち上げと、突発事態に対応する連絡チャンネルの設立に合意
言及なし 台湾問題 米国に「独立反対」を要請


相変わらず本邦メディアでは、「米中首脳会談、どちらが勝者?」「トランプ大統領の『異例の厚遇』が示す米中関係“雪解け”」「第二次大戦中、米中は『同盟国』と米側は明言、日本はどうなる」といった陳腐な記事ばかりが目立つが、米中首脳会談については今週の産経新聞WorldWatchに卑見を書いたので、ご一読願いたい。

要するに、

①    トランプ氏の言うことと行うことは区別すべきで一喜一憂しても仕方がない、
②    米側は国内向けに麻薬問題、石油精製製品増産、米国石炭購入などで中国と合意した「成果を強調」するが、
③    中国側は、同じく国内政治上の配慮からか、殆ど沈黙を守っている。
④    恐らく中国側は、中間選挙の結果なども踏まえ、残る二回の首脳会談でこれらのカードを切るか否かを含め、対応を決めるのだろう、ということである。

さて次は、吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「得票率58.2%、与党の『圧勝』はどう作られたのか――ロシア・メディアより」を以下の通りご紹介する。なるほど、やっぱり、そうだったのか・・・、「不正による水増し得票」のカラクリを「そこまでやるか?」と、筆者は興味深く読んだ。

9月18日から20日までの3日間、ロシアでは5年に一度の下院選と統一地方選が並行して行われた。特に下院選は、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以降、初の国政選挙とあって注目されたが、結果は与党「統一ロシア」の圧勝。比例区で58.2%を得票し、小選挙区と合わせて349議席を獲得した。憲法改正に必要な3分の2(300議席)を大きく上回り、全体の8割に迫る。
このほか下院に議席を獲得した政党は、これまで同様、「体制内野党」と呼ばれる政党のみ。政策上の細かな違いはあるものの、プーチン政権に正面から対立することのない、いわば「体制翼賛政党」である。戦争反対を訴えた「ヤブロコ」のような「本当の野党」は、幹部や党員が逮捕されるなど圧力を受け、最終的には比例区から候補者を擁立することさえ阻まれた。
与党勝利という筋書き自体は誰もが予想していたこととはいえ、国営の全ロシア世論調査センターの調査でも、今年に入ってから「統一ロシア」の支持率はおおむね3割台で推移してきた。それが選挙では6割近くまで跳ね上がったことになる。この「圧勝」は、いったいどのようにして生まれたのか。
選挙後、ロシアの独立系メディアや選挙分析の専門家が、公式発表された数字の検証を進めている。今回はその中から、独立系メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」と「メドゥーザ」の分析を紹介したい。
なお、今回の選挙がプーチン政権にとってどのような意味を持つのかについては、拙稿「ロシア下院選、結果が決まっているのに、なぜこれほど大がかりな選挙をするのか ――プーチン体制を支える「選挙」という巨大な儀式」でも詳しく論じた。

◆「選挙不正を除外した『統一ロシア』の得票率は約34%――公式発表を大幅に下回る」、9月22日付「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」(※要約)

  • 物理学者セルゲイ・シュピリキンが開発した手法では、投票率と各政党の得票率との分布を調べることで、不正による上積みを除いた得票率を推計することができる。この手法により、主として投票用紙の大量投入(注:投票箱に投票用紙を不正に投入し、得票数を水増しする行為)等によって現れる統計上の異常値を検出することができる。
  • この手法による検証の結果、不正がなかった場合の「統一ロシア」の得票率は、おそらく34%程度だったと考えられる。下院選挙で見られたこうした統計上の異常については、弊紙は今後数日以内にさらに詳しく報じる予定だ。

◆「国家院選、本当の結果は?――中央選管の発表を独立系選挙分析家が検証」9月24日付「メドゥーザ」(※要約)

  • 「メドゥーザ」は、今回の選挙について独立系ジャーナリストや選挙分析の専門家がどのように報じ、分析しているのかを検証した。
    「ノーヴァヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」と「ヴァージヌィエ・イストーリイ(重要な物語)」は、不正操作がなかった場合、「統一ロシア」の比例代表での得票率は34~35%程度にとどまった可能性があると分析している。特に「ヴァージヌィエ・イストーリイ」は、「統一ロシア」に計上された約3000万の紙による投票のうち、およそ1800万票が不正操作によるものである可能性を指摘している。
  • 中央選挙管理委員会によると投票率自体も60%近くに達した。だが選挙分析の専門家らは、実際の投票率は40%程度と推計。公式投票率が60%近くにまで膨らんだ背景には、公的部門の職員の動員、投票用紙の大量投入、投票率そのものの書き換え等の行為があったと分析している。
  • 今回の選挙で「最大の奇跡」と呼ばれているのが、「公正ロシア」の“救済“である。開票率96%時点で、同党は議席獲得に必要な得票率に達していなかった。ところが、その後わずか1時間で同党の得票は6万7000票増加、結果的に議席獲得に必要な得票率5%をクリアするに至っている(注:「公正ロシア」は体制内野党の中でも特に戦争支持を強く打ち出している政党で、政権側からすると必要な「野党」のひとつ)。
  • 選挙分析家ボリス・オフチンニコフは、「統一ロシア」のために「公正ロシア」から票を奪った結果、同党の得票率が下がりすぎ、議席を獲得できない可能性が高まったため、土壇場で今度は「公正ロシア」の得票数を書き換え始めたのだと分析している。
  • 電子投票の結果については、専門家もジャーナリストもそもそも分析を行っていない。検証することが不可能だからだ。このシステムは以前から「ブラックボックス」とされてきたが、今回、当局は可能な限り多くの票をこの電子投票で投じさせようとした。
  • 一方、不正が通常それほど組織的には行われない国外の投票所では、「統一ロシア」は152カ国のうち40カ国で首位を逃している。


続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

9月29日 火曜日  EU外交担当がシリア訪問
リトアニア首相ブラッセル訪問、NATO事務総長と会談
仏大統領のスペイン訪問(2日間)
9月30日 水曜日  米軍などイラク駐留軍隊の撤退期限
米国防長官、政策演説
欧州委員会委員長のアルバニア、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア訪問
10月1日 木曜日  NATO事務総長の訪独
10月3日 土曜日  ラトビアで議会選挙
10月4日 日曜日  ブラジルで総選挙
ボスニアヘルツェゴビナで総選挙
10月5日 月曜日  カナダ・ケベック州で総選挙


最後はガザ・中東情勢だが、今週もホルムズ海峡やバーブ・ル・マンディブ海峡をめぐる状況は変わらない。今週中東での筆者の関心事項はイスラエル総選挙の行方だ。ネタニヤフ首相が再選されるか否かは、今後の中東、特に湾岸情勢に大きな影響を及ぼすだろう。報道を見る限り、現時点ではかなり接戦らしく、正直なところ、予測できる自信はない。ネタニヤフ氏は一種の政治の天才であり、これまで何度も苦境を脱してきたからだ・・・。今週はこのくらいにしておこう。


<今週以前から続く会議>

9月20日‐9月27日「Climate Week NYC 2026」The Climate Groupが国連・ニューヨーク市議会と共同開催する世界最大規模の気候週間(ニューヨーク)
9月21日‐9月27日 国連観光週間2026(ケニア・ナイロビ)
9月21日‐10月9日 ICAO航空航法委員会、第233回会合(モントリオール、カナダ)
9月21日‐10月9日 ICAO、委員会段階、第239回会合(モントリオール、カナダ)
9月22日‐10月2日 国連総会一般討論(米国・ニューヨーク)
9月26日‐10月1日 国連犯罪防止・刑事司法会議、第15回会合(アラブ首長国連邦)
9月27日‐9月29日 The Saudi Food Show 2026(リヤド)

9月

<9月28日‐10月4日>

28日 メキシコ8月貿易統計発表
28日 ダーバン宣言採択25周年記念ハイレベル会合(ニューヨーク、UNGA)
28日‐9月29日 IDC CIO Summit Saudi Arabia(リヤド)
28日‐9月29日 EU農業水産理事会(ブリュッセル)
28日‐9月30日 第15回カンボジア最大級の国際建築・建設産業見本市(カンボジア)
28日‐10月2日 国際工業見本市(ボゴタ)
29日 核兵器の全廃に関する国際デー記念ハイレベル全体会合(ニューヨーク)
29日 2025年国勢調査の確定値公表
29日 玉城デニー沖縄県知事任期満了
29日 ブラジル8月全国家計サンプル調査発表
29日‐9月30日 テック・ウィーク・シンガポール(シンガポール)
30日 チリ6~8月雇用統計発表
30日 米国第2四半期GDP(確定値)発表
30日 シンガポール人口統計
30日 ドイツ8月労働市場統計発表
30日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)
30日‐10月1日 G20貿易相会合(米国・ミルウォーキー)
30日‐10月2日 UNCTAD、国際会計・報告基準に関する政府間専門家作業部会、第43回会合(ジュネーブ)

10月

1日 中国の国慶節(建国記念日)
1日 中国が改正国防動員法施行
1日 能動的サイバー防御運用開始
1日 ふるさと納税の返礼品として自治体が提供する加工品のルールが厳格化
1日 拷問等禁止委員会「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の選択議定書」締約国(第11会期)(ジュネーブ)
2日 韓国で検察庁廃止
2日 9月の米雇用統計(労働省)
3日 公明党大会
3日 ラトビア議会選
4日 ブラジル大統領選
5日‐10月9日 UNCITRAL 第IV作業部会(電子商取引)第71会期(ジュネーブ)
5日‐10月9日 UNCTAD、計画案及び計画実績に関する作業部会、第91回会合(ジュネーブ)
5日‐10月30日 女子差別撤廃委員会 第93回会議(ジュネーブ)
6日 8月の米貿易収支(商務省)
9日 独立国家共同体(CIS)首脳会議(アシガバート)
10日 台湾の双十節(建国記念日)式典
11日 新潟市長選告示(25日投開票)
11日‐10月13日 世界保健サミット2026年「危機からレジリエンスへ:健康のためのイノベーション」(バーリン)
12日‐10月18日 パリ国際自動車ショー報道公開(一般開始は13日から)
12日‐10月18日 IMF・世界銀行の年次総会(バンコク)
19日‐10月30日 生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)(アルメニア・エレバン)
25日 新潟市長選投開票
28日‐11月1日 UPU(万国郵便連合)、郵便業務理事会、第2回定例会合(要確認)(バーン)
29日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
29日‐10月30日 人権理事会 社会フォーラム、第18回会合(ジュネーブ)
30日 7~9月期のユーロ圏GDP速報値(EU統計局)

11月

1日‐11月4日 英連邦首脳会議(CHOGM)(アンティグア・バーブーダ、セントジョンズ)
2日‐11月6日 IMO理事会第138回会合(英国・ロンドン)
2日‐11月13日 ICAO、理事会フェーズ、第239回会議(モントリオール)
3日 米中間選挙
4日‐11月8日 UPU、管理理事会、第2回定例会合(要確認)(バーン)
7日 ITU、理事会、最終会合、2026年会議(カタール)
9日‐11月12日 国連世界データフォーラム(サウジアラビア、リヤド)
9日‐11月20日 国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)が開幕(トルコ・アンタルヤ)
11月10日‐11月15日 中国国際航空宇宙博覧会(珠海航空ショー)(広東省珠海市)
11日 集団安全保障条約機構(CSTO)首脳会議(モスクワ)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問