外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年9月24日(木)

デュポン・サークル便り(9月24日)

[ デュポン・サークル便り ]


日本の皆さん、シルバーウィークはいかがでしたか?ワシントンは、いきなり週明けから気温が10度近く落ち、体感温度は真夏の酷暑日から突然秋に下がりました。冷暖房の切り替えの季節です・・・

さて、先週から今週にかけて、ワシントンは大揺れでした。というのも、9月18日に突然、ホワイトハウスがCNNとポリティコ誌、MSNowのメディア3社をホワイトハウス「出禁」にしたからです。この3社の記者は強行突破でホワイトハウス内の報道陣に用意されているエリアに立ち入ろうとしたものの、記者証を没収されるという大事件が起きました。

しかもこの3社の「出禁」が、トランプ大統領に言わせると「オレ様についての報道の姿勢がネガティブ過ぎて気に入らないから」という「えっ?」という理由だったから、さあ大変。合衆国憲法修正第1条で認められている「報道と言論の自由」を侵しているとして、当然3社は「出禁」処分の取り消しを求めてワシントンDCの連邦裁判所に政権を訴えました。

昨日ぐらいになってホワイトハウスは、超「後出し」ジャンケンのように、イラン戦争での弾薬不足に関する報道は国家安全保障上の「機密に抵触している!」などの主張を始めましたが、時すでに遅し。週明け以降、ワシントンで最大の話題は、国連総会でもなく、米中首脳会談でもなく、この一件になっています。

また、国連総会に出席するためにニューヨークを訪問するトランプ大統領を代表取材することになっていたのはCNN。これまで代表取材は主要5社(ABC、CBS、NBC、FOX、CNN)の間でローテーション体制をとっていましたが、CNNが出禁処分になったため、ホワイトハウスは他社にCNNが当番になっていたトランプ大統領のNY訪問の代理取材を打診。ですが、なんと!FOXニュースも含め残りの4社が全社足並みを揃えて代表取材の代行を拒否。このため、トランプ大統領のNY訪問はホワイトハウス記者団からの取材が一切なく、いろいろ予定されていたセレモニーも取材陣はゼロ。唯一、記者が集まったのは、22日(火)にトランプ大統領がマムダニNY市長との会談後に、市長公邸で行った共同記者会見のみ(しかも、当然、マムダニ市長はこの共同記者会見に出席するメディアに制限をかけなかったため、結局、トランプ大統領がホワイトハウス出禁にした3社もこの共同記者会見でとりわけ厳しい質問を飛ばすことに・・・)、という異様な事態となりました。「なんでFOXまで足並みそろえたの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、FOXにしてみれば、ここでCNNやMSNowへの処分を他人事のようにとらえていると、民主党政権が誕生したときに、万が一自分たちが出禁になっても、文句を言ったところで「お前が言うな」と言われて終わってしまいます。そう、「明日は我が身」になるリスクあるため、ここでは足並みを他社とそろえて、今回処分の対象になった3社を応援する側に回る必要があるのでしょう。

トランプ大統領は、自分が嫌いなメディアだけ出禁にすれば、FOXやブレイバートなど、自分寄りの報道をするメディアだけに取材させられる。これで問題解決!という軽い思いつきだったのでしょうが、FOXニュースの対応は想定外だったはずです。それだけではなく、あれほど「たくさんのメディアに囲まれている自分」が大好きなトランプ大統領が、主要メディアに完全スルーされるという、本人にとってはありえない状態が生じてしまいました。悔し紛れに「トランプTV」という24時間ストリーミングするチャンネルの開設を発表したものの、その効果も期待薄。本稿を書いている今日(23日)、連邦裁で3社の出禁取り消しをめぐる陳述が行われていますが、その結果が注目されます。しかしまぁ、ブーメラン効果とはまさにこのこと。

そして今日は、そんなトランプ大統領とその周辺をさらにイラつかせることが確実な世論調査の結果が出ました。CNN がSSRSという世論調査専門会社に委託して行った最新の調査で、なんと調査対象になった有権者の67%がトランプ大統領不支持、特に経済政策について「不支持」を表明したのは73%というスゴい結果が出たからです。選挙がない年にこの結果が出ても、政権にとってはかなり頭が痛いところですが、今は既に中間選挙まで2か月を切ってしまっています。さらに調査対象の3分の2の有権者が、選挙で最も重視している問題は「経済」と答えている状況でこの状態・・・・共和党にとっては悪夢以外の何物でもありません。

選挙で落選すれば「無数にいる元議員の一人」になってしまう、という現実がまさにもはや目を背けられないところまで来てしまった共和党議員の中には、ここにきて自分の選挙活動のウェブサイトから「トランプ色」を完全抹殺する候補や、突然「イラン戦争の早期終結」を訴え始める候補、はたまた「消費者物価をなんとかしなくちゃいけない」という今更感満載な最後の訴えを始める人・・・・が続々と出てきました。ただ、ここにきて突然主張を変えても、特に激戦州の有権者にとっては「今頃いうな」と言われておしまいになってしまう予感は否めません。

ということで、中間選挙はいろいろな意味ですごいことになりそうな雰囲気になってきました・・・・


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員