外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年7月31日(金)

デュポン・サークル便り(7月31日)

[ デュポン・サークル便り ]


毎年の夏の恒例行事となっている「子連れ帰省」を、2週間半ほど、しておりましたため、「デュポンサークル便り」はお休みでした。本稿を書いている今日(7月30日)、ようやくワシントンに戻ってきました。帰宅したら、自宅の芝生が阿鼻叫喚ものの惨状を呈しており・・・週末の仕事は決定といったところでしょうか。次に雨が降る前になんとかしなくては・・・こちらに戻ってくる直前に熊本地震が発災、10年前のような大きな揺れが再び来ないことを祈るばかりです。それにしても、日本は暑いですね・・・ワシントンの暑さもそれなりですが、アスファルトに覆われた東京の暑さは、独特のものがあります。

この2週間半、意図的にワシントンのニュースからは完全に自らを遮断していたため、帰宅して荷ほどきも早々に早速CNNをつけてみたら、イラン情勢も相当悪化していますが、アメリカ内政もすごいことになっていました。特に内政は、先週実施された世論調査の結果が一部、今日(7月30日)ぐらいから報道され始めたようなので、引き続き、片付けや洗濯をしながら一気にキャッチアップを図っています。

さてそのアメリカ内政。中間選挙までいよいよあと3か月と少しを残すばかり。現在の連邦議会会期は今年末まで続きますが、今やいかなる法案・決議案も中間選挙への影響抜きには語れなくなってきました。そんな中で今日、一番目を引いたのは、6月8日付デュポンサークル便りでご紹介して以来、折に触れてその動向について書いてきた「YOLO共和党上院議員」の皆さんの大活躍(?)です。現在、上院ではトッド・ブランチ現司法長官代行を司法長官に正式に指名する人事が、上院司法委員会の審議にかかっています。トランプ政権との間では、いわゆる「反司法の武器化基金(1月6日連邦議会議事堂襲撃事件で起訴された人が保障を受けられる基金)」問題と、トランプ大統領一家と国内歳入庁(IRS)との間で成立した「トランプ大統領一家を金輪際、脱税捜査の対象にしない」ことを条件とする「示談」の2件が揉めています。このため、ブランチ司法長官指名の指名承認を委員会で採決し、本会議投票に付すことができない状態が続いています。

現在上院司法委員会委員は全部で22人。そのうち多数党の共和党の委員が12人、対する民主党委員が10人、という構成なのですが、トランプ政権にとっての最大の問題は、この司法委員会の共和党委員12名のうち、あの「YOLO上院議員」が3人もいることです。この3人のうち2人が、予備選でトランプの「推し活」候補に負けて恨み骨髄のジョン・コーニン上院議員と、すでに自分が所属する銀行問題委員会でウォルシュFRB連銀理事の指名を1か月近く止めた実績(?)を持つトム・ティリス上院議員。この2人が、「反司法の武器化基金」を二度と復活させないというトランプ政権側の約束を書面にする、という条件が聞き入れられるまでブランチ長官指名承認は認めない、と表明してしまったのです。しかも、同委員会から指名人事の送付を待つ本会議側でも、現在さらに2人のYOLO共和党議員(キャシディ、マカウスキー両上院議員)がこの指名人事に賛成票を投じるか否かは現時点ではコミットできない、と表明済み・・・というわけで、ブランチ長官指名が承認される可能性は、現時点ではほぼゼロなのです。

この状態にブチ切れたトランプ大統領は、「いったん、ブランチ司法長官指名人事を撤回して、来年、ティリスとコーニンがいなくなった後の上院にもう一回、出しなおす!」と息巻いています。ですが、問題は来年1月新会期を迎える上院で共和党が引き続き多数党の座を維持している保証が全くないことです。

というのも、今日、CNN他のメディアが大々的に報じている最新の世論調査をざっと見ると、「普通なら民主党が勝つなんてありえない」州の上院選が、トランプ大統領の不人気(なんてったって、先週実施されたAP-NORC、キニピアック、CNN各社世論調査のすべてでトランプ大統領の支持率は30%台前半、という最低記録を更新しています)もあり、日を追うごと「接戦」、あるいは「民主党にやや有利」になりつつあるからです。

このような州の代表例は、アイオワ州、テキサス州、ジョージア州、そしてノースカロライナ州。中でもアイオワ州は、再選不出馬を表明した現職のジョニ・アーンスト上院議員の議席をめぐって上院選への選出を目指すアシュリー・ヒンソン下院議員(共和党)とジョシュ・トゥレック同州下院議員(民主党)が激しく争っています。ヒンソン下院議員をトランプ大統領がすでに支持表明しているのは周知の事実です。ところが、ここにきてなんと、これまで「正式な支持表明」をせず沈黙を守ってきたオバマ元大統領がトゥレック州下院議員の支持表明を正式に行いました。これでアイオワ州の上院選は一躍「トランプVSオバマ代理戦争」として注目を浴び始めました。

そのほかの州でも、テキサス州では「聖書を引きながら自分の主張を訴える」タラリコ候補が、スキャンダルまみれのパクストン候補をすでに3%という僅差ではありますがリード。ジョージア州でも現職の上院議員の中で最年少(38歳!)のオソフ上院議員が対立する共和党のコリンズ候補に対しかなり優位に再選運動を展開中。ノースカロライナ州でも、民主党候補のクーパー元同州知事が共和党の対立候補相手にリードしているのです。

こうやって書き出していて気付きましたが・・・今回、共和党候補相手に勝てるかもしれない民主党候補は、4人のうち3人が南部出身の民主党議員。この「サザン・デモクラッツ」というのは実は面白い存在で、カーター、クリントン両元大統領、さらに古くは民主党上院議員の重鎮で長く軍事委員会委員も務めた故サム・ナン上院議員など、有名政治家が多く出ています。民主社会主義連合(DSA)に代表される急進左派の影響力が急速に拡大する民主党ですが、無党派層を民主党支持層に取り込むことができるのは、もしかしたら、彼らのような南部州出身の政治家かもしれません。さながら「サザン・デモクラッツは民主党の内部分裂を防げるか?」といったところでしょうか・・・  


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員