外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年6月3日(水)

外交・安保カレンダー (6月1日-7日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


今週の原稿は久し振りに出張先のワシントン市内のホテルで書いている。米国の首都は昨年7月以来。だが、今回ほど「興奮しない」ワシントン出張はちょっと記憶にない。何故かって?理由は簡単。トランプ氏以外、この街の誰も米国外交に「如何なる戦略があるか(ないか)」につき権威を持って語れる人はいないと思ったからだ。

実際、一年振りで、過去45年間繰り返してきたワシントンの「定点観測」を行ってみたが、この推測は変わらなかった。それどころか、この一年で、我々がこれまで慣れ親しんできた「ワシントンの外交安保マフィア」の機能が著しく低下していると実感した。現役のNSCや国務、国防、CIA等の職員には極めて失礼な言い方だが・・・・。

天に唾する話だからか、シンクタンクの関係者は誰も公には言わないが・・・、そもそもシンクタンクが本来の役割を果たしていない。忙しく考える時間のない現役職員と様々なアイディアを共有することが出来ていないらしいのだ。トランプ政権一期目と比べても、例えばNSCは担当官の数がざっくり半減し、レベルも下がったと聞いた。

閣僚レベルが大統領の顔色を窺いながら仕事をするのだから、その下の高官たちの動きも推して知るべしだろう。霞が関の機能低下よりもはるかに深刻なことがこのワシントンで起きているとは・・・。信じたくはないが、状況は東京で想像していたよりずっと悪い、というのが率直な印象。各国の外交官たちも、さぞかし困っていることだろう。

さて、今回の出張の主目的はAJC、American Jewish Committeeの年次総会Global Forum 2026への参加だった。最近の反ユダヤ主義の拡大もあり、会場となったホテルの警備は昨年に比べても格段に強化され、今年は入り口に警察犬が常駐するほど。これだけセキュリティが厳しかったので、逆に安心したほどだ。

AJCとの付き合いも今年で35年、随分長いご縁だが、ユダヤ系アメリカ人の実態を知らずして、米国の状況は理解できない、というのが筆者の一貫した考え方だ。最近彼らの「黄金時代」が終わりつつあるのではと危惧していたが、どうやらその危惧は現実のものとなりつつあると今回改めて感じた。

もう一つ、今回AJCの会合に参加して改めて痛感したのはユダヤ系インド人の重要性だ。あまり知られていないことだが、現在、インド国内に暮らすユダヤ系のインド人は、約4,000人〜5,000人といわれる。勿論、14億のインド総人口から見ればと非常に小さなコミュニティに過ぎないのだが・・・。

ところが、インドのユダヤ系コミュニティの歴史は実は2000年以上もあり、インドは世界で唯一「歴史的にユダヤ人への迫害がほとんどなかった国」としても知られている。1940年代には約3万人近くのユダヤ人がインドに住んでいたが、1948年イスラエル建国以降、多くがイスラエルに移住していったのだそうだ。

米国にも大きなユダヤ系インド人コミュニティがあることを知る人は少ない。ユダヤ系は欧州など世界各地で迫害を受けてきたが、インドでユダヤ系はヒンドゥー教徒の多数派や地元の統治者たちに温かく迎え入れられ、宗教的な衝突を起こさずに共存してきたという。

ヒンドゥーの「敵の敵」がユダヤなのか、などと単純なことを言うつもりはないのだが・・・。しかし、なるほど、だから最近インドの中東政策の基軸はI2U2(インド、イスラエル、UAE,USA)なのか、などと妙に納得した。この点については、先週の産経新聞WorldWatchに書いたので、ご関心のある向きはご一読願いたい。

さて次は、いつもなら吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーなのだが、今月は同研究員多忙のため、お休みさせて頂く。続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

6月2日 火曜日  ハンガリー首相訪独、独首相と会談
ラオス大統領訪中(5日間)
6月3日 水曜日  ミャンマー首脳、5日間の訪印を終了
韓国で地方選挙
6月4日 木曜日  ケニヤ大統領、南アフリカ訪問
6月5日 金曜日  EU・バルカン西部諸国首脳会議(モンテネグロ)
6月7日 日曜日  アルメニア議会選挙
コソボ議会、解散総選挙
ペルー大統領選挙決選投票
非公式EU国防大臣会合(キプロス)


最後はガザ・中東情勢だが、先週は「恐らく交渉の実態は米側が期待するよりもずっと『遅々として進まない』『悲観的なもの』に違いない。イラン側が早期に譲歩に応じるとは思えないからだ。となれば、このまま停戦交渉が進展する可能性は低いだろう」と書いた。今週は米大統領が電話でイスラエル首相を「罵った」というから驚いた。

具体的にトランプ氏はネタニヤフ氏にこう言ったと報じられている。

"What the f* are you doing?" "f*ing crazy"何バカやってんだ?お前はイカレてる!

"You'd be in prison if it weren't for me. I'm saving your a*," 俺がいなきゃ、お前は刑務所に入ってるはずだ。俺がお前のケツを救ってるんだぞ!

"Everybody hates you now. Everybody hates Israel because of this." 今や誰もがお前を嫌っている。この件のせいで、誰もがイスラエルを嫌っている。


うーーん、大統領の言葉とは思えないほど「品のない」表現だが・・・。いずれこうなることは分かっていたけれど、ここまで酷いとは思わなかった、というのが筆者の率直な感想だ。イスラエルの公式見解では、電話会談は「厳しいやり取り」だったが、個人的な「侮辱」はなかったそうだが、どちらが正しいかは容易に想像がつく。今週はこのくらいにしておこう。


2026年重要日程レポート22【6月1日版】


<今週以前から続く会議>

5月4日‐6月10日 エリザベート王妃国際音楽コンクール(チェロ部門)(ブリュッセル)

6月

<6月1日‐6月7日>

1日 カザフスタン5月CPI発表
1日 ユーロスタット4月失業率発表
1日 エチオピア総選挙
1日‐6月5日 小型武器及び軽兵器のあらゆる側面における違法取引の防止、撲滅及び根絶のための行動計画の実施を検討するための隔年開催の国家会合、第9回会合(ニューヨーク)
1日‐6月5日 犯罪防止及び刑事司法委員会、第35回会合(ウイーン)
1日‐6月5日 児童の権利に関する委員会、会期前作業部会、第101回会議(ジュネーブ)
1日‐6月12日 国際労働機関(ILO)第114回国際労働会議(ジュネーブ)
1日‐6月19日 ICAO航空航法委員会、第232回会合(モントリオール)
2日 香港4月小売統計発表
2日 インドネシア5月CPI発表
2日 インドネシア4月貿易統計発表
3日 第14回ASEANプラス3青年問題担当高級実務者会合(SOM +3)(フィリピン)
3日 オーストラリア第1四半期GDP統計発表
3日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
3日 韓国統一地方選挙
3日 ブラジル4月鉱工業生産指数発表
3日‐6月5日 ASEAN・中国FTA合同委員会および関連会議(フィリピン)
3日‐6月5日 第4回 ASEAN-ADB 対話(フィリピン)
3日‐6月5日 ENERtecアジア2026年(クアラルンプール)
3日‐6月5日 自動車・部品・輸送機器、産業機器展示会「AUTOEXPO and INDUSMACH Kenya 2026」(ケニア・ナイロビ)
3日‐6月6日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(ロシア・サンクトペテルブルク)
4日 オーストラリア4月貿易統計発表
4日‐6月5日 第1回アラブ・アフリカ エネルギー金融・投資フォーラム(セネガル・ダカール)
4日‐6月7日 ベトナム国際高級製品見本市2026(ホーチミン)
5日 UNDP/UNFPA/UNOPS、UNICEF、WFP、UN Womenの執行委員会合同会議(ニューヨーク)
5日 台湾5月CPI発表
5日 米国5月雇用統計
5日 第10回ASEANプラス3青年閣僚会議(AMMY+3)(フィリピン)
5日 トルコ5月CPI発表
5日 カナダ5月雇用統計発表

<6月7日‐6月14日>

7日 アルメニア議会選挙
7日 OPECプラス閣僚級会合
7日 東京都中野区長選投開票
8日 メキシコ5月自動車生産・販売・輸出統計発表
8日 ASEAN高級実務者会議(SOM)(フィリピン)
8日 チリ5月CPI・貿易統計発表
8日‐6月12日 IAEA定例理事会(ウィーン)
9日 メキシコ5月CPI発表
9日 東アジアサミット(EAS)高級実務者会合(SOM)(フィリピン)
9日 米国4月貿易統計発表
9日 カナダ4月貿易統計発表
9日 台湾5月貿易統計発表
9日 中国5月貿易統計発表
9日 サウジアラビア2026年第1四半期GDP推計(確定値)発表
9日‐6月11日 アジア太平洋地域におけるグリーン水素2026(マレーシア・サラワク)
9日‐6月12日 第24回ASEAN・日本STOMリーダーズ会議(フィリピン)
9日‐6月18日 UNFCCC、締約国会議補助機関会合、第64回会合(ボン・ドイツ)
10日 中国5月CPI発表
10日 ロシア5月CPI発表
10日 カンボジア5月貿易統計発表
10日 米国5月CPI発表
10日 カナダ中銀政策金利発表
10日‐6月11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
10日‐6月13日 タシケント国際投資フォーラム(ウズベキスタン・タシケント)
11日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
11日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
12日 ブラジル5月IPCA発表
12日 フランス5月CPI発表
12日 ドイツ5月CPI発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
13日‐6月16日 IBE 2026 - 国際美容博覧会(クアラルンプール)

<6月14日‐6月21日>

14日 福井県大野、長崎県南島原各市長選投開票
14日‐6月16日 G7首脳会議(フランス・エビアン)
15日 台湾5月貿易統計発表
15日 サウジアラビア5月CPI発表
15日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
15日‐6月17日 「Saudi Food Show 2026」サウジ食品ショー2026年(リヤド)
15日‐6月18日 欧州議会本会議
15日‐6月19日 第27回「SOME」経済産業省会議(ASEAN・METI)(フィリピン)
15日‐6月19日 第4回ASEAN・アジア開発銀行(ADB)対話「4th ASEAN-Asian Development Bank(ADB)Dialogue」(フィリピン)
16日 香港3~5月雇用統計発表
16日 ブラジル4月月間小売り調査発表
16日 チリ金融政策決定会合
16日 EU一般問題理事会
16日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日‐6月17日 ブラジル中央銀行、Copom
16日‐6月17日 米国FOMC、経済見通し発表
16日‐6月18日 ヘルスケア展示会・カンファレンス「Africa Health ExCon2026」(エジプト・カイロ)
17日 ロシア第1四半期経済活動別GDP発表
17日 米国5月小売統計
17日 英国5月CPI発表
17日 ユーロスタット5月CPI(HICP)発表
17日‐6月19日 農業技術・スマート農業ソリューション展示会「Agritec Africa 2026」(ケニア・ナイロビ)
18日 英国労働市場統計(2月~4月)発表
18日 ニュージーランド第1四半期GDP統計発表
18日‐6月21日 スリランカEXPO2026
18日‐6月19日 欧州理事会(EU首脳会合)
19日 カナダ4月小売統計発表
19日 ロシア中央銀行理事会
19日 ジューンティーンス(奴隷解放記念日)で米国市場休場

<6月22日‐6月28日>

22日 カナダ5月CPI発表
22日‐6月26日 サイバー・ウイーク2026(テルアビブ)
22日‐6月26日 中国国際サプライチェーン促進博覧会(北京)
23日 香港5月CPI発表
23日 台湾5月雇用統計発表
24日 米国2026年第1四半期国際収支統計発表
24日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
24日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
24日 台湾5月小売統計発表
24日‐6月28日 APEC観光大臣会合(マカオ)
25日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
25日 香港5月貿易統計発表
25日 サウジアラビア4月貿易統計発表
25日 ECB一般理事会 
26日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
26日 メキシコ5月貿易統計発表
27日‐6月30日 MIJF 2026 - マレーシア国際ジュエリーフェア(クアラルンプール)

<6月29日‐7月5日>

29日 カザフスタン第1四半期経済活動別GDP発表
30日 サウジアラビア2026年第1四半期投資報告
30日 チリ3~5月雇用統計発表
30日 ドイツ5月労働市場統計発表
30日 トルコ5月貿易統計発表
30日 沖縄県うるま市(旧石川市)の米軍戦闘機小学校墜落事故67年
6月上旬 ラオス5月CPI発表

7月

1日 アイルランドがEU議長国に(12月末まで)
1日 貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」共同見直し開始
1日‐7月3日 ACUNS年次総会(リスボン、ポルトガル)
2日 アルジェリア議会選挙
2日 6月の米雇用統計(労働省)
7日‐7月8日 NATOアンカラ首脳会議(第36回)(アンカラ、トルコ)
13日‐7月17日 UPEACE-UNITAR 国際法・外交修士課程フィールド訪問(ジュネーブ)
15日‐7月18日 EU-ASEAN・ビジネスミッション(バンコク)
16日‐7月17日 第22回 ASEAN-日本包括的経済連携合同委員会(TBC)(フィリピン)
19日 第59回ASEAN、AMM、準備SOM・SEANWFZ委員会(フィリピン、未確定)
19日 サントメ・プリンシペ大統領選挙(サントメ・プリンシペ)
19日‐7月29日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会(韓国・釜山)
20日 第59回ASEAN外相会議(AMM)開幕・本会合(フィリピン、未確定)
21日 ASEAN三者会合(ノルウェー&トルコ)(フィリピン・マニラ市)
22日 ASEAN PMC+1 — 日・米・中・EU・印・豪・露・英・加・NZ。各対話相手国との個別セッション。南シナ海・貿易が焦点 (フィリピン、未確定) 
22日 南シナ海行動規範(COC)交渉ラウンド(TBC)(フィリピン、未確定)
28日 1951年難民条約75周年記念(UNHCR)(ジュネーブ)
29日 核実験に反対する国際デー(国連)
30日 人身売買被害者世界デー(UNODC)(国連主催)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問