外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年5月18日(月)

デュポン・サークル便り(5月18日)

[ デュポン・サークル便り ]


3月並みの気温が続いていた先週のワシントン。なのに、週末には、天気予報どおり「夏日」が到来。しかも、蒸し暑い・・・。月~水は、最高気温の記録を更新するかどうか、という暑さなのだそうです。でも、来週後半は、また、ヒンヤリした天気に逆戻りなんですよね・・・日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

先週後半、なんとか予定どおり中国を訪問したトランプ大統領。事前には、ありえないほどメディアからは「スルー」されていた訪中でしたが、やはり、始まってみるとCNNは到着後の歓迎式典から始まり、様々な行事をずっと生中継。FOXニュースも、帰国直後のトランプ大統領を捕まえて単独インタビューしていました。

ですが・・・正直、米中会談でどんな成果が出たの?と聞かれても「・・・・・・・」な感じ。中国政府側から公式発表があった唯一の合意事項は「建設的戦略的安定に同意した」ことのみ。トランプ大統領からは事後、「素晴らしい(fantastic)通商合意ができた」「中国からイラン情勢について、必要な支援はなんでもすると申し出があった」などなどの発言はありましたが、中国政府側はこれらの発言を公式には確認していない状態なので、そもそもこういう点で合意があったのかどうかも不明。でも、一応、9月24~25日に習近平主席がアメリカを訪問することは決まったようですが・・・。

なんとなくモヤモヤ感満載でトランプ大統領の訪中が終わった後は、アメリカのニュースサイクルは「1にイラン、2にハンタウイルス、3,4がなくて5にガソリン価格」状態に逆戻り。加えて、中間選挙を見据えた内政の動きも活発になってきました。ここ数日の内政上の最大の話題は(1)バージニア州が今年の中間選挙までに選挙区の「区割り変更」をしようとしていた試みが、連邦最高裁でも申し立てが棄却されたことで、完全に頓挫、(2)ルイジアナ州の上院選共和党予備選で、現職のベン・キャシディ上院議員がトランプ大統領が支持したMAGA系候補に敗退、の2つでした。(1)はそもそも、最初から無理筋な話だったので、大々的なニュースにはなっていますが、まぁ、既定路線かな、といったところ。ですが、(2)は、これから議会で来年度連邦予算審議が大詰めを迎えるこの時期、かなり影響が出る可能性が・・。というのも、現在、上院は共和党53議席、民主党と民主党と基本的に投票行動を共にしている無所属系候補が47議席と、共和党のマージンは6議席しかありません。キャシディ上院議員が今回、予備選で敗退=今季限りで議員任期満了、となったことで、この53議席を占める共和党議員のうち、すでに今期限りで引退を表明しているトム・ティリス上院議員に加えて、トランプ大統領の顔色を窺わなくていい共和党上院議員がもう一人増えたわけです。そして、上院共和党には、スーザン・コリンズ上院議員(メイン州)とリサ・マカウスキー上院議員(アラスカ州)という、トランプ大統領との関係がかなりビミョーなため、投票のたびに「造反する?しない?」と注目される議員が2人います。この4議員全員が一緒に「造反」し、民主党議員と投票行動を共にしてしまうと、民主党議員側が提出してきた法案や上院決議案が可決されてしまう、という展開になる可能性も。特に、メイン州選出のコリンズ議員は、今年、再選を目指して選挙戦に臨みますが、全体的に穏健なメイン州内の共和党支持層から「トランプ大統領のやることを追認してばっかり」という突き上げをくらっているという事情も。このため、最近、対イラン軍事行動に関するトランプ政権の行動に制限をかけることを目的にした「戦争権限法決議案」に、コリンズ議員はすでに先月から民主党議員と一緒に賛成票を投じています。ここにもはやトランプ大統領の顔色をうかがう必要がないティリス、キャシディ両上院議員が加勢すると・・・・共和党指導部にとっては、難しい議事運営を迫られる局面が出てくるかもしれません。

さらに、トランプ大統領訪中以上に、ワシントンで話題になっていたのが「トランプ大統領に同行して中国に行って、メディアの注目を浴びまくるルビオ国務長官VS国内でお留守番のバンス副大統領」の対比。大統領と副大統領が外遊に一緒に行かないのは、「万が一」の事態を想定してのことなので、普通のこと。ですが、中国に出発する数日前にホワイトハウスで行われたイベントの際に、突然、トランプ大統領が、「JDバンスを好きな人は?」「マルコ・ルビオを好きな人は?」と「どっちがより多くの拍手をゲットできるか競争」を勝手に始めてしまったことが、「トランプ、やっぱり2028年大統領に向けた『跡目争い』でバンスとルビオを競争させている」説を加速させることに。

トランプ大統領が何を目指しているのかわからない言動を続ける中、確実にワシントンは選挙モードに入っています・・・・


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員