外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年5月12日(火)

デュポン・サークル便り(5月12日)

[ デュポン・サークル便り ]


週末は、せっかく気持ち良いお天気で母の日の週末を過ごしたというのに、今週は再び雨、しかも気温は例年以下の肌寒さ。でも、来週には夏のようなお天気がめぐってくるのだとか。ほんとでしょうか・・・・日本の皆さんは、「母の日」の週末、いかがお過ごしになりましたか?

先週も、そして今週も、ワシントンでは「トランプ劇場」が続いています。ようやく、イランとの停戦に向けて一筋の光明が差したか?と先週末は、一瞬、明るい雰囲気になりましたが、結果は・・・日本でも報道されていると思いますが、トランプ大統領は、「イランからの回答文書を読んだ。ありえねぇ(TOTALLY UNACCEPTABLE)!」と「トゥルース・ソーシャル」で一蹴。再び事態は膠着状態に逆戻りしてしまいました。しかも、今日(5月11日)、この件について記者から質問を受けたトランプは「あんなゴミみたいな回答をよこしやがって。ひどすぎて最後まで読む気になれなかった」とイラン側の回答について罵り倒す始末。交渉相手をここまでこき下ろすって、ホルムズ海峡を実質的に封鎖されて困っているのはこっちなのに・・・・

しかも、この状態で、現在、トランプ大統領は中国に向かう機中の人のはず。そもそも、3月下旬に予定されていた訪中をわざわざ延期したのは、トランプ本人が訪中までにイラン情勢を片付けて、「イランに勝ったオレ様」として北京にジャジャーン!と登場したかったからだった、というのがもっぱらの噂。それが、現実は、イランに勝つどころか、停戦すら、かろうじて首の皮一枚で維持できている状況。もっと言えば、ホルムズ海峡が封鎖されてもこれに耐えられる力は、陸続きの代替ルートを確保済みの中国の方がある、と言われていることから、「イランに勝ったオレ様」どころか「中国にちょっと知恵を借りないと事態の打開ができないかもしれないワタクシ」状態で訪中する羽目になってしまいました。少なくとも当時は、連日米軍がイランをボコボコにしていた時期。これなら3月に予定どおり訪中していた方が、まだ中国も多少はビビっていたかもしれません。というわけで、かなりアテがはずれた状態で訪中することになるトランプ大統領、いったい、習近平主席とどんな話をするのでしょうか・・・

しかも、先週になって突然、「ハンタウイルス」という感染症ネタが降って湧いたように発生し、今、アメリカでニュース番組を見ていると「1にイラン、2にハンタウイルス、3,4がなくて5にガソリン価格」状態。そうです、普通だったら、かなりメディアも注目するはずの米中首脳会談が、これまでないほど、メディア的にスルーされている状態なんです。しかも通常は、あらゆる国際ニュースを全方位的にもれなくカバーしてくれるCNNが、先週、創業者のテッド・ターナー氏が死去するというビックニュースが起きたこともあり、本来であれば、クリスチャン・アマンプール女史やファリード・ザカリア氏などの有名アンカーが識者をゲストに迎えて米中関係について深堀する番組を放映するはずの時期に「創業者追悼シフト」に局全体が突入。このため、毎週日曜日の朝に、1週間を振り返って内外の主要ニュースを深堀インタビューを交えて振り返ってくれる「ファリード・ザカリアGPS」のような番組も、テッド・ターナー氏追悼セグメントの合間にイラン情勢やハンタウイルス、さらに、今年はえらくショボいと評判のロシアの戦勝記念パレードや、アメリカ内政のニュースを報じている状態になってしまい、その結果トランプ訪中のカバレッジはほぼゼロ。こんなこと、滅多にありません。でもイラン情勢で迷走が続き、正直、「出たとこ勝負」で訪中するトランプ大統領にとって今回の訪中は不幸中の幸いかもしれません。「アジア研究者」という小さなコミュニティの外ではあまり注目されていないのですから・・・。

この「大統領訪中」という大きなネタを差し置いて、先週からやたらとメディアで注目を集め始めたのが、マルコ・ルビオ国務長官兼国家安全保障担当大統領補佐官。というのも、SNS発信などを通じてトランプ大統領とローマ教皇レオ14世の間で相変わらず続いている「空中戦」をなんとか打開しようと、トランプ政権がバチカンに派遣したのがルビオだったからです。野球好きのレオ14世へのお土産がなぜかクリスタル製のアメフトの形の置物だったり、ちょっと「?」な瞬間はあったものの、さすが、カトリックに改宗して日が浅いバンス副大統領とは違って、生まれながらのカトリック信者としてレオ14世に敬意溢れる態度で接するルビオは、どう見てもバンスより立派。しかも、バチカン訪問の直後に、すわ、選挙キャンペーンか?と思わせるようなビデオまで公開。ホワイトハウスでルビオが登場した記者ブリーフィングでの彼の姿がえらくサマになっていた、という話題も加わり、イラン情勢やハンタウイルス以外の大きな注目点は、「もしかして、ルビオが2028年大統領選挙では共和党の最有力候補なんじゃ?」という観測報道すら流れています。

ですが、個人的には、今私が最も気になるのは今年11月の中間選挙と同時に行われるカリフォルニア州知事選なんです。というのも、この州知事選、6月に行われる予備選が、その名も「ジャングル予備選」。つまり、カリフォルニアの知事選は、民主、共和各党でそれぞれ候補者を出す、という通常の予備選スタイルではなく、政党の別なくすべての候補者が一つの予備選に参加、予備選の上位二人が今年11月の州知事選で、いわば「決選投票」に向かう、という流れなのです。現時点で出馬している候補者数は、なんと60名以上(!)。テレビ放映される候補者討論会に出席できる程度の支持率を持っている候補者だけでも総勢7人、うち民主党候補が5人、共和党候補が2人。そうです、予備選で民主党の候補者数が多すぎて、票を食い合ってしまい、決選投票に進むのが共和党の2人、という民主党にとっての「悪夢のシナリオ」が、かなり現実味を帯びているのです。そうでなくても、今回はレーガン元大統領、「シュワちゃん」ことアーノルド・シュワルツェネッガー元知事や、ギャビン・ニューサム現知事のような「セレブ政治家」が珍しく1人もいない「どんぐりの背比べ」状態になっている今年のカリフォルニア州知事選挙。民主党候補が「共食い」した結果、共和党候補が「漁夫の利」的勝利を収めるなんて結果になったら、民主党としては目も当てられません。

こんな感じで、2026年中間選挙はもちろん、その先の2028年大統領選挙に向けた動きが早くも始まりました。ほぼ毎日、ガソリンの値段が上がり続けて、本当にイラン情勢、早くなんとかならないの、と思いつつ、こういう内政ネタには、やはり、わくわくしています・・・・


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員