キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年3月30日(月)
[ デュポン・サークル便り ]
春を通り越して初夏?と思ってしまうようなお天気の日と、明け方と日没後は氷点下スレスレまで落ちる日が交互にやってくる、ジェットコースターのようなお天気サイクルが続くワシントン。来週も、同じパターンになりそうです。ただ、すわ初夏?という気温の日も数日あったため、ポトマック川沿いの桜は一気に開き、今週末、ピークを迎えています。日本でも桜の開花宣言がありましたが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
実は、先週は数日間、ポーランドで開催された日欧安保関係についての会議に出席してきました。「中露接近の影響」がテーマの会議でしたが、衝撃だったのは、こんなに中東情勢が炎上しているのに、会議に出席していたポーランドや独を中心にしたヨーロッパ側の参加者の関心が、ほぼロシア「だけ」に集中していたといっても過言ではないことでした。また、アメリカとの向き合いかたも、ヨーロッパ側の参加者の間でかなりばらつきがあり、欧州関係の複雑さの一端を実感しました。
そんな新しい気付きを得てワシントンに戻ってきた私を待っていたのは、ズルズルと5週目に突入した対イラン武力攻撃。とうとう先週は、通常は佐世保に展開している強襲揚陸艦「トリポリ」に乗って、在沖の第31海兵遠征部隊(MEU)が中東に展開。どこに上陸させる予定なのか・・・という推測が飛び交っています。そんな中、トランプ大統領は「48時間以内にホルムズ海峡を開かなければイランのエネルギー施設を破壊する」と啖呵をきったものの、ほどなくして「外交交渉が始まったから」を理由に攻撃開始を(自称)延期。ただ、イランは、その時点では、そもそもアメリカと外交交渉していること自体を否定している状態でした。このため、「トランプはいつも最後でビビってやめる(Trump Always Chicken Out, TACO)」が再び発動されたのでは、という話題でワシントンは持ち切り。ちなみに、週末にテキサスで開始された共和党保守派が一堂に会する政治集会「保守派政治行動委員会(CPAC)」にイランのパフラヴィー王朝の末裔のレザー・パフラヴィー皇太子が登場、「イランの民主化は私が先導する」と流ちょうな英語で演説し、場内で喝采を浴びていましたが・・・・・その一方で、フーシ勢力が紅海付近でイランを支援して「参戦」するという意思発表がされるなど、中東は文字通り、大炎上中。いったい、アメリカはこの状況をどう収めるつもりなのでしょう・・。
アメリカ国内に目を移せば、ついにガソリン価格の全米平均が、1ガロン4ドルを超えました。また、3月28日(土)には、トランプ大統領に抗議する「(アメリカに)王はいない」集会が全米で行われましたが、「集会やります」という事前申請をした大集会だけでも全米で計30か所以上。それ以外に、交通量が多い州の幹線道路の沿道に付近の住民がプラカードを持って集まるようなる自然発生的集会も数多く開催されました。実は、私の住んでいるエリアでも、3月28日は、通勤や買い物によく使う道路の沿道に、付近の住民の人が大量にプラカードや横断幕をもって集結するという、私が15年以上前に今の地域に引っ越してきてから初めて見る光景が出現。トランプ大統領への反感がかなり広がっていることを感じさせられました。
また、3月27日には、国土安全保障省予算の一部凍結が1か月を超え、空港保安検査官がまるまる1か月無給で働くという、ありえない状態が発生。空港によっては、保安検査場通過の待ち時間が4時間を超え、保安検査場に向かう人の列が空港の建物から完全にはみ出し、駐車場まで伸びる光景も。トランプ大統領が「混雑緩和のために関税移民局(ICE)捜査官を派遣する!」と発表したものの、不法移民の拘束が主たるICEのみなさんには、空港の手荷物検査に関連する作業は完全にアウェイの未知の世界。混雑が緩和されるはずもなく、逆に「ICEが何してんねん」という有権者からの批判の声が出る始末。業を煮やしたトランプ大統領は、ついに「空港保安検査官の給料を国土保障省はなんとしてもひねり出すべし」という趣旨の大統領令に先週署名、よくも悪くもこの大統領令のおかげで、空港保安検査官への給料の支払いは、3月30日から再開しそうな雰囲気です。
が!上院はすでに2週間の復活祭休暇に入ってしまいました。ということは、国土安全保障省予算案そのものに対する採決は上院が審議を再開するまではないというわけ。その間、国土安全保障省は、大統領令に従うべく、奔走しなくてはいけないわけ・・・・議会に対する信頼度が民主、共和両党ともにダダ落ち、という世論調査の結果がよく紹介されますが、これじゃ、そうなっても仕方ないですよね。
そうこうしている間に計5万人もの米軍兵士が中東に着々と集結しつつあるという報道が・・・パキスタンが仲介役になり開催されている「はず」の和平交渉ですが、一刻も早い事態の鎮静化を願いたいものです・・・
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員