外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年3月13日(金)

デュポン・サークル便り(3月13日)

[ デュポン・サークル便り ]


早いもので今年で東日本大震災から15年が経ちました。アメリカであの日の朝、テレビをつけた私の目に飛び込んできた光景は今でも目に焼き付いています。あの時にたくさんの自衛官の友人が東北に展開していきました。しかもあの時は夫も日本に一時国中。必死に夫、義実家、実家に連絡を取ろうと、つながらないのがわかっていて何度も電話したあの日のことは決して忘れないでしょう。「もうあれから15年かぁ」と思いながらこれを書いている今日(3月12日)は、「四季が一日で来た日」でした。朝起きたときは、どうかすると半そででも大丈夫なお天気だったのに、お昼ご飯を食べるころには雨。そして、書きものに集中していてふっと顔を上げて外をみたら・・・なんと「ゲリラ吹雪」になっているではありませんか!そして、そこからみるみる気温が落ち、今は外の気温は零下スレスレ。明日の明け方に完全に零下まで気温が落ちるそうです。全く、気まぐれなお天気にも限度ってものが・・・・こんなわけで、何を着たらいいのかも迷う天気ですが、日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今週のトランプ政権ですが、ついに米軍とイスラエル軍による対イラン攻撃が2週間目に入り、いよいよ、国内で共和党政権にとってはありがたくない雰囲気が漂い始めました。なんといっても、この2週間で、ガソリンの全米平均価格が20%近く上昇。しかも、イランが実質上ホルムズ海峡を封鎖し、積極的に石油タンカーを狙って攻撃している今の状況がいつ終わるかの見通しも立たない状態では、IEAやG7が石油備蓄を足並みをそろえて放出しようが、「焼け石に水」だという見方が大半。「ホルムズ海峡が再び、石油タンカーが安心して通過できる状態になるまでは、原油価格は落ちない」と断言する経済アナリストも多数。しかも、ガソリン価格は「上がるときは一気に跳ね上がり、価格の下落はパラシュートが下りるようにゆっくり」というのが業界の常識なのだそうで、これでは、たとえ明日「撃ち方やめ」になっても、実際にガソリン価格が落ちてくるのはまだまだ先。そうこうしている間に中間選挙に向けた動きが本格化する時期に入ってしまいます。要は、今の状態って、共和党にとっては実はかなりまずい状態なんです。

だからだと思いますが、先週あたりから、トランプ大統領が突然「イランへの米軍の攻撃はもうすぐ終わる」と口走り始めました。遂に3月11日にケンタッキー州の選挙集会で演説した際には「俺たち、イランに勝った!」宣言。でも、そんな強がりは、支持者しか集まらない選挙集会では喝采を浴びても、テレビをつければ炎上するタンカーや、ついにレバノンに地上軍で攻勢をかけ始めたイスラエル軍の状況を映す映像が目に飛び込んでくる今の状況では、まったく説得力がありません。

さらに国内でも、先週あたりから、マムダニNY市長宅に爆発物が投げつけられる事件が起こるなど、不穏な空気が漂い始めました。今日はバージニア州のオールド・ドミニオン大学構内で銃乱射事件、さらにはミシガン州デトロイト郊外のシナゴーグを狙った銃撃事件が立て続けに発生。しかも、「西海岸をイランが無人機を使って奇襲する計画を立てているらしい」という観測報道まで流れ、一部のメディアでは「9・11テロのような事件の再来はなんとしても防がなくては」モードの報道も流れ始めました。

そんなこんなで、中間選挙に向けた雲行きがかなり怪しい共和党。ここにきて、トランプ支持層の、いわゆる「MAGA」層の中でも「路線対立」がいよいよ表面化してきました。本来、MAGAは「アメリカ第一主義」を唱えたトランプ大統領に共鳴してしまう人たちですから、基本的には内向き志向。特にアメリカが国外で軍事行動に関与することには消極的な人たちです。そんな人たちに「自分が大統領になったら、今やってる戦争は全部終わらせる。新しい戦争なんか始めない」とアピールして選挙戦を展開、大統領の座に返り咲いたトランプ大統領でした。

ところがここにきて、年明け早々のヴェネズエラ、そして先月末からのイラン・・・と、軍事行動オプションの発動が続き、MAGAの人たちには「話が違うだろ!」モードになる人が出てました。かつてはトランプ大統領を強力にバックアップ、バイデン政権時代には一般教書演説の際にバイデン大統領(当時)に野次を飛ばしまくっていたマジョリー・テイラー・グリーン前議員や、MAGA派の人気ポッドキャスターのジョー・ローガンなどが、昨年ぐらいから、国内問題でも公然とトランプ大統領を批判し始めていましたし、議会に目を向ければ、昨年からいつまでも終わらない「エプスタイン・ファイル」疑惑で、司法省突き上げの筆頭に立っているのは民主党員ではなく、ケンタッキー州4区が選挙区のバリバリ共和党保守派のトーマス・マッシー下院議員。

特に、議会で「エプスタイン・ファイル」疑惑をめぐりトランプ大統領に正面から盾ついているマッシー議員がよっぽど許せないのか、トランプ大統領は、このマッシー議員の選挙区で、予備選では彼の対立候補を支援すると宣言するに至りました。ですがこの彼の行動はかなりのギャンブル。なぜなら5月19日に予定される予備選で、トランプ大統領が応援する候補が現職のマッシー議員に負ければ、「トランプ神話」に陰りが出て、共和党のほかの議員候補の間に「トランプ大統領に寄りすぎだとまずいんじゃ・・・」という空気が流れ始めるきっかけになってしまうからです。ただ、見方を変えれば、ここまでしなければいけないほど、トランプ大統領がMAGA内の路線対立に困っているということなのでしょう。

そんな中、国土安全保障省のみが対象の連邦政府一時閉鎖も、さりげなく1か月を経過しようとしています。この国土安全保障省の一時閉鎖、以前にもお伝えしたとおり、被害を受けているのは空港の保安検査を担うTSA,航空の安全を担うFAA・・・といった、批判の対象になっているICE「以外」の部局という皮肉すぎる事態。おかげで空港保安検査場には長蛇の列ができ、「フライト出発予定時刻の3~4時間前に空港にきてください」と呼びかける空港も出てきました。しかも、閉鎖の対象になっているのが国土安全保障省だけなので、民主党にも共和党にも、ガンバって妥協しよう、というモチベーションはゼロ。一体いつ、国土安全保障省が「通常営業」になるのかの見通しも立ちません。

そんな中、私、再来週、ポーランド出張なのですが、いったい何時間前に空港に行けばいいか迷っています・・。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員