外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年2月16日(月)

デュポン・サークル便り(2月16日)

[ デュポン・サークル便り ]


毎日、氷点下が続いていたワシントンですが、ついに!少し寒さが緩んできました。そして今日は雨。今週は故リンカーン大統領のお誕生日(2月12日)です。これにちなんで「大統領の日」の休日が2月第3週に設定されている関係で、16日は連邦政府の祭日にあたるため、3連休です。普段なら「連休の中日に雨・・」とがっかりするところですが、また雪が降ることを思えば、雨に文句なんか言えません。しかも、この時期の雨は、塩素が強く、車を錆びつかせることで悪名高い溶雪剤を洗い流してくれるため、まさに「天の恵み」です。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

前回(先々週)の「デュポン・サークル便り」では、老舗大手のワシントン・ポスト紙が突如、全体で人員30%の大量解雇を発表した衝撃をお伝えしました。先週はメディア関連でこれを上回る衝撃度のニュースが!世論調査の「ギャロップ社」といえば、老舗中の老舗、日本でも社名を耳にされた方は多いと思います。2月11日、このギャロップ社がなんと大統領支持率の調査をやめる、という発表をしたのです。1935年に創業したギャロップ社が大統領支持率調査を開始したのは、大恐慌の真っただ中の1938年に、全国に世論調査員を派遣して、大恐慌への政府の対応を国民がどう思っているのかを調査したことがきっかけでした。それ以後88年の長きにわたり続けてきて「大統領の支持率調査=ギャロップ」という圧倒的存在感を確立してきたことで同社は有名です。そのギャロップ社が大統領支持率の追跡調査をやめると発表したことは、ワシントン・ポスト紙による大量解雇以上の衝撃をもって受け止められました。しかも、このニュースを最初に報じたのがワシントン・ポスト紙という皮肉・・・。この決定について同社は、今では複数のメディアが同様の調査を行っていることを挙げていますが、巷では、この数か月、同社による調査で支持率がダダ落ちのトランプ大統領に目を付けられる前に、支持率調査をやめることにしたのでは、という憶測も流れています。いやはや、ギャロップ社による世論調査がない世界というのも、なんとなくイメージができないのですが・・・・

また、こちらも前号で少し触れましたが、予想通り、「プチ連邦政府一時閉鎖」が14日未明に始まりました。民主党が国土安全保障省、特に関税・移民法執行(ICE)体制の改革を強く求めていることが原因でこのような事態になってしまったわけです。でも、なんとも皮肉なことにICE自体は、昨年成立した「一つの大きくて美しい予算法(OBBB)」で2027年度まで予算が確保されており、当面の間、不法移民取り締まりなどの活動には支障が出ないのです。じゃ、このプチ閉鎖で影響受けるのはどこなのよ、ということになりますが、今回のプチ閉鎖で影響を受けるのは、空港警備にあたる交通安全保障局(TSA)、沿岸警備隊など、予算法案成立をめぐりもめている人たちとは全然別の人たちです。このニュースを聞いた瞬間、「これでまたアメリカの空港の保安検査に時間が・・・」と思ってしまう人も、アメリカ内外にたくさんいることでしょう。さらに、今回は、「プチ閉鎖」のため、実害が及ぶ範囲が極めて限定されていることから、おそらく民主党も共和党も、妥協するインセンティブは低いため、一つ間違うとズルズルいってしまうのでは・・と懸念する声もチラホラ。ただ、なんだかんだいって、「プチ閉鎖」とはいえ、これにより、当面タダ働きさせられる職員の数は250万人超いますので、このような職員の方の悲鳴がメディアで報じられるようになるもの時間の問題。中間選挙を控えていることを考えると、なんとか月末までに落としどころを見つけたい、というのが両党の本音でしょう。

加えて、先週は、トランプ政権の法廷闘争での敗北がきく報じられた週でもありました。特に「違法な命令には従わなくていい」と複数の民主党上院議員が米軍兵士に呼びかけるビデオメッセージに登場したことを問題視した戦争省が、退役海軍大佐のマーク・ケリー上院議員の退役軍人としての年金などの待遇を降格処分にしようとしたことが大きな話題になりました。この案件をめぐって法廷は、同議員だけでなく「退役軍人の言論の自由に対する重大な脅威」であるとして、この処分の執行差し止めを命じたため、ケリー上院議員側の言い分はほぼ全面的に認められたことで大きく注目されました。自分たちの気に入らないことはほぼもれなく法廷闘争に持ち込んでいる感すらあるトランプ政権。あまりに案件数が多すぎてAP電などでは「法廷闘争追跡データ」のような特設コーナーまでできています。これも・・・異例です。しかも、「トランプ関税の合憲性」をめぐる最高裁による判断、という超メガトン級爆弾は、いまだに落とされていません。1月から延び延びになっているこの判断の如何によって、トランプ大統領の通商政策が根本から「ちゃぶ台返し」になる可能性すらあるため、最高裁による判断を待つ毎日は、まさにスリルとサスペンス・・・。

こんな中、この週末はミュンヘン安保会議もやってたりするわけなのですが、こちらについては、次号で触れたいと思います。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員