外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年2月9日(月)

デュポン・サークル便り(2月9日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンは2月に入ってからも極寒の日々が続いています。先々週降った雪は全く解ける気配がなく、毎日、少しずつ日中に出てくる太陽で少し解けては、夜になると再凍結・・・を繰り返した結果、コンクリート上のブロックに変身。そしてそんな状態の雪(氷)につけられた新造語は・・・「Snowcrete」。そうです。「雪(snow)」と「コンクリート(concrete)」の掛け合わせ。先週は、さすがに学校は再開したものの、早朝の時間帯は、道路がスケートリンク状態のため、始業2時間遅れを続ける学校がほとんどでした。それにしても、日本の総選挙、すごかったですね。まさか 、自民党単独であんなに議席とるとは・・・結果にもびっくりですが。まさか、トランプ大統領まで投票日数日前に突如、「サナ活」に参加していたのも予想外でした。選挙であれだけの大勝利をひっさげて、来月訪米することになる高市総理を、きっとトランプ大統領は満面の笑みで出迎えるのでしょう。

とはいえ、ワシントンは相変わらず、笑っている場合ではない事態が続きます。個人的に先週、一番ショックだったのは、ワシントン・ポスト紙が突如発表した大量解雇。スポーツニュース面は全廃、海外特派員の数も大幅減など、全体で人員30%の解雇が発表されました。古くはボブ・ウッドワード氏など大物政治記者を擁し、ニクソン政権時代にウォーターゲート事件をすっぱ抜いたことに代表される、調査報道や分析報道が一番の強みだったワシントン・ポスト紙でしたが、近年はオンラインニュースサイトの発達で購読者数が減少。2020年に25万人以上いた購読者が2025年にはウイークデー版購読者数は10万人を切りました。グルメレポートや骨太のコメンタリーが入っているため人気だった日曜日版の購読者数も16万人まで落ちてしまい、経営不振に苦しんでいました。2024年の大統領選挙では、アマゾンのオーナーで同紙の経営権も獲得したジェフ・ベゾス氏がトランプ候補(当時)に忖度したためか、伝統的に同紙の論説室が行ってきた「ワシントン・ポスト紙は〇〇候補を支持します」論説を掲載しないことを決定。これに抗議したそれまでの購読者が一気に同紙の購読を取りやめるなどの問題もありました。

それでも、これまでワシントン・ポスト紙が行ってきた経営見直しでは、同紙所属のジャーナリストは基本、強制解雇はしないという方針が貫かれていました。今回、その基本が崩れたとあって、ワシントンだけでなく、ワシントンをベースに活動するジャーナリスト界に衝撃が走りました。早速、ニュースの翌日にはワシントン・ポスト紙本社前で、支持者による「ポストを守れ!」抗議集会が。さらに、2024年1月からワシントン・ポスト紙の経営最高責任者(CEO)だったウィル・ルイス氏も辞任を表明。アメリカを代表する老舗新聞社をめぐる動きは、数年前から言われていた「伝統的メディアの衰退」を象徴する出来事でした。

個人的にも、30年前にワシントンに来て以来、「毎日、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズ紙は、斜め読みでいいからちゃんと目を通そう」と決めていました。このように、曲がりなりにもこの町で政治や外交を目指す人間にとっては「常識」と言われていたワシントン・ポスト紙は、別格の存在。シンクタンクの人間にとっても、ワシントン・ポスト紙の論説欄に自分のコメンタリーが記載されることは一種の「ステータス」なんです。そんな「ポスト」がこんなになっちゃった・・・という寂しさと悲しみを感じている私のような人間はたくさんいるでしょう。

さらに、先週の後半は、中間選挙をにらんで「選挙不正」を声高に訴え始めたトランプ大統領が、またやってくれました。ホワイトハウスのホームページに掲載された「選挙不正是正」を主張するビデオの最後に、オランウータンの体にオバマ元大統領夫妻の顔をくっつけた画像が含まれていたのです。これは身内の共和党議員からもさすがに抗議の声が殺到。このビデオは速やかに削除されたとはいえ、どんどん身内の共和党議員の選挙活動を苦しくするトランプ大統領。エプスタイン疑惑への対応をめぐる司法省の対応についても、民主・共和両党からの突き上げは相変わらず収まる気配を見せず・・・そして今週末には、国土安全保障省の予算案をめぐる交渉期限がやってきます・・・・・・トランプに振り回される毎日は続きます・・・・


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員