キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2025年12月3日(水)
[ デュポン・サークル便り ]
先週のアメリカは感謝祭休日。連邦政府がなかなか再開しないため、帰省の空の便への影響が懸念されていましたが、政府再開後はあっというまに稼働率が元通りとなり、空の便の運航状況も3日後ぐらいですっかり元通りに。というわけで、いったん、片道13時間半かけて運転する予定だったフロリダ州訪問を、私も空路に戻しました。空港にいる荷物検査などをする人の表情も、「ようやくお給料もらえるようになったぜ~」と、心なしかどこか明るく、ニコニコしているような感じがします。が、油断は禁物、感謝祭を家族と祝うために移動した先から戻ってくる空の便が、アメリカ中西部を襲った大寒波の影響をガチに受け、大変なことに。私は幸い、なんの遅れも経験せず、予定どおりに戻ってくることができました。これも、駐車スペースに始まり、「旅」に強運の息子のおかげ、と感謝しています。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
感謝祭のようなお休みは、めったに合わない友人とゆっくり話したりする時間がとれるのでいつも待ち遠しいのですが、唯一最大のネックは、ニュースについていけなくなること。特に、政権発足後、1日ニュースに触れないとほぼ周回遅れになってしまうトランプ政権。今回も例外ではありません。感謝祭から戻ってきた私を待っていたのは、
(1) ロシア・ウクライナ和平交渉(これを書いている今も、中東和平で登場した「ウィトコフ・クシュナー」コンビが再登場、モスクワで交渉中です)
(2) トランプ政権曰く「ベネズエラの麻薬密輸船」に対する米軍の攻撃が違法だった?疑惑
(3) トランプ・習電話会談
と外交だけでもトリプルパンチ。これに、先週、ホワイトハウス付近で、州兵がアフガン出身の移民により銃撃され、一人は死亡、もう一人も重傷を負うという事件が起きてから、トランプ大統領やノーム国土安全保障長官が
「第3世界出身の移民は受け入れをいったん停止する」
「入国禁止対象国リストを拡大する」
などと発言、不法移民問題、移民規制が強化され、米司法省のジェイムズ・コーミー元特別検察官起訴が「担当検察官の指名に至るまでの経緯がそもそも違法」という「そもそも論」で裁判所に却下される・・・などの内政問題を加えると、感謝祭後のワシントンは文字通り「大炎上」
特に、外交問題の(2)、つまり、トランプ政権側が「ベネズエラの麻薬密輸船」だったと主張する船舶に対する武力攻撃の合法性については、この数週間、イギリスがその合法性に疑義があるとして、カリブ海地域に関する情報をアメリカと共有することを停止した、という報道が流れるなど国際問題化していました。特に、生存者が残っていたのに米軍が再度攻撃したことは、国際法だけではなく、米軍法にも違反するのではないかという疑惑が急浮上。ここにきて米議会が超党派でこの問題について調査に乗り出す意向を示しました。これで再び議会とトランプ政権の間で情報開示をめぐるバトルが激化することは必至です。
年の瀬も近いというのに、まったくお騒がせ度が衰えないトランプ政権です・・・。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員