外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2025年6月16日(月)

デュポン・サークル便り(6月16日)

[ デュポン・サークル便り ]


先週からこの週末にかけてのワシントン近郊のお天気は荒れ模様。夕方から夜にかけて大雨になる日が連日、続いています。芝生に水をやる必要がないのは嬉しいのですが、こう毎日、雨が続くと、せっかく、5月末の「メモリアル・デー」以降、プール開きも終えているのに、なかなか、屋外プールに出かける気分にもなりません。ただ、こんな天気も来週一杯まで、それ以降は、本格的に「3H(hazy, hot, humid)」と言われるワシントンのお天気が到来しそうな予感です。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

本来だったら今回の「デュポンサークル便り」では、6月14日にワシントンで大々的に開催された陸軍発足250周年記念パレードをめぐる騒動について書く予定でした。ところが、先週後半、イスラエルがイラン国内の核開発プログラム関連施設を標的に軍事攻撃を始めたことで、中東情勢が一気に流動化。アメリカ国内のニュースも明けても暮れても中東一色になっています。

実のところイスラエルは、先週よりもはるか前から、イランを攻撃したくてウズウズしている雰囲気がムンムン漂っていました。ですが、トランプ大統領がイラン政府との間で核兵器プログラムをめぐる交渉を開始、イラン側に「60日間の間に、我々と真面目に交渉しろ。さもないと、そのあと何が起こるか保障できないぞ」と宣言したこともあり、水面下では、アメリカ側がイスラエルに「我々が交渉している間は攻撃はダメだ。少なくとも、トランプ大統領が宣言した60日間の間は絶対だめだ」と待ったをかけ続けていた、という見方がこちらでは大勢を占めます。というのも、イスラエルが最初にイランを攻撃したのは、トランプ大統領が前述の宣言をしてからきっちり61日目なのです・・。

とはいえ、現在、世界各国の外交努力の焦点は、イスラエル・イラン間の武力衝突が中東全域に広がるのを防ぐことにあります。そんな中でカナダのカナナスキスで開催されるG7サミット、通常は、首脳声明が会合後に発表されますが、今回、主催国のカナダのカーニー首相は、既に首脳声明をまとめることをあきらめたという報道が出回り始め、G7会合期間中、各国首脳はひたすら2国間首脳会談に精を出すことになるようです。

そんな中、6月14日にワシントンで行われた陸軍発足250周年記念パレード。このパレードの日が、トランプ大統領の79歳のお誕生日と重なっていたため、「トランプは陸軍発足250周年にかこつけて自分の誕生日に陸軍総動員して軍事パレードさせた」と猛烈な批判を浴びています。が。なんだかんだ言って、当日は、水曜日ぐらいから始まった厳重な警戒態勢をものともせず、全米各地から大勢の人がワシントンを訪れ、パレードはもちろん、その日、一日中ナショナル・モール全域で開催されていた陸軍関連のイベントや、戦車などの装備品展示などを楽しんでいました。

その一方で、全米各地では、「(アメリカに)王はいない(No Kings)」というスローガンを掲げた反トランプ集会も開催されました。同時並行で、ロサンゼルスを中心に、移民・税関取り締まり(ICE)当局の人間が不法移民を一斉拘束する強引な手法に抗議する集会も続いており、毎朝、テレビをつけると、物々しい雰囲気の映像ばかりが流れています。

アメリカ内外でこれだけの騒動が連日続いていても、私の住んでいる地域では、これまでと変わらない平穏な日々。それどころか、卵や牛乳の値段は、ジリジリと下がり、いまのところ、ガソリン価格も安定(これは今後の中東情勢によってどうなるかわかりませんが・・・・)。アメリカという国の広さを感じさせるわけですが、それでも、さすがの私も、人込みは避けたり、DC市内に入る回数を抑えたり・・・などするようになってきました。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員