外交・安全保障グループ 公式ブログ

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2024年9月3日(火)

デュポン・サークル便り(9月3日)

[ デュポン・サークル便り ]


9月2日のレーバー・デーのお休みもあけ、夏休みもおしまい。いよいよ、選挙の季節が到来いたしました。日本でも、自民党総裁選まで1か月を切りましたが、皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

8月末、大興奮の内に民主党党大会が終了してから、大統領選は本格的にリセットされた感があります。目下の一大イベントは9月10日に予定されている第1回大統領候補討論会。「トランプVSハリス」初の直接対決となるこのイベントですが、実は、民主党党大会終了直後に、トランプ前大統領が「やっぱり討論会に出るのやめた」と言い出し、一時は開催が危ぶまれていました。

トランプ前大統領が「やっぱりやめた」と言い出した理由は討論会のルール。「バイデンVSトランプ」が構図だった時のルールは、各候補とも、自分の発言時間以外は、マイクが消音される、というもの。これは、2016,2020年両大統領選挙の大統領候補討論会の際に、トランプ前大統領が自分の発言する順番ではないのに不規則発言を連発して、対立候補(言わずもがなですが、2016年はヒラリー・クリントン、2020年はバイデン大統領)の発言を遮りまくり、討論会が学級崩壊すれすれの状態になってしまったという教訓に基づきバイデン陣営が主張したルールで、トランプ陣営も「いやいやながら」同意したルールでした。

ですが、民主党の大統領候補がハリス副大統領に代わった後に、ハリス陣営が討論会のルールに変更を求めたのです。ただ、ハリス陣営が求めた変更とは、「討論会の最中、一切、マイクの消音なし」というもの。これはもともとトランプ陣営側が好んでいたルールだったはずでした。なのに、今回、トランプ陣営は、ハリス陣営がこのルール変更を主張したことを理由に、「討論会に出ない」と言い出したのです。

彼らの言い分は「討論会のルールは民主党側と既に決めたもので、これは候補者が変わってもそのままで行われるべきだから」というもの。とはいえ、もともと自分たちが主張していたルールだったはずなのに、一点して討論会出席取りやめ!と180度方向転換した主張に、「トランプ、やっぱり、民主党候補がハリスに代わってビビってる」と印象を逆に与えてしまいました。結局、いまのトランプ陣営は、「やっぱり予定どおり討論会に出る」という立場。ですが、最後の最後まで、どうなることやら。

そんな中、「アメリカ版勤労感謝の日」ともいえるレーバー・デイの9月2日、両陣営とも激戦州で活発に選挙活動を展開しました。ここで一躍脚光を浴びているのが「現職大統領」という強みを最大限生かし、ハリス陣営の最強の応援演説弁士として蘇った感のあるバイデン大統領。もはや再選活動を通じて誰にもおもねる必要がなくなった彼は、2週間ゆっくり、夏休みを取り、レーバー・デーの集会に登場した時は、元気一杯。既に「ハリス副大統領に当選してもらうために何でもする」と公言している彼は現職大統領だけが持つ集客力とメディアを引き付ける力を最大限にフル活用して、ハリス副大統領を支援するために活動していくものと思われます。

そんな中「インタビューになかなか答えてくれない」とメディアの間でくすぶっていた批判を払しょくするために、ハリス・ウォルツのペアは、8月29日、CNNと独占インタビューを行いました。移民問題や経済問題などで、意外と厳しい質問を続けるデーナ・バッシュ記者の質問にひるむこともなく、安定した語り口で質問に答えていました。こうしたハリス副大統領の姿は、見ていた視聴者にはどう映ったでしょうか。

また、民主党党大会以来、私がひそかに注目しているのはハリス副大統領のファッション。相変わらずパンツスーツしか着ない点は変わりませんが、スーツの色に微妙な変化が起きているのをお気づきの方、いらっしゃるでしょうか。つまり、副大統領として登場する彼女は、常に、ダークスーツのバイデン大統領とのコントラストを出すために、ベージュやラベンダーのような淡い、柔らかい色のパンツスーツを多く着用していました。ところが、大統領候補になってからの彼女が着用するスーツは、濃紺、黒、グレー。つまり「主役は私」というオーラが何も言わなくても漂ってくる色のトーンに変えたのです。

でも、せっかく有色人種で初の女性大統領候補になったんだから、この際、そういう常識も打ち破って、自分が来たい色のスーツ着ればいいのになぁ・・・と思ってしまう私は望みすぎでしょうか。。。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員