外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2024年6月25日(火)

デュポン・サークル便り(6月25日)

[ デュポン・サークル便り ]


先週末のワシントンDC近郊、というかアメリカの東半分は、まさに猛暑。日中気温は100℉(38℃)を突破、湿度も考慮すると最高体感温度は110℉(44℃)を記録したところも。おかげで、近所のプールは大混雑。といっても、プールの水そのものも、生ぬるく、「プールに飛び込んでスッキリ!」にはほど遠い感じでした。確かに、ワシントンの夏は「3H (hazy(モヤモヤ), hot(暑い), humid(蒸す)」という形容がぴったりですが、その状態に突入するのは例年、7月に入ってから。6月中旬にこんな天気になるのは異常です。私の周りにまだチラホラいた「地球温暖化なんて迷信だ!」と主張していた人たちも、さすがに「やっぱり、地球温暖化ってあるのかな・・・」とつぶやき始めたほどの暑さでしたが、週明けの今日は、打って変わってカラリとした暑さ。少し天気も落ち着きそうです。日本の皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

2024年大統領選もいよいよ本番。まだ民主党も共和党も党大会をやっていないというのに、6月27日夜(日本時間28日朝)には第1回目の「(みなし)大統領候補討論会」がCNN主催で開催され、「バイデン対トランプ」ガチンコ対決が夜9時から生放送される予定です。

討論会でひたすら絶叫調で話し続け、討論会で相手に反論の隙を与えない戦法を取ることで有名なトランプ前大統領。2020年大統領選時の「トランプVSバイデン」直接対決では、両候補がお互いに大声で相手の発言を遮って反論しようとすることが続き、「2人の老人男性の口喧嘩」と大して変わらない様相を呈したため、見ていた人に「聴くに堪えない(painful )」という印象を与えてしまいました。

今年の討論会ではこの惨劇(?)を繰り返さないように、CNNとバイデン、トランプ両陣営の間で討論会の規則について念入りな交渉が行われた模様。その結果、

  1. 発言の順番でない候補者のマイクは消音
  2. スタジオ入りするのは両候補と司会2名の計4名のみ(スタジオには観客は入れない)
  3. 冒頭発言はなし。司会者の質問に対して各候補が質問に答える持ち時間は2分、候補者間同士の反論のための持ち時間1分。司会者が時間の延長が必要だと判断した場合は、回答時間が延長される。
  4. 両候補とも、カンペやプレゼン資料などの持ち込みは禁止。討論会の冒頭に、ペンとノートと取るための用紙、ミネラルウォーター1本が両候補にCNN側から提供される。
  5. 今回の討論会は大統領候補者討論会委員会主催ではないため、コマーシャルのための時間が討論会を通じて2度、設けられる。しかし、その間に両候補がスタッフと協議することは禁止。

などなどの規則の下、討論会が行われます。これらの規則のうち、1~2は、過去の討論会の際、制限時間を超えても大声で相手の発言を遮るように話し続けたトランプ前大統領対策、3~5については、トランプ78才、バイデン81才という「後期高齢者マッチ」であることから両候補に対して浮上する「ボケ疑惑」に対応するためのようです。

今回の討論会でトランプ前大統領を圧倒する切れ味鋭いパフォーマンスを見せ、劣勢をなんとしても跳ね返して選挙戦に弾みをつけたいバイデン大統領。6月15日のトランプ前大統領の誕生日に「お誕生日おめでとう、ドナルド。一人の老いぼれからもう一人の老いぼれへ。年齢なんて、ただの数字だよ!」というメッセージをXで送り、ジャブをかましたばかり。先週の金曜日からキャンプ・デービッド入りし、討論会に向けて、週末を通じて入念な準備を行った模様。対するトランプ前大統領も「俺には討論会の準備なんていらないさ」というポーズは取りつつ、バイデン大統領については「討論しがいのある人物(worthy debater)」と評価し、マルコ・ルビオ上院議員やJDバンス上院議員など、副大統領候補として名前が取りざたされている議員や、前政権時のスタッフなどから政策ブリーフィングを受けているという情報も伝わってきています。

とはいえ、最近、SNSの動画サイトを見ていると頻繁に流れてくるバイデン大統領の「あなたの貴重な支援が必要です!」と支援をよびかける動画、よどみない口調ではあるのですが、やっぱり「うちの両親より年だわ・・・」としか思えないんですよね・・・・・


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員