外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2024年6月18日(火)

デュポン・サークル便り(6月18日)

[ デュポン・サークル便り ]


週末には夏の始まりを告げるメモリアル・デーの週末も終わり、アメリカはいよいよ夏本番。今年の夏は、陸路、空路を含め、コロナ前以上の人が旅行にいく予定だそうです。人気歌手テイラー・スウィフトさんのコンサートを「アメリカでみるよりチケット代が安い」という理由でカナダやヨーロッパまで遠征して観に行く人も多いとか。何でも、航空券のチケットやホテル代を入れても、そちらの方が家計に優しいのだとか(あくまでも比較の問題なんでしょうが・・)。すっかりご無沙汰してしまい申し訳ありませんでした。日本の皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

アメリカ内政は、相変わらず「トランプ劇場」が連日続く中、先週はこれにバイデン大統領一家の不祥事も加わり、だんだん訳が分からなくなってきました。トランプ前大統領が愛人に対する口止め料の支払いに関連して不正会計処理をしていた疑いをめぐる刑事裁判で、なんと30を超える全ての罪状で「有罪」の評決を受けただけでも大変な衝撃が走りました。ですがこれに加えて、なんと「バイデン家のお騒がせ長男」ハンター・バイデン氏が、先週は、「違法薬物依存症の治療を受けている最中に、その事実を隠して銃を購入した」という事件で有罪評決に。トランプ前大統領がニューヨークで有罪評決を受けた後、少し世論調査でバイデン大統領が持ち直していましたが、身内の不祥事で「どっちもどっち」の印象となってしまい、大統領は再び厳しい状況に置かれることになってしまいました。

そんな中、先週から今週にかけて、外交ではイタリアでG7サミットが、続いてスイスでゼレンスキー・ウクライナ大統領発案の「平和サミット」が行われましたが、ここで改めて浮き彫りになったのは「グローバル・サウス」の存在感。というのも、前者では経済安全保障分野で中国に対する一段と厳しい姿勢をG7参加各国が足並みをそろえて共同声明で打ち出すなどの成果が得られたわけですが、後者では、平和サミット後の共同声明にインドや南アフリカ、メキシコなど「グローバル・サウス」の国々が「紛争当事者のもう一方であるロシア不在のままの議論には賛同できない」などの理由で共同声明に名前を連ねることを拒否。これらの国のこのような対応にはロシアだけでなく、ロシアの立場に配慮してサミットを欠席した中国との関係を考慮したものと言われていますが、今週はそのような中、プーチン・ロシア大統領が北朝鮮を訪問する予定。世界が9.11連続テロ事件の衝撃に接したブッシュ(子)政権時代、当時のブッシュ大統領がロシア、イラン、北朝鮮の3か国を「悪の枢軸」と呼び話題となりましたが、現在はこれに中国が加わり中国、ロシア、北朝鮮、イランの4か国を「新・悪の枢軸」と呼ぶ人も出てきました。

そんな中、いよいよアメリカ時間の6月27日にはバイデン大統領とトランプ前大統領の第1回討論会が開催されます。既に司会進行を担当するCNN側との間で両陣営は「自分の発言時間ではないときはマイクを消音」「発言の制限時間を超過した場合、司会の判断でマイクを消音」などの細かい規則についての合意ができていると言いますが、さてどうなることやら。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員