外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年12月26日(火)

外交・安保カレンダー( 12月25日-31日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


2023年も遂に本稿が最後となる。先週お約束した通り、今回は「2024年の展望」について書くことにしたい。とは言っても、正直なところ、筆者は「予測もの」を書くのが苦手だ。そもそも未来の予測なんて不可能だし、本当に予測できるなら外交評論などせず、競馬や株価の予想だけで、誰にも迷惑をかけず、優雅に暮らすだろう。

しかも、そんな「全て先が見えてしまう」生活なんて、実はちっとも面白くないのでは?だから、という訳ではないが、未来予測の苦手な筆者は毎年1月に産経新聞コラムで「●●年に起きないこと」を書き、何とか胡麻化している。「2024年に起きないこと」は新年早々書くので、本稿では来年注目すべき事象を列挙するに止めたい。

それでも巷には、どうしても「来年を予測したい」人々がいるようだ。有名どころでは毎年「10大リスク」を出す●●グループがある。日本でも(名前は出さないが)「グローバルリスク」や「地政学リスク」を発表する組織・団体が少なくないのだが、どれも内容は似たり寄ったり。正直なところ、失礼ながら、真剣に読む気にはあまりならない。

当然だろう。10個も予測できるなら、米国、中国、中東、ロシア、北朝鮮、欧州、世界経済、エネルギー、サイバー、ハイテク(特にAI)について書けば、まず「外れ」はない。しかも、日本語による予測の一部には今も「中東」に触れないものすらある。日本人による国際情勢分析や未来予測は贔屓目に見ても「玉石混交」のようである。

筆者はリスクを恐れない。予測の視点は4つで十分、すなわち、欧州、中東、インド太平洋、米国内政だ。リスクヘッジのため予測を10個も書く必要はない。4分野で流れが見えれば2024年も見えてくる。筆者が注目するのは、ウクライナ戦争の停戦、イランの核兵器開発、中国社会の不満爆発のタイミングと米大統領選の結果だ。

2024年は再び「為政者による判断ミス」の年になるのではないか。最近の「判断ミスのカスケード」はDトランプの米軍アフガニスタン撤退という過ちに始まる。これを「米国の中東離れ」と誤解した中東の各指導者は右往左往し、プーチンは「ウクライナを取る」絶好の機会と見誤った。追い詰められたイランも似たような過ちを犯す。

2024年最大のゲームチェンジャーは米大統領選だろう。トランプが勝てば(勝っても驚かない)米内政は大混乱となり、外交面では判断ミスが再開されるだろう。最悪の場合、ウクライナは見捨てられ、パレスチナはイスラエルの思い通りとなるが、中国だけは判断ミスをせず、静かに二期目のトランプ政権の自滅を待つのではないか。

結果はロシアとイランという地域現状変更勢力が中国への依存を深め、国内の政敵排除を優先する二期目の米大統領の下で、米中関係は様々な判断ミスを繰り返しながら、対立を続けるだろう。その時までに日本が内政上の混乱を収束できなければ、過去10年間に積み上げてきた日本の安全保障アセットは風化し始めるだろう。

前回筆者は「近年世界では『勢いと偶然と判断ミス』の時代が従来の『安定と計画と熟慮』の時代に代わりつつある」が、ウクライナ戦争とガザ紛争は「欧州と中東で現状維持勢力が現状変更勢力の『抑止』に失敗したことを象徴する事件」であり、世界は「新たな不安定期に入りつつある」などと書いた。やれやれ、これがまた続くのか。

より詳しい2024年の展望については、来年最初のCIGS外交安保TVで峯村主任研究員と語り尽くしているので、こちらをご覧頂きたい。

今週も時間の関係でコメントはこのくらいにさせて頂こう。一年間のご愛読に心から感謝申し上げる。

2023年 重要日程レポート52【12月25日版】

12月
<12月25日‐12月31日>
26日 ウクライナ第3四半期雇用統計発表
26日 11月の労働力調査(総務省)
26日 11月の有効求人倍率(厚労省)
26日 サウジアラビア10月貿易統計発表
28日 メキシコ11月雇用統計発表
28日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
29日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
29日 韓国12月および年間CPI発表
29日 トルコ11月貿易統計発表
29日 ウクライナ1990~2022年GDP発表
29日 ウクライナ1~11月鉱工業生産指数発表
29日 東証大納会
29日‐1月31日 サイバーテック・グローバル・テルアビブ(テルアビブ)
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP発表(速報値)
31日 12月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)(国家統計局)
12月中 中央経済工作会議(北京)
12月中 WTO2023年第3四半期財貿易統計発表
12月頃 ラジャスタン州議会選挙(インド)
12月頃 テランガナ州議会選挙(インド)
12月中 第21回東アジアフォーラム(インドネシア)
12月中 日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議(日本)

2024年 1月

1日 ベルギー、EU理事会議長国に就任
1日 ロシアで超過利潤税が導入
1日 ロシアがCISの議長国に
1日 イスラエル中銀金融委員会会合
1日 ユーラシア経済連合技術規則「アルコール製品の安全性」が発効
3日 ドイツ11月労働市場統計発表
4日 香港2023年11月小売統計発表
5日 台湾2023年12月CPI発表
5日 米国12月雇用統計発表
5日 ブラジル2023年11月鉱工業生産指数発表
5日‐12月13日 軍事幕僚委員会、2024年の会合(以後2週間に1回)(ニューヨーク)
8日 メキシコ2023年12月自動車生産・販売・輸出統計発表
9日 メキシコ2023年12月CPI発表
9日 台湾2023年12月貿易統計発表
9日 米国11月貿易統計発表
10日 インド9月鉱工業生産指数発表
10日‐1月12日 Vibrant Gujarat Global Summit州投資サミット(インド)
10日 UNDP/UNFPA/UNOPS理事会、事務局選出 (ニューヨーク)
10日 UN-Women、理事会、事務局選出(1回開催)(ニューヨーク)
10日 ユニセフ、理事会、事務局選出(1回開催)(ニューヨーク)
10日‐1月11日 フューチャー・ミネラルズ・フォーラム2024(サウジアラビア・リヤド)
11日 メキシコ2023年11月鉱工業生産指数発表
11日 ブラジル2023年12月IPCA発表
11日 米国12月CPI発表
12日 フランス12月CPI発表
13日 インド10月CPI統計発表
13日 台湾総統選挙
15日 イスラエル12月CPI発表
15日‐1月19日 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)(スイス・ダボス)
15日‐1月19日 人権理事会 女性と女児に対する差別に関する作業部会、第39回会合(ジュネーブ)
15日‐2月2日 子どもの権利委員会 第95回会合(ジュネーブ)
16日 ドイツ12月CPI発表
16日 英国労働市場統計(9~11月)発表
17日 ブラジル2023年11月月間小売り調査発表
17日 英国12月CPI発表
17日 米国11月小売売上高統計発表
18日 香港2023年10~12月雇用統計発表
19日 メキシコ2023年11月小売・卸売販売指数発表
22日 香港2023年12月CPI発表
22日 台湾2023年12月雇用統計発表
22日 台湾2023年12月投資統計発表
22日‐1月26日 第4回小島嶼開発途上国国際会議準備委員会、第1回会合(ニューヨーク)
22日‐1月26日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家の紛争解決改革)、第47回会合(ウイーン)
22日‐1月26日 国連貿易開発会議(UNCTAD)、プログラム計画及びプログラム実績に関する作業部会、第87回会合(ジュネーブ)
22日‐1月28日 軍縮会議・第一部(ジュネーブ)
22日‐1月31日 非政府組織委員会、定例会合(ニューヨーク)
22日‐2月2日 人権理事会、普遍的定期的審査作業部会、第45回会合(ジュネーブ)
22日‐3月8日 第60回大陸棚限界委員会(ニューヨーク)
25日 メキシコ2023年12月雇用統計発表
25日 米国2023年第4四半期GDP発表(速報値)
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会、金融政策(フランクフルト)
26日 国連環境計画(UNEP)常設代表委員会第165回会合(ナイロビ)
26日 メキシコ2023年12月貿易統計発表
29日‐2月2日 常任理事会、第1回定例会(ニューヨーク)
29日‐2月2日 UNDP/UNFPA/UNOPS理事会、第1回定例会合(ニューヨーク)
29日‐2月9日 情報通信技術の犯罪目的使用への対処に関する包括的国際条約策定特別委員会、最終会合(ニューヨーク)
29日‐2月9日 拷問禁止委員会、拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会、第50回会合(ジュネーブ)
30日 インド2023年度第2四半期GDP発表
30日 フランス第4四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日‐1月31日 米国FOMC
31日 ブラジル2023年12月全国家計サンプル調査発表
31日 香港2023年第4四半期経済状況発表、2023年通年GDP成長率発表(速報値)
1月中 OECD2023年第3四半期海外直接投資(FDI)統計発表
1月中 WTO2023年第3四半期サービス貿易統計発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問