キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2023年12月5日(火)
[ 2023年外交・安保カレンダー ]
今週はまずUAEで開かれている国連気候変動会議COP28を取り上げる。2日には首脳級会合が終わり、「2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を3倍に引き上げること」を110か国以上が「誓約する」ことになったそうだ。ふーーん、でも再生可能エネルギーだって化石燃料を利用せざるを得ないのでは・・・?
それにしても、気候変動の問題を話す国際会議を、二酸化炭素を大量に出す化石燃料を多く産出するUAEで開くこと自体、実に皮肉な話である。利益相反ではないのかね。「温暖化」対策で会議を開催するのは良いが、UAEは「国際政治の中で生き残る」ため必死に頑張っているという印象を持った。ちょっと意地悪すぎるだろうか。
それはともかく、環境問題というと外務省入省直後を思い出す。当時、OECDを担当する課に配属され、OECD環境委員会の担当官になったからだ。以前から環境委員会は野心的な政策提言を盛り込んだペーパーを大量に作成していた。担当官は当時の通産省と環境庁とともに日本政府の対処方針をまとめる必要があったのだ。
入省一年生の研修生には結構酷な仕事だったが、今でも思い出すのは当時の通産省と環境庁の「鍔迫り合い」というか「喧嘩」だった。通産省は環境よりも経済成長を重視し、環境庁の意見なんて歯牙にも掛けなかった。今から思えば、信じられないような「縄張り争い」が毎日繰り広げられていたのである。
それが今はどうだ。経産省産業技術環境局の資料によれば、当時の西村環境大臣が「COP27」の閣僚級セッションで、今後10年間で150兆円超のGX投資の実現、脱炭素につながる新しい国民運動の開始、「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現という「3つの取り組みを発信しました」とある。時代は変わったものだ。
時代といえば、最近面白い記事を読んだ。11月末、インドと中国が両国の「国境問題協議調整ワーキングメカニズム(WMCC)」の第28回会合を開いたそうだ。印中間ではラダックなどをめぐり近年国境紛争が起きており、今回は印中間の一種の「信頼醸成措置」の一環として会合が開かれたようである。
インド側もこれから冬を迎え、印中国境にどの程度の部隊を配置するかを考えなければならないらしい。しかし、そうなると、インド側の財政的負担もかなり大きいということか?中国は境界の中国側で基礎インフラを急速に整備しているので、インド側も同様の公共投資が必要になるそうだ。今後も印中関係もしっかり見ていかないと・・・。
最後は、いつものパレスチナ情勢だ。筆者の見る現時点での状況は次の通り。
今週も時間の関係でコメントはこのくらいにさせて頂こう。
2023年 重要日程レポート49【12月4日版】
<今週以前から続く会議>
10月2日‐12月11日 総会、第5委員会、第78回会合(ニューヨーク)
11月7日‐12月22日 UNIDO、第20回総会(パリ)
11月20日‐12月8日 人種差別撤廃委員会第、111回会合(ジュネーブ)
30日‐12日12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
30日‐12月12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
12月
<12月4日‐12月10日>
4日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(ブリュッセル)
4日 トルコ11月CPI発表
4日 ジャパン・グリーン・イノベーション・カンファレンス(アラブ首長国連邦・ドバイ)
4日 トランプ前米大統領、記録改ざんを巡る対面審理(ニューヨーク)
4日‐12月5日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
4日‐12月8日 FAO評議会、第174回会合(ローマ)
4日‐12月8日 国連先住民族志願基金、信託理事会、第37回セッション(ジュネーブ)
4日‐12月14日 国際刑事裁判所ローマ規程締約国会議、第22回会合(ニューヨーク)
5日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ブリュッセル)
5日 国連難民高等弁務官事業への自発的な貢献の宣言のための総会臨時委員会、誓約会議(ジュネーブ)
5日 ブラジル第3四半期GDP発表
5日 台湾11月CPI発表
5日 韓国11月CPI発表
5日 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済法案が衆院通過(見通し)
6日 メキシコ11月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日 米国10月貿易統計発表
6日‐12月7日 ASEAN+3金融および中央銀行議員会議(日本)
7日 セミ・イスラエル・エキスポ2023(イスラエル、エアポート・シティ)
7日‐12月8日 EU中国首脳会談(北京)
7日 中国11月貿易統計発表
7日 イスラエルとハマスの軍事衝突から2カ月
7日 サウジアラビア2023年第3四半期GDP統計発表
7日 ユーロスタット、第3四半期実質GDP成長率発表
7日 EU競争力担当相理事会(域内市場・産業)(ブリュッセル)
7日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
7日 IMO(国際海事機関)、評議会、第131回会合(ロンドン)
7日 UNEP(国際連合環境計画)、常設代表委員会、第164回会議(ナイロビ)
7日 メキシコ11月CPI発表
8日 犯罪防止と刑事司法委員会、再招集第32回会合(ウイーン)
8日 米国11月雇用統計発表
8日 ドイツ11月CPI発表
8日 衆参予算委員会で集中審議(見通し)
8日 EU競争力担当相理事会(調査・宇宙)(ブリュッセル)
8日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
8日 10月の毎月勤労統計調査速報(厚労省)
8日‐12月9日 「核兵器のない世界」に向けた国際賢人会議(長崎)
9日 中国11月CPI発表
9日 ロシア11月CPI発表
10日 アルゼンチン大統領就任
<12月11日‐12月17日>
11日 EU外相理事会(ブリュッセル)
11日 トルコ10月国際収支統計発
11日‐12月12日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
11日‐12月14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
11日‐12月15日 国連腐敗防止に関する国際条約締約国会議、第10回会合(確定待ち)(アトランタ・米国)
11日‐12月15日 情報通信技術の使用における安全性に関するオープンエンド作業部会2021-2025、第6回会議(ニューヨーク)
11日‐12月15日 UNCITRAL(国際連合国際貿易法委員会)、第V作業部会(破産法)、第63回会合(ウイーン)
12日 英国労働市場統計(8~10月)発表
12日 ウクライナ11月CPI発表
12日 インド10月鉱工業生産指数発表
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 ブラジル11月IPCA発表
12日 インド11月CPI統計発表
12日 米国11月CPI発表
12日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
12日‐12月13日 米国FOMC
12日‐12月13日 ブラジル中央銀行、Copom
12日‐12月14日 Food Africa(カイロ)
12日‐12月14日 IFAD(国際農業開発基金)、執行理事会、第140回会議(ローマ)
13日 イスラエル11月貿易統計発表
13日 スイス連邦参事会選挙
13日 南アフリカ11月CPI発表
14日 ロシア第3四半期経済活動別GDP発表(速報値)
14日 米国11月小売売上高統計発表
14日 ブラジル10月月間小売り調査発表
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
15日 イスラエル11月CPI発表
15日 中国11月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
15日 フランス11月CPI発表
15日 トルコ11月中央政府予算
15日 イスラエル12月CPI発表
15日 ロシア中央銀行理事会
17日 イスラエル2023年第3四半期GDP2次推計発表
17日 チリ新憲法承認の是非を問う国民投票
<12月18日‐12月24日>
18日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
19日 ユーロスタット、11月CPI発表
19日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
20日 コンゴ民主共和国大統領選挙
20日 英国11月CPI発表
20日 ウクライナ1~10月貿易統計発表
21日 米国2023年第3四半期GDP発表(確定値)
21日 トルコ中銀金融政策会議
21日 香港11月CPI発表
22日 メキシコ11月貿易統計発表
23日 2023年会計年度国防授権法(NDAA)に基づき設立された中国の経済的威圧対策タスクフォースによる報告書の議会提出期限
<12月25日‐12月31日>
26日 ウクライナ第3四半期雇用統計発表
26日 サウジアラビア10月貿易統計発表
28日 メキシコ11月雇用統計発表
28日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
29日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
29日 韓国12月および年間CPI発表
29日 トルコ11月貿易統計発表
29日 ウクライナ1990~2022年GDP発表
29日 ウクライナ1~11月鉱工業生産指数発表
29日‐1月31日 サイバーテック・グローバル・テルアビブ(テルアビブ)
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP発表(速報値)
12月中 中央経済工作会議(北京)
12月中 WTO2023年第3四半期財貿易統計発表
12月頃 ラジャスタン州議会選挙(インド)
12月頃 テランガナ州議会選挙(インド)
12月中 第21回東アジアフォーラム(インドネシア)
12月中 日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議(日本)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問