外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年11月28日(火)

外交・安保カレンダー( 11月27日-12月3日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


この外交安保カレンダー・コラムも本稿で年初来48本目となった。2023年もあと一カ月ほど、ということか。今週は、予想通り、ガザでの「戦闘一時停止」が2日延長されたり、中国での新たな呼吸器疾患が大流行にはならなかったり、あまり大きなニュースは見当たらない。されば、今回は先週書けなかったタイの印象を書くことにする。

久し振りで降り立ったバンコク国際空港は巨大かつ新しかった。1979年、外務省の国内研修を終え、在外研修のためエジプトに向かった際の経由地がバンコクだった。ここに来るたびに、79年当時これから向かうカイロの手前でワクワク感と不安が錯綜する奇妙な瞬間、あの在外アラビア語研修時代の始まりのことを思い出す。

さて、話を現在に戻そう。バンコク到着は朝6時だったが、幸い迎えの車にはすぐ乗れた。思わず「これは昔と違ってスムーズだな」と思ったのだが、市内に近付くと、やっぱりね、あの「悪名高き」交通渋滞は今も健在だった。

しかも、この渋滞、過去数十年間殆ど改善がないのだが、今回その理由がようやく分かった。中国だったら一週間でできる新規道路建設が、この国では「地主が土地を売らない」ために永久に不可能らしいのである。その地主たちって、一体誰なのかねぇ・・・・。もう、これ以上は言わないが・・・。

それはともかく、幸い筆者滞在時のバンコク市内の道路は比較的流れていたので、移動は楽だった。有難いことに、関係者のご支援を頂き、タイのメディアや知識人ともインタビューや意見交換を行うことができた。特に新鮮だったのはタイの若い世代の知識人たちである。

今回意見交換できた人々の数は限られていたが、シニアな知識層ほど、タイ外交をASEANなど東南アジアの視点から論ずる傾向があるのかと思った。これに対し、必ずしも多数派ではないが、若手の知識人ほどタイ外交をよりグローバルな視点から見つめ、中国に対しても「全方位外交」とは異なるアプローチを志向しているようだ。

特に、パレスチナにおいて十数人のタイ人人質が解放された事件は暗示的である。それにも拘らず、タイでは今年5月の総選挙を経てタクシン元首相派のタイ貢献党中心の新政権が発足したばかり。All politics is localという格言の通り、今のタイ外交にそんな余裕はないように感じられた。

続いては、いつものパレスチナ情勢だ。筆者の見る現時点での状況は次の通り。

  • 一部ながら人質が解放されつつあることは喜ばしいが、これで問題が解決する訳ではない。人質解放が続き、「戦闘の一時停止」が実質的な「停戦」になれば、厳しい言い方だが、結果はハマスの勝利、イスラエルの敗北となるだろう。イスラエルにとっては戦闘を休止するか、停戦するか、休戦するかの判断が極めて難しくなる。
  • ちなみに、これらの概念には若干の混乱が見られる。英語報道では現在の状況はtemporary truceであるが、日本の一部のメディアはこれを「一時休戦」と訳していた。さて、これは一体何が問題なのか。
  • 英英辞書を引くと、truce, noun:は a short interruption in a war or argument, or an agreement to stop fighting or arguing for a period of time:とある。すなわち、truceとは第一義的に交戦国の思惑が一致する「戦争状態の短期間の中断」であって、「一時休戦」では必ずしもないのである。何故そんな細かいことを言うのか?
  • 通常「休戦」はarmisticeの訳語であり、「停戦」の長期化・正式化を意味する概念だ。英英辞書でもarmistice, noun: はa formal agreement between two countries or groups at war to stop fighting for a particular time, especially to talk about possible peace:とあり、第一義的には「交戦国が和平を議論するために戦闘を停止する公式の合意」を意味する。こう考えてくると、「一時休戦」なる訳は一種の形容矛盾に近いのかもれない。
  • 一方、「停戦」とはceasefire, noun: an agreement, usually between two armies, to stop fighting in order to allow discussions about peace:すなわち、「交戦国が和平を議論するために戦闘を停止する(必ずしも公式ではない)合意」であり、armisticeほど正式な合意ではない(逆に言えば、停戦の方が破れやすい)ようだ。
  • そうであれば、現在起きていることは停戦でも、休戦でも、一時停戦・一時休戦でもない、実に中途半端なものである。イスラエルの戦争目的は今もハマス殲滅であり、「休戦」はもちろん「停戦」にすら合意する気などないからだ。
  • 先週も書いた通り、イスラエルは今後徹底した「掃討作戦」が一層難しくなるだろうし、それはこのtemporary truceが長続きするほど難しくなるに違いない。まあ、これもすべてはハマスの「思う壺」だ。こんなこと戦闘が始まる前から分かっていたことではあるのだが・・・。

今週も時間の関係でコメントはこのくらいにさせて頂こう。


2023年 重要日程レポート481127日版】

<今週以前から続く会議>
10月2日‐12月11日 総会、第5委員会、第78回会合(ニューヨーク)
11月7日‐12月22日 UNIDO、第20回総会(パリ)
11月20日‐12月1日 宇宙における軍拡競争の防止に関する政府専門家グループ、第1回会合(ジュネーブ)
11月20日‐12月8日 人種差別撤廃委員会第、111回会合(ジュネーブ)


11月
<11月27日‐12月3日>
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日 日ベトナム首脳会談(都内)
27日 経団連北陸地方経済懇談会(金沢市)
27日 北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げに関する国連安保理の緊急会合(ニューヨーク)
27日‐11月28日  EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(雇用社会政策)(ブリュッセル)
27日‐11月29日 人権理事会「企業と人権に関するフォーラム」第12回会合(ジュネーブ)
27日‐12月1日 UNCITRAL、第6作業部会(交渉可能な複合一貫輸送書類)、第40回会合(ウイーン)
27日‐12月1日  核兵器禁止条約第2回締約国会議(ニューヨーク)
27日‐12月1日 第20回UNIDO総会(ウイーン)
27日‐12月1日 化学兵器の開発、生産、蓄積、使用の禁止に関する条約締約国会議、第28回会合(デン・ハーグ)
29日 パレスチナ人民の不可侵権行使委員会、国際連帯デーを記念した特別会合(ニューヨーク)
29日 米国2023年第3四半期GDP発表(改定値)
29日 トルコ10月貿易統計発表
29日 ロシア1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ドイツ10月労働市場統計発表
30日 メキシコ10月雇用統計発表
30日 トルコ2023年第3四半期GDP統計発表
30日 ウクライナ1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
30日  EU一般問題理事会(ブリュッセル)
30日 「石油輸出国機構(OPEC)プラス」閣僚級会合、合同閣僚監視委員会(JMMC)(オンライン)
30日‐12月1日 人権理事会、少数者の問題フォーラム、第16回会合(ジュネーブ)
30日‐12日12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
30日‐12月12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
11月中 ASEAN共同体のポスト2025年ビジョンに関するハイレベルタスクフォース(HLTF-ACV)第10回会合
11月中 欧州委員会秋季経済予測発表


12月
1日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
1日 7~9月期の法人企業統計(財務省)
2日 国際ビジネスと貿易に関する国際会議(ICIBT)(東京)
4日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(ブリュッセル)
4日 トルコ11月CPI発表
4日‐12月5日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
4日‐12月8日 FAO評議会、第174回会合(ローマ)
4日‐12月8日 国連先住民族志願基金、信託理事会、第37回セッション(ジュネーブ)
4日‐12月14日 国際刑事裁判所ローマ規程締約国会議、第22回会合(ニューヨーク)
5日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ブリュッセル)
5日 国連難民高等弁務官事業への自発的な貢献の宣言のための総会臨時委員会、誓約会議(ジュネーブ)
5日 ブラジル第3四半期GDP発表
5日 台湾11月CPI発表
5日 韓国11月CPI発表
6日 メキシコ11月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日 米国10月貿易統計発表
6日‐12月7日 ASEAN+3金融および中央銀行議員会議(日本)
7日 中国11月貿易統計発表
7日 サウジアラビア2023年第3四半期GDP統計発表
7日 ユーロスタット、第3四半期実質GDP成長率発表
7日 EU競争力担当相理事会(域内市場・産業)(ブリュッセル)
7日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
7日 IMO(国際海事機関)、評議会、第131回会合(ロンドン)
7日 UNEP(国際連合環境計画)、常設代表委員会、第164回会議(ナイロビ)
7日 メキシコ11月CPI発表
8日 犯罪防止と刑事司法委員会、再招集第32回会合(ウイーン)
8日 米国11月雇用統計発表
8日 ドイツ11月CPI発表
8日 EU競争力担当相理事会(調査・宇宙)(ブリュッセル)
8日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
8日 10月の毎月勤労統計調査速報(厚労省)
9日 中国11月CPI発表
9日 ロシア11月CPI発表
10日 アルゼンチン大統領就任
11日 EU外相理事会(ブリュッセル)
11日 トルコ10月国際収支統計発
11日‐12月12日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
11日‐12月14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
11日‐12月15日 国連腐敗防止に関する国際条約締約国会議、第10回会合(確定待ち)(アトランタ・米国)
11日‐12月15日 情報通信技術の使用における安全性に関するオープンエンド作業部会2021-2025、第6回会議(ニューヨーク)
11日‐12月15日 UNCITRAL(国際連合国際貿易法委員会)、第V作業部会(破産法)、第63回会合(ウイーン)
12日 英国労働市場統計(8~10月)発表
12日 ウクライナ11月CPI発表
12日 インド10月鉱工業生産指数発表
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 ブラジル11月IPCA発表
12日 インド11月CPI統計発表
12日 米国11月CPI発表
12日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
12日‐12月13日 米国FOMC
12日‐12月13日 ブラジル中央銀行、Copom
12日‐12月14日 Food Africa(カイロ)
12日‐12月14日 IFAD(国際農業開発基金)、執行理事会、第140回会議(ローマ)
13日 スイス連邦参事会選挙
13日 南アフリカ11月CPI発表
14日 ロシア第3四半期経済活動別GDP発表(速報値)
14日 米国11月小売売上高統計発表
14日 ブラジル10月月間小売り調査発表
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト)
15日 中国11月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
15日 フランス11月CPI発表
15日 トルコ11月中央政府予算
15日 イスラエル12月CPI発表
15日 ロシア中央銀行理事会
17日 チリ新憲法承認の是非を問う国民投票
18日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
19日 ユーロスタット、11月CPI発表
19日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
20日 コンゴ民主共和国大統領選挙
20日 英国11月CPI発表
20日 ウクライナ1~10月貿易統計発表
21日 米国2023年第3四半期GDP発表(確定値)
21日 トルコ中銀金融政策会議
21日 香港11月CPI発表
22日 メキシコ11月貿易統計発表
23日 2023年会計年度国防授権法(NDAA)に基づき設立された中国の経済的威圧対策タスクフォースによる報告書の議会提出期限
26日 ウクライナ第3四半期雇用統計発表
26日 サウジアラビア10月貿易統計発表
28日 メキシコ11月雇用統計発表
28日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
29日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
29日 韓国12月および年間CPI発表
29日 トルコ11月貿易統計発表
29日 ウクライナ1990~2022年GDP発表
29日 ウクライナ1~11月鉱工業生産指数発表
29日‐1月31日 サイバーテック・グローバル・テルアビブ(テルアビブ)
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP発表(速報値)
12月中 中央経済工作会議(北京)
12月中 WTO2023年第3四半期財貿易統計発表
12月頃 ラジャスタン州議会選挙(インド)
12月頃 テランガナ州議会選挙(インド)
12月中 第21回東アジアフォーラム(インドネシア)
12月中 日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議(日本)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所研究主幹