外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年10月31日(火)

外交・安保カレンダー (10月30-11月5日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


早いものでこの原稿は年初から数えて44回目となる。2023年もあと二か月しかないのかという思いと、今後二か月で更に何が起こるのかという不安が交錯する。先週も書いたが、世界の関心がガザ、ガザ、ガザならば、ウクライナや南シナ海への関心は薄れてしまう。結局マスコミ紙面はゼロサムゲームなのだ。やはり欧州と中東とインド太平洋を一つの戦域として考える必要があることを改めて痛感する。

それでも、今週もまずはパレスチナ情勢から。筆者の見る現時点での状況は次の通りである。

  • イスラエルは「空爆」中心の第一段階から、地上戦の「漸進的拡大」という第二段階に入ったようだ。予想された全面地上侵攻を避けた理由はいくつか考えられる。
  • 戦術的には、戦力を小出しに投入すればイスラエル軍の死傷者も少なく、圧倒的な航空優勢を維持できるので、イスラエル火力の優位を最大限発揮できるからだ。
  • 対外的にも、人質解放と人道支援供給に関心が移ってきた欧米諸国の理解を得やすいと考えたのだろう。勿論「漸進的」といっても、圧倒的な火力なのだが・・・。
  • 限定的侵攻にはレバノンのヒズボラやイランの介入を牽制する戦略的狙いがあるのだろうが、これに対するハマス側反撃も不思議なほど限定的らしい。ハマスは反撃できないのか、それとも敢えて反撃しないのか?正直良く分からない。
  • 第二段階の特徴としてイスラエル特殊部隊投入を挙げる向きもある。だが、筆者が調べた限り、2013年夏の地上戦でも特殊部隊は空爆と同時またはその後並行的に投入されていた。特殊部隊の活動が公に報じられる頃には、その仕事の大半は終わっているか、失敗しているかのどちらかではないか。
  • ハマス側もそろそろ人質が「切り札」から「負担」になり始める頃だろう。イスラエルの圧力が強まれば戦闘員も移動退避が必要だが、そこで200人以上の人質を連れて動くのは容易ではない。人質が死亡でもすれば国際的非難を浴びる。ハマス側も、イスラエルと同様、「進むも地獄、留まるも地獄」になっている筈だ。

ガザ市内での地上作戦は、小規模侵攻からの漸進的拡大とはいっても、考えただけでぞっとする。だが、こうした中で全く影すら見えないのが西岸のラマッラにあるパレスチナ自治政府、特にアッバス議長だ。自治政府が最後に実施した選挙は2006年、これではパレスチナ人は「自己統治能力」を欠いていると言われても反論できないだろう。この点については今週の産経新聞WorldWatchに書いたので、ご一読願いたい。

さて、続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

10月31日 火曜日 EU大統領、モンテネグロとセルビアを訪問

【彼女はその後。ボスニア・ヘルツェゴビナも訪問する。世界の関心がガザに集中する中、バルカン半島でも不穏な動きが生じないと良いのだが・・・。】

日銀、政策金利を発表

ドイツ首相、ナイジェリアとガーナ訪問を終える

米副大統領、英国訪問(11月2日まで)

11月1日 水曜日 仏大統領、カザフスタンとウズベキスタン訪問(2日まで)

【マクロンも忙しい男だが、中央アジアにもちゃんと目を光らせているのであれば、それなりに頑張っているではないか。】

EU大統領、ボスニア・ヘルツェゴビナ訪問

【前述の通り】

米国務長官、サウジ国防相と会談

【過去一か月間、ブリンケンは大忙しだが、この動きを見ていると、米国が今回のイスラエル地上侵攻が地域紛争に拡大する可能性を如何に深刻に考えているかが良く分かる。】

中国、国連安保理議長国(11月一カ月)

【11月中に安保理で進展が期待できないことだけは確実である。】

ブラジル中銀、政策金利決定

11月2日 木曜日 国連事務総長、英首相と会談

G-7と主要国の外相、ウクライナのエネルギー危機問題でテレビ会談

11月3日 金曜日 米通商代表、南アフリカ大統領と会談

11月4日 土曜日 豪首相、訪中(7日まで)

【豪外交の真価が問われる訪問となるので、要注目だ。】

11月5日 日曜日 モルドバで地方選挙

11月6日 月曜日 クック諸島、Pacific Islands Forumを主催

2023年 重要日程レポート44【10月30日版】

<今週以前から続く会議>
9月18日‐11月17日 ICAO(国際民間航空機関)第224回航空委員会(モントリオール)
10月2日‐11月17日 総会、第6委員会、第78回会合(ニューヨーク)
10月2日‐12月11日 総会、第5委員会、第78回会合(ニューヨーク)
10月4日‐11月21日 大陸棚限界委員会、第59回会合(ニューヨーク)
10月9日‐11月3日 人権委員会第、139回会合(ジュネーブ)
10月9日‐11月3日 人権委員会第139回会合(ジュネーブ)
10月29日‐10月31日  中国主催の安全保障国際会合「北京香山フォーラム」(北京)


10月
<10月30日‐11月5日>
30日 衆院議員の任期満了まで残り2年
30日 10月の月例経済報告(関係閣僚会議終了後、内閣府)
30日‐10月31日 EU競争力担当相理事会・非公式会合(観光)(パルマ)
30日‐11月1日  日銀金融政策決定会合(日銀、31日まで)
30日‐11月1日 人権理事会、開発への権利に関する専門家メカニズム、第8回会合(ジュネーブ)
30日‐11月9日 ILO、運営組織とその委員会、第349回会合(ジュネーブ)
30日‐11月17日 ICAO、第230回理事会(モントリオール)
31日 9月の労働力調査(総務省)
31日 9月の有効求人倍率(厚労省)
31日 ブラジル9月全国家計サンプル調査発表
31日 フランス第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
31日 ドイツ第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
31日 国連環境計画(UNEP)常設代表委員会第163回会合(ナイロビ)
31日 UNEP常設代表委員会第162回会合再開(ナイロビ)
31日 10月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)(EU統計局)
31日 10月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)(国家統計局)
31日‐11月1日 ブラジル中央銀行、Copom
31日‐11月1日 米国FOMC
31日‐11月17日 第138回国際麻薬統制理事会(ウイーン)


11月
1日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
1日 ウクライナ1~9月鉱工業生産指数発表
1日 石油製品価格調査(経産省)
2日 ドイツ9月労働市場統計発表
2日 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の7~9月期運用状況
2日‐11月3日 人権理事会 経済社会文化 経済的、社会的、文化的権利に関する 社会フォーラム(ジュネーブ)
3日 ユーロスタット、9月失業率発表
3日 米国10月雇用統計発表
3日 トルコ10月CPI発表
3日 岸田文雄首相がフィリピン、マレーシア歴訪へ出発(5日帰国)
3日 10月の米雇用統計(労働省)
3日‐11月4日 日中韓環境相会合(名古屋市)
4日‐11月7日  豪首相訪中
5日‐11月10日 第6回中国国際輸入博覧会(上海)
<11月6日‐11月12日>
6日‐11月7日  EU競争力担当相理事会(宇宙)(セビリヤ)
6日‐11月10日 拷問禁止委員会 拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会(ジュネーブ)
7日 中国10月貿易統計発表
7日 米国9月貿易統計発表
7日 欧州宇宙機関(ESA)閣僚サミット(セビリア)
7日 ロシア中央銀行金融政策レポート発表
7日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日‐11月22日 ユネスコ総会、第40回会合(パリー)
7日‐12月22日 UNIDO、第20回総会(パリー)
8日 ドイツ10月CPI発表
8日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
8日‐11月9日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
8日 ブラジル9月月間小売り指数発表
9日 中国10月CPI発表
9日  EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
9日 メキシコ10月CPI発表
9日‐11月10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(予算)(ブリュッセル)
10日 ロシア10月CPI発表
10日 英国2023年第3四半期GDP成長率(速報値)発表
10日 ブラジル10月IPCA発表
10日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
10日 インド2023年9月鉱工業生産指数発表
<11月13日‐11月19日>
13日 インド2023年10月消費者物価指数発表
13日 ウクライナ10月CPI発表
13日 トルコ9月国際収支統計発表
13日‐11月14日  EU外相理事会(ブリュッセル)
13日‐11月15日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会、第60回会合(ウイーン)
13日‐11月17日 UNCCD、条約実施レビュー委員会、第21回会合(サマルカンド・ウズベキスタン)
13日‐11月17日 WFP理事会第2回定例会合(ローマ)
13日‐11月17日 核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯の確立に関する会議、年次会合(ニューヨーク)
14日 米国10月CPI発表
14日 英国労働市場統計(7~9月)発表
15日 中国10月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
15日 英国10月CPI発表
15日  EU一般問題理事会(ブリュッセル)
15日 トルコ10月中央政府予算
15日 フランス10月CPI発表
15日 フランス第3四半期失業率発表
15日 米国10月小売売上高統計発表
16日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
17日 ユーロスタット、10月CPI発表
15日‐11月17日 APEC首脳会議(サンフランシスコ)
19日 アルゼンチン大統領選挙決選投票(予定)
<11月20日‐11月26日>
20日 ウクライナ1~9月貿易統計発表
20日‐11月21日  EU農水相理事会(ブリュッセル)
20日‐11月22日 IAEA、理事会、技術支援・協力委員会(ウイーン)
20日‐11月23日 欧州議会本会議(ストラスブール)
20日‐11月24日 IMO(国際海事機関)第130回理事会(ロンドン)
21日‐11月23日 第38回ASEAN化粧品委員会(ACC)(シンガポール)
22日 オランダ議会選挙
22日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
22日‐11月24日 第13回ASEAN共同体統計システム委員会
23日 OECD2023年第3四半期G20貿易統計発表
23日 トルコ中銀金融政策会議
23日‐11月24日  EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(平等)(パンプローナ)
24日 メキシコ第3四半期GDP発表
<11月27日‐12月3日>
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日‐12月1日 UNCITRAL、第6作業部会(交渉可能な複合一貫輸送書類)、第40回会合(ウイーン)
27日‐12月1日 第20回UNIDO総会(ウイーン)
27日‐11月28日  EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(雇用社会政策)(ブリュッセル)
29日 米国2023年第3四半期GDP発表(改定値)
29日 トルコ10月貿易統計発表
29日 ロシア1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ドイツ10月労働市場統計発表
30日 メキシコ10月雇用統計発表
30日 トルコ2023年第3四半期GDP統計発表
30日 ウクライナ1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
30日  EU一般問題理事会(ブリュッセル)
30日‐12日12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
11月中 ASEAN共同体のポスト2025年ビジョンに関するハイレベルタスクフォース(HLTF-ACV)第10回会合
11月中 欧州委員会秋季経済予測発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問