外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年10月24日(火)

外交・安保カレンダー (10月23-29日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


(米国も含め)巷では、ハマスが拘束している人質約220人の安否・解放の可能性とイスラエルの地上侵攻開始時期ばかりに関心が集まっている。それはそれで当然だろうが、ではウクライナはどうなったのか。南シナ海は大丈夫なのか。世界ではガザに関係なく、多くの深刻な事件が起きているというのに・・・。

それでも、今週もまずはパレスチナ情勢から始めざるを得ない。筆者の見る現時点での状況は次の通りである。

  • イスラエルはハマス軍事部門殲滅のため、一刻も早く地上侵攻を開始したいはず。イスラエルは50万以上の大軍を今ガザとの境界に集結させているが、今回の地上侵攻は、過去二回の大規模地上侵攻に比べ、格段に困難な軍事作戦になる。勿論、正攻法で戦えば、の話であるが・・・。
  • ハマスはイスラエルの地上侵攻を一時間でも遅らせたいはずだ。軍事的には装備も規模もイスラエル軍が圧倒的に優位。これに対しハマスの兵力は3~4万人、イスラム聖戦系が1.5万人だから、ガザ全体でも4.5~5.5万人程度の兵力だ。されど、ハマスには人質と非戦闘員という「人間の盾」とイランの支援がある。
  • 10日ほど前のNYTに「2016年のモスルに対する米イラク連合軍の地上戦」という記事があった。ISIS約8000人に対し連合軍総勢は10万人だったが、それでもモスル解放までに9カ月かかり、多くの非戦闘員が死傷した。人質も地下トンネルも高層ビルもなかった当時のモスルに比べ、今のガザはもっと難しい戦場になるという。
  • アメリカはイスラエルに対働き掛け、地上戦の開始を少しでも遅らせたいはず。非戦闘員退避や人道回廊構築による支援物資供給を実現し、人質と民間人の犠牲者を最小限にしたいからだ。他方、バイデン政権にイスラエルの地上戦開始を阻止する意図はないだろう。悲劇が起きるのは恐らく不可避で、問題はその規模だけだろう。
  • ガザ市内での地上作戦は考えただけでもぞっとする。だが、こうしたガザ・中東情勢の局地的議論だけでは今回の衝突の本質と、現在進行形の国際政治における位置付けは見えてこない。これを正確に理解するためには、パレスチナ問題の現状の理解と、それが「米露中」大国間関係に及ぼす影響につきより深く知る必要がある。

この点については来月号の文芸春秋に出るかもしれない拙稿をご一読願いたい。現在まだ執筆中であるが・・・。また、これとは別に関連コラムをJapanTimesにも書くかもしれない。

さて、続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

10月24日 火曜日 シャリーフ元パキスタン首相、自己の収賄容疑裁判に出廷

【シャリーフも頑張っているが、どうなるか?】

仏大統領、イスラエル訪問し首相と会談(25日まで)

【マクロンは相変わらず何かやりたいようだが、フランスが中東で力を持っていたのは1950年代まで。今の仏外交に往年の輝きはない。】

韓国大統領、カタル訪問

【ここでは触れていないが、今回の中東訪問の目玉は韓国大統領の初のサウジ公式訪問である。21日にリヤド到着、22日にムハンマド皇太子と会談したが、韓国の財閥はサウジでの大型プロジェクト参加や武器契約受注を目指しており、今回のサウジ訪問にはサムスン電子や現代自動車の会長らが同行したそうだ。】

コロンビア大統領、訪中し中国国家主席と会談(26日まで)

【目立たないが中国外交は頑張っている、恐るべし。】

10月25日 水曜日 ロシア首相、国内の宗教指導者と会合

【北京に行ってもあまり成果がなかったらしいプーチンだが、やはり国内基盤固めが必要なのかなぁ?】

10月26日 木曜日 ロシア外相、ベラルーシ訪問

欧州中銀とトルコ中銀が政策金利を決定

EU首脳会議、ブラッセルで開催(27日まで)

10月27日 ロシア中銀が政策金利を決定

10月28日 金曜日 日本でG7貿易担当相会合開催(29日まで)

今週も時間の関係でコメントはこのくらいにさせて頂こう。

<今週以前から続く会議>
9月18日‐11月17日 ICAO(国際民間航空機関)第224回航空委員会(モントリオール)
10月2日‐11月17日 総会、第6委員会、第78回会合(ニューヨーク)
10月2日‐12月11日 総会、第5委員会、第78回会合(ニューヨーク)
10月4日‐11月21日 大陸棚限界委員会、第59回会合(ニューヨーク)
10月9日‐11月3日 人権委員会第、139回会合(ジュネーブ)
10月9日‐10月27日 女性差別撤廃委員会第86回会合(ジュネーブ)
10月9日‐11月3日 人権委員会第139回会合(ジュネーブ)


10月
<10月23日‐10月29日>
23日 EU外相理事会(ルクセンブルグ)
23日 岸田文雄首相が所信表明演説
23日‐10月24日 EU農水相理事会(ルクセンブルグ)
23日‐10月24日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会 非公式会合(レオン)
23日‐10月27日 人権に関する多国籍企業およびその他のビジネス企業に関する法的拘束力のある文書を作成するためのオープンエンドの政府間作業部会、第9回会合(ジュネーブ)
24日 EU一般問題理事会(ルクセンブルグ)
24日 自民党が政調全体会議(党本部)
24日 ロングマーチ2D・LC-3(西昌衛星発射センター・中国)
24日 衆院本会議で各党代表質問
24日‐10月27日 麻薬取締委員会、アジア太平洋麻薬取締機関長会議 第45回会合(バリ島)
25日 米豪首脳会談(ワシントン)
25日 政府が国会同意人事提示
25日 ロシア1~9月鉱工業生産指数発表
25日 サウジアラビア8月貿易統計発表
26日 トルコ中銀金融政策会議
26日 メキシコ9月雇用統計発表
26日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(アテネ)
26日 7~9月期の米GDP速報値(商務省)
26日‐10月29日 エコ・エキスポ・アジア(香港、現地開催)
26日‐10月27日 欧州理事会(ブリュッセル)
27日 10月の東京都区部消費者物価指数(総務省)
27日 ロシア中央銀行理事会
27日 メキシコ9月貿易統計発表
28日 日・東南アジア諸国連合(ASEAN)観光相特別対話(都内)
28日‐10月29日 G7貿易大臣会合(日本・大阪・堺)
29日 トルコ9月貿易統計発表
29日 欧州各国が冬時間入り(英との時差は9時間、仏独伊とは8時間に拡大)
<10月30日‐11月5日>
30日 衆院議員の任期満了まで残り2年
30日‐10月31日 EU競争力担当相理事会・非公式会合(観光)(パルマ)
30日‐11月1日  日銀金融政策決定会合(日銀、31日まで)
30日‐11月1日 人権理事会、開発への権利に関する専門家メカニズム、第8回会合(ジュネーブ)
30日‐11月9日 ILO、運営組織とその委員会、第349回会合(ジュネーブ)
30日‐11月17日 ICAO、第230回理事会(モントリオール)
31日 ブラジル9月全国家計サンプル調査発表
31日 フランス第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
31日 ドイツ第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
31日 国連環境計画(UNEP)常設代表委員会第163回会合(ナイロビ)
31日 UNEP常設代表委員会第162回会合再開(ナイロビ)
31日‐11月1日 ブラジル中央銀行、Copom
31日‐11月1日 米国FOMC
31日‐11月17日 第138回国際麻薬統制理事会(ウイーン)


11月
1日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
1日 ウクライナ1~9月鉱工業生産指数発表
2日 ドイツ9月労働市場統計発表
2日‐11月3日 人権理事会 経済社会文化 経済的、社会的、文化的権利に関する 社会フォーラム(ジュネーブ)
3日 ユーロスタット、9月失業率発表
3日 米国10月雇用統計発表
3日 トルコ10月CPI発表
5日‐11月10日 第6回中国国際輸入博覧会(上海)
6日‐11月7日  EU競争力担当相理事会(宇宙)(セビリヤ)
6日‐11月10日 拷問禁止委員会 拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会(ジュネーブ)
7日 中国10月貿易統計発表
7日 米国9月貿易統計発表
7日 欧州宇宙機関(ESA)閣僚サミット(セビリア)
7日 ロシア中央銀行金融政策レポート発表
7日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日‐11月22日 ユネスコ総会、第40回会合(パリー)
7日‐12月22日 UNIDO、第20回総会(パリー)
8日 ドイツ10月CPI発表
8日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
8日‐11月9日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
8日 ブラジル9月月間小売り指数発表
9日 中国10月CPI発表
9日  EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
9日 メキシコ10月CPI発表
9日‐11月10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(予算)(ブリュッセル)
10日 ロシア10月CPI発表
10日 英国2023年第3四半期GDP成長率(速報値)発表
10日 ブラジル10月IPCA発表
10日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
10日 インド2023年9月鉱工業生産指数発表
13日 インド2023年10月消費者物価指数発表
13日 ウクライナ10月CPI発表
13日 トルコ9月国際収支統計発表
13日‐11月14日  EU外相理事会(ブリュッセル)
13日‐11月17日 UNCCD、条約実施レビュー委員会、第21回会合(サマルカンド・ウズベキスタン)
13日‐11月17日 WFP理事会第2回定例会合(ローマ)
13日‐11月17日 核兵器およびその他の大量破壊兵器のない中東地帯の確立に関する会議、年次会合(ニューヨーク)
14日 米国10月CPI発表
14日 英国労働市場統計(7~9月)発表
15日 中国10月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
15日 英国10月CPI発表
15日  EU一般問題理事会(ブリュッセル)
15日 トルコ10月中央政府予算
15日 フランス10月CPI発表
15日 フランス第3四半期失業率発表
15日 米国10月小売売上高統計発表
16日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
17日 ユーロスタット、10月CPI発表
15日‐11月17日 APEC首脳会議(サンフランシスコ)
19日 アルゼンチン大統領選挙決選投票(予定)
20日 ウクライナ1~9月貿易統計発表
20日‐11月21日  EU農水相理事会(ブリュッセル)
20日‐11月23日 欧州議会本会議(ストラスブール)
21日‐11月23日 第38回ASEAN化粧品委員会(ACC)(シンガポール)
22日 オランダ議会選挙
22日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
22日‐11月24日 第13回ASEAN共同体統計システム委員会
23日 OECD2023年第3四半期G20貿易統計発表
23日 トルコ中銀金融政策会議
23日‐11月24日  EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(平等)(パンプローナ)
24日 メキシコ第3四半期GDP発表
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日‐12月1日 UNCITRAL、第6作業部会(交渉可能な複合一貫輸送書類)、第40回会合(ウイーン)
27日‐12月1日 第20回UNIDO総会(ウイーン)
27日‐11月28日  EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(雇用社会政策)(ブリュッセル)
29日 米国2023年第3四半期GDP発表(改定値)
29日 トルコ10月貿易統計発表
29日 ロシア1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ドイツ10月労働市場統計発表
30日 メキシコ10月雇用統計発表
30日 トルコ2023年第3四半期GDP統計発表
30日 ウクライナ1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
30日  EU一般問題理事会(ブリュッセル)
30日‐12日12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
11月中 ASEAN共同体のポスト2025年ビジョンに関するハイレベルタスクフォース(HLTF-ACV)第10回会合
11月中 欧州委員会秋季経済予測発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問