キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2023年10月3日(火)
[ 2023年外交・安保カレンダー ]
先週から世界各地で大きな事件が続いているというのに、10月1日に帰国して心底驚いた。日本でのトップニュースは「某アイドル系芸能事務所の社名変更」だったのだから。筆者は芸能レポーターではないので立ち入ったコメントは慎みたいが、今回ほど世界と日本のマスメディアの「ギャップ」「格差」を痛感させられたことはない。
やはり、「日本にはジャーナリストがいない」と言ったNew York Times紙記者の友人は正しかったのか。それはさておき、いつもの通り、まずは欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。
10月3日火曜日 仏外相、アルメニア訪問
【アゼルバイジャン西部のナゴルノ・カラバフは、アルメニア正教のアルメニア人(多数派)とイスラム・トルコ系アゼルバイジャン人が暮らす、元々はイラン領だった。その後同地はロシア帝国に編入され、ロシア革命後に独立したアルメニアとアゼルバイジャンは結局ソ連に編入されたが、当時からナゴルノ・カラバフの帰属は常に問題となっていた。91年に両国はソ連から独立するが、アルメニアの支援を受けたナゴルノ・カラバフも「アルツァフ共和国」として独立を宣言したため、ソ連末期に始まった同地での流血騒乱はその後も長く続いた。今回は二度目の大規模軍事衝突だが、アゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフをほぼ制圧したため、地域の戦略バランスは急変しつつある。それにしても、相変わらず、フランスは素早い動きを示しているなぁ。】
ロシア外相、アブハジア・南オセチアの指導者と会談
【アブハジア・南オセチアといえば、ロシアがジョージアから奪った土地であるが、アゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフ制圧後、こうした会合が開かれるのは決して偶然ではなかろう。】
欧州議会、ナゴルノ・カラバフ問題を審議
【欧州諸国が関心を持つのは当然だろうが、欧州議会は本年4月にアゼルバイジャンを非難する決議を採択し、アゼルバイジャン側もこれに激しく反発したため、アゼルバイジャンとEUの関係は既に悪化している。今後欧州はどう対応するのだろうか。】
10月4日水曜日 OPEC+石油相、合同モニタリング委員会会合
【OPEC+の事務局長は今後も需要の増大で石油価格は高止まりするだろうと述べたそうだ。だが、需要増大以上に、サウジの減産等も油価高騰の理由ではないのか。サウジアラビアの国家予算は今後赤字となる見込みだそうだから、当分1バレル当たり100ドルは覚悟しなければならないのかなぁ・・・。】
メキシコ、米国と治安問題高級事務レベル会合を開催
【バイデン政権にとって不法移民問題は頭痛の種だが、これで問題が解決するとは思えない。】
10月5日木曜日 IMFトップが政策演説
アルメニア首相とアゼルバイジャン大統領が五者協議に参加
【ナゴルノ・カラバフ問題を議論する五者協議は、アルメニア、アゼルバイジャン、欧州委員会、独仏の五者による協議で、本年6月にモルドバで開かれたが当時は決裂している。今回はアゼルバイジャンによる制圧後の初の会議となるが、成果は未知数としか言いようがない。】
10月6日金曜日 インド中銀、政策金利を発表
10月8日日曜日 ルクセンブルグ議会選挙
アルゼンチン大統領選、討論会
ドイツで州レベル選挙実施
なお、今回の「南欧」旅行で考えたことは、今週の産経新聞WorldWatchとJapanTimesのコラムに書いたのでご一読願いたい。
〇アジア
2日からフィリピン・米海軍が、ルソン島南部沖で12日間にわたり、海上自衛隊を含む過去最多9か国の合同演習を実施する。南シナ海進出を活発化させる中国が念頭にあるのだろうが、それにしても、フィリピンは、デュテルテ前大統領時代とは異なり、対中関係では「吹っ切れた」のだろうか、以前とはまるで違う動きに見える。
〇欧州・ロシア
先月末のスロバキア議会選挙で、ウクライナへの軍事支援の停止とロシアへの制裁に反対する元首相率いる左派野党が得票率で第一党になった。但し、単独過半数ではないため、今後の連立の行方に注目だ。これがスロバキア特有の現象なのか、それとも今後東欧に「ウクライナ支援疲れ」が更に波及していくのか、が気になる。
〇中東
イラクで100人以上が死亡した結婚式披露宴での火災で消息が分からなかった新郎新婦が助かっていたそうだ。「不幸中の幸い」と言っても二人には響かないだろう。イラクは外務省時代に2回も赴任した辛い思い出の多い国だが、戦争や内戦が終わっても、まだイラク人の受難は続くのだろうか。とても悲しい気持ちになる。
○南北アメリカ
米下院共和党保守強硬派が、民主党と組んで米政府機関閉鎖を土壇場で回避したマッカーシー下院議長の解任動議を提出した。トランプ前大統領は自社資産過大評価による不当利益で提訴され、ニューヨーク州司法当局から日本円で370億円の返還などを求められている。共和党のまともな連中はどこへ行ったのか?彼らに日本のジャニーズ事件は笑えないだろう。
〇インド亜大陸
上記以外に特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
2023年 重要日程レポート40【10月2日版】
<今週以前から続く会議>
9月11日‐10月13日 人権理事会、第54回会議(ジュネーブ)
9月18日‐10月6日 国際民間航空機関(ICAO)、第230回会合委員会段階(モントリオール)
9月18日‐11月17日 ICAO(国際民間航空機関)第224回航空委員会(モントリオール)
9月25日‐10月13日 経済的、社会的及び文化的権利委員会 第74回会議(ジュネーブ)
10月
2日 ユーロスタット、8月失業率発表
2日 23年度上半期と9月の新車販売台数(自販連・全軽自協)
2日 トランプ前米大統領の不動産価値操作を巡る民事訴訟の裁判が開始(ニューヨーク)
2日 ノーベル医学生理学賞発表(日本時間午後6時半、スウェーデン・カロリンスカ研究所)
2日‐10月4日 第2回ASEAN財務相・中央銀行総裁会議(AFMGM)および関連会議(インドネシア)
2日‐10月5日 欧州議会本会議(ストラスブール)
2日‐10月6日 国連貿易開発会議(UNCTAD)、プログラム計画及びプログラム実績に関する作業部会、第86回会合(ジュネーブ)
2日‐11月17日 総会、第6委員会、第78回会合(ニューヨーク)
2日‐12月11日 総会、第5委員会、第78回会合(ニューヨーク)
3日 ノーベル物理学賞発表(スウェーデン王立科学アカデミー)
3日 ノーベル物理学賞発表(日本時間午後6時45分、ストックホルム・スウェーデン王立科学アカデミー)
3日 バイデン米大統領の次男ハンター氏が出廷(東部デラウェア州の連邦地裁)
3日 国際法の教授、研究、普及、およびより広範な理解における国際連合援助プログラムに関する諮問委員会、第58回会合(ニューヨーク)
3日 WTOサービス貿易理事会
3日 ブラジル8月鉱工業生産指数発表
3日 トルコ9月CPI発表
3日‐10月6日 麻薬取締委員会、ラテンアメリカ・カリブ海諸国麻薬取締機関長会議、第31回会合(キト)
4日 ノーベル化学賞発表(スウェーデン王立科学アカデミー、日本時間午後6時45分、スウェーデン王立科学アカデミー)
4日 OPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)
4日‐10月6日 女子差別撤廃委員会、女子差別撤廃条約選択議定書に基づく通報作業部会、第 57 回会合(ジュネーブ)
4日 ロシア2023年第2四半期需要項目別GDP(速報値)発表
4日‐10月18日 ユネスコ理事会第217回会合(パリー)
4日‐11月21日 大陸棚限界委員会、第59回会合(ニューヨーク)
5日 参院徳島・高知選挙区補欠選挙が告示
5日 台湾9月CPI発表
5日 韓国9月CPI発表
5日‐10月6日 共産党第9回中央委員会総会(以上都内)
6日 メキシコ9月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日 欧州理事会非公式首脳会合(グラナダ)
6日 UNEP常設代表委員会第163回会合(ナイロビ)
8日 愛知県蒲郡市長選投開票
9日 メキシコ9月CPI発表
9日 EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会・雇用社会政策(ルクセンブルグ)
9日‐11月3日 人権委員会第、139回会合(ジュネーブ)
9日‐10月10日 2023年世界公衆衛生国際会議(マレーシア)
9日‐10月13日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家の紛争解決改革)、第46回会合(ウイーン)
9日‐10月13日 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、執行委員会、第74回会合(ジュネーブ)
9日‐10月13日 国連拷問被害者任意基金評議員会 第58回会合(ジュネーブ)
9日‐10月15日 IMF・世界銀行年次総会(モロッコ・マラケシュ)
9日‐10月27日 女性差別撤廃委員会第86回会合(ジュネーブ)
9日‐11月3日 人権委員会第139回会合(ジュネーブ)
10日‐10月13日 化学兵器禁止機関第104回理事会(デン・ハーグ)
11日 米FOMC議事要旨(9月19、20日開催分)(FRB)
11日 トルコ8月国際収支統計発表
11日 ブラジル9月IPCA発表
11日 ロシア9月CPI発表
11日 ウクライナ9月CPI発表
11日‐10月13日 ロシア・エネルギーウィーク(モスクワ)
12日 メキシコ8月鉱工業生産指数発表
12日 CIS外相会議(キルギス・ビシケク)
12日 インド8月鉱工業生産指数発表
12日 インド9月CPI統計発表
12日‐10月13日 G20財務大臣・中央銀行総裁会議(マラケシュ)
12日‐10月13日 アフリカにおけるSTI4SDGsロードマップの能力構築と採用拡大に関するワークショップ(アディスアベバ)
13日 CIS首脳会議(ビシケク)
13日 フランス9月CPI発表
13日 中国9月貿易統計発表
13日 中国9月CPI発表
13日‐10月15日 IMF・世界銀行年次総会(モロッコ・マラケシュ)
15日 サウジアラビア9月CPI発表
16日 トルコ9月中央政府予算
16日 EU環境相理事会(ルクセンブルグ)
16日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルグ)
16日‐10月20日 第16回ASEAN中小企業調整委員会(ACCMSME)会議および関連会議(シンガポール)
16日‐10月20日 UNCITRAL、第4作業部会(電子商取引)、第66回会合(ウイーン)
17日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルグ)
17日‐10月20日 租税問題の国際協力に関する専門家委員会、第27回会合(ジュネーブ)
18日 中国第3四半期経済指標(GDP、固定資産投資、社会小売品販売総額等)発表
18日 英国9月CPI発表
18日 ブラジル8月月間小売り指数発表
18日 ユーロスタット、9月CPI発表
19日 拷問及びその他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の締約国、第19回会合(ジュネーブ)
19日‐10月20日 EU外相理事会・非公式会合(バレンシア)
19日‐10月20日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルグ)
20日 メキシコ8月小売・卸売販売指数発表
20日 ウクライナ1~8月貿易統計発表
22日 アルゼンチン大統領選挙本選、アルゼンチン州知事選挙(ブエノスアイレス州・カタマルカ州・エントレ・リオス州)、ブエノスアイレス自治市長選挙(アルゼンチン・ブエノスアイレス市)
23日 EU外相理事会(ルクセンブルグ)
23日‐10月24日 EU農水相理事会(ルクセンブルグ)
23日‐10月24日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会 非公式会合(レオン)
23日‐10月27日 人権に関する多国籍企業およびその他のビジネス企業に関する法的拘束力のある文書を作成するためのオープンエンドの政府間作業部会、第9回会合(ジュネーブ)
24日 EU一般問題理事会(ルクセンブルグ)
24日‐10月27日 麻薬取締委員会、アジア太平洋麻薬取締機関長会議 第45回会合(バリ島)
25日 ロシア1~9月鉱工業生産指数発表
25日 サウジアラビア8月貿易統計発表
26日 トルコ中銀金融政策会議
26日 メキシコ9月雇用統計発表
26日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(アテネ)
26日‐10月29日 エコ・エキスポ・アジア(香港、現地開催)
26日‐10月27日 欧州理事会(ブリュッセル)
27日 ロシア中央銀行理事会
27日 メキシコ9月貿易統計発表
28日‐10月29日 G7貿易大臣会合(日本・大阪・堺)
29日 トルコ9月貿易統計発表
30日‐11月17日 ICAO、第230回理事会(モントリオール)
30日‐10月31日 EU競争力担当相理事会・非公式会合(観光)(パルマ)
30日‐11月1日 日銀金融政策決定会合(日銀、31日まで)
30日‐11月1日 人権理事会、開発への権利に関する専門家メカニズム、第8回会合(ジュネーブ)
31日 ブラジル9月全国家計サンプル調査発表
31日 フランス第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
31日 ドイツ第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
31日 国連環境計画(UNEP)常設代表委員会第163回会合(ナイロビ)
31日 UNEP常設代表委員会第162回会合再開(ナイロビ)
31日‐11月1日 ブラジル中央銀行、Copom
31日‐11月1日 米国FOMC
31日‐11月17日 第138回国際麻薬統制理事会(ウイーン)
11月
1日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
1日 ウクライナ1~9月鉱工業生産指数発表
2日 ドイツ9月労働市場統計発表
3日 ユーロスタット、9月失業率発表
3日 米国10月雇用統計発表
3日 トルコ10月CPI発表
5日‐11月10日 第6回中国国際輸入博覧会(上海)
6日‐11月7日 EU競争力担当相理事会(宇宙)(セビリヤ)
7日 中国10月貿易統計発表
7日 米国9月貿易統計発表
7日 欧州宇宙機関(ESA)閣僚サミット(セビリア)
7日 ロシア中央銀行金融政策レポート発表
7日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日‐12月22日 UNIDO、第20回総会(パリー)
8日 ドイツ10月CPI発表
8日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
8日‐11月9日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
8日 ブラジル9月月間小売り指数発表
9日 中国10月CPI発表
9日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
9日 メキシコ10月CPI発表
9日‐11月10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(予算)(ブリュッセル)
10日 ロシア10月CPI発表
10日 英国2023年第3四半期GDP成長率(速報値)発表
10日 ブラジル10月IPCA発表
10日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
10日 インド2023年9月鉱工業生産指数発表
13日 インド2023年10月消費者物価指数発表
13日 ウクライナ10月CPI発表
13日 トルコ9月国際収支統計発表
13日‐11月14日 EU外相理事会(ブリュッセル)
14日 米国10月CPI発表
14日 英国労働市場統計(7~9月)発表
15日 中国10月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
15日 英国10月CPI発表
15日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
15日 トルコ10月中央政府予算
15日 フランス10月CPI発表
15日 フランス第3四半期失業率発表
15日 米国10月小売売上高統計発表
16日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
17日 ユーロスタット、10月CPI発表
15日‐11月17日 APEC首脳会議(サンフランシスコ)
19日 アルゼンチン大統領選挙決選投票(予定)
20日 ウクライナ1~9月貿易統計発表
20日‐11月21日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
20日‐11月23日 欧州議会本会議(ストラスブール)
21日‐11月23日 第38回ASEAN化粧品委員会(ACC)(シンガポール)
22日 オランダ議会選挙
22日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
22日‐11月24日 第13回ASEAN共同体統計システム委員会
23日 OECD2023年第3四半期G20貿易統計発表
23日 トルコ中銀金融政策会議
23日‐11月24日 EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(平等)(パンプローナ)
24日 メキシコ第3四半期GDP発表
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日‐12月1日 UNCITRAL、第6作業部会(交渉可能な複合一貫輸送書類)、第40回会合(ウイーン)
27日‐12月1日 第20回UNIDO総会(ウイーン)
27日‐11月28日 EU雇用社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(雇用社会政策)(ブリュッセル)
29日 米国2023年第3四半期GDP発表(改定値)
29日 トルコ10月貿易統計発表
29日 ロシア1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ドイツ10月労働市場統計発表
30日 メキシコ10月雇用統計発表
30日 トルコ2023年第3四半期GDP統計発表
30日 ウクライナ1~10月鉱工業生産指数発表
30日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
30日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
30日‐12日12日 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)(UAE・ドバイ)
11月中 ASEAN共同体のポスト2025年ビジョンに関するハイレベルタスクフォース(HLTF-ACV)第10回会合
11月中 欧州委員会秋季経済予測発表
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問