外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年8月22日(火)

外交・安保カレンダー(8月21-27日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


今週は先週末にキャンプデービッド山荘で開かれた日米韓首脳会談を取り上げるが、まずはいつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きから始めよう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の専門家たちの今週の関心は次の通りだ。

8月22日 火曜日 パキスタン前首相、収賄有罪判決に反論
【カーン前首相は5日に収賄罪で禁錮3年の判決を受け、8日には選挙管理委員会が今後5年間公民権停止を決定したため、国会議員の資格も失った。これで各種選挙への立候補も認められなくなるので前首相が反発するのは当然だが、名誉回復の道程は遠いだろう。】

カンボジア新議会、新首相を選出
7月の総選挙で改選された下院がフン・セン首相の後継に長男フン・マネット氏を選出し、世襲による新内閣が発足する。フン・センは71歳で筆者と同世代だが、既に40年近く首相の座にあったのに、まだ息子を後継にして権力維持しようというのかね。権力欲は枯れないねぇ。カンボジアは王室も、首相府も世襲ということかい?】

南アフリカでBRICS首脳会議(24日まで)
BRICSかぁ。随分色褪せたなぁ、と言ったら失礼か?】

8月23日 水曜日 インド、月の裏側に軟着陸を目指す
【ロシアは21日に着陸に失敗したが、インドは探査機「チャンドラヤーン3号」で同国初の着陸を目指しているらしい。ちなみに、3日後の26日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が日本の実証機「スリム」で高精度の月面着陸に挑むそうだ。】

ジンバブエで大統領選挙
【ジンバブエではロバート・ムガベ前大統領死後初の選挙となるが、その公正性に疑問が生じている。選挙戦の一部として無料のフライドチキンが配られたなどと報じられたが、それ以上に問題なのは選挙自体に対する根本的な懸念や投票操作への恐れがあることだという。これは泥仕合になりそうだなぁ。】

8月24日 木曜日 トルコとインドネシアの中銀が公定歩合を審議
【一か月前、トルコ中央銀行は政策金利を二か月連続で引き上げ、15%から17.5%となった。年38%台に及ぶ激しいインフレの抑制が目的だろうが、市場では「不十分」との見方が根強いが、今回はどうだろうか?】

インド、G20貿易・投資大臣会合を主催(25日まで)
【今のG20で新たな決定は不可能だろうね。】

8月25日 金曜日
インド首相、ギリシャ訪問
ブラジル大統領、アンゴラ訪問(26日まで)

8月26日 土曜日 ガボンで総選挙
【ガボンはアフリカ中部の産油国だが、現職のボンゴ大統領は、41年間政権の座にあり父でもある前大統領の死後、後継の大統領として君臨。父子で計55年間もボンゴを支配する「王朝」だが、現職の勝利は確実なのだそうだ。そういえば、今年習近平国家主席はこの大統領と会っている。中国は相変わらず独裁者が好きなようだ。】

さて、冒頭にも書いた通り、今週の筆者の関心事は日米韓首脳会議と「キャンプデービッド精神」と題された共同声明だ。先週は米国出張中にNYTとワシントンポストから取材を受けたと書いた。幸い、筆者のコメントの一部が記事で引用されたらしい。理由は不明だが、恐らくタイミングが良かったということかなぁ……。

両社とも一回の取材は30分弱でかなり長々とコメントしたのだが、通常、あれだけ喋っても引用されるはほんの一言、二言。引用個所は「中朝に対し『正しいメッセージ』を送る意味がある」とする部分だったが、なぜか「韓国野党勢力に対する強いメッセージにもなる」との部分は採用されなかった。この点はあまり関心がないのかなぁ。

それはさておき、この日米韓首脳会合前、たまたま筆者も別件で米国出張していたが、現地メディアの関心と評価は予想以上だった。キャンプデービッドといえば、19789月、米大統領がエジプトとイスラエル首脳を招き国交樹立やシナイ半島返還などの合意を仲介した場所。筆者は外務省入省直後だったので思い入れが深い。

なぜ今回の共同声明は「合意」ではなく「精神」と題されたのか? なぜ米側は首脳会談を急いだのか? 三国連携の制度化は定着するのか? 韓国の外交戦略は変わるのか? 中国はどう出るか? 韓国でゴールポストは再び動くのか? 以上が筆者の問題意識だったが、これらについては今週の産経新聞に書いたのでご一読願いたい。

〇アジア
政治空白が続くタイでタクシン元首相派の第2党が、激しく対立してきた軍に近い保守政党との連立政権樹立構想を発表したという。タクシン派の復権につながるのかもしれないが、これでタイ内政が安定するとは思えない。総選挙で第1党になった民主派政党を排除した大連立だから、国内の反対派は黙ってはいないだろう。

〇欧州・ロシア
デンマークとオランダがF16戦闘機をあわせて60機近くウクライナに供与するらしい。既に米政府も了解していて、年明けにも第一弾の6機が出発するという。ウクライナの要請にようやく答える形となったが、これって典型的な「兵力の逐次投入」ではないのかね? 残念だが、これではウクライナは勝てないだろう。

〇中東
やや旧聞だが、サウジで映画「バービー」が公開されているそうだ。日本ではオッペンハイマー映画との関係で論じられたが、欧米など一部からはこの映画が描く人間社会が圧倒的な「男社会」だと批判されたそうだ。他方、クウェート、レバノン、アルジェリアなどでは公開禁止になったようで、「所変われば評価も変わる」ということか。

〇南北アメリカ
23日に米大統領選挙出馬予定の共和党候補者による初の討論会があるが、トランプ氏は参加しないそうだ。アイオワ州でトランプ支持率は断トツの42%で他の候補者を大きく引き離しているそうだが、それは討論不参加の正当な理由にはならない。困ったことだが、トランプ人気は本物、仮にトランプがいなくなっても長く続くだろう。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


〈今週以前から続く会議〉
7月5‐822日 大陸棚の限界に関する委員会、第58回会議(ニューヨーク)
7月31‐915日 軍縮会議第3部(ジュネーブ)
8月14‐98日 障害者権利委員会第29回会合(ジュネーブ)
8月17‐822日 RCEP閣僚会議(インドネシア)
8月17‐822日 第55ASEAN経済大臣会議および関連会議(インドネシア)
8月20‐824日 第17回国境を越えた犯罪に関する第15ASEAN閣僚会議(AMMTC)とその関連会議(インドネシア)

821‐27日〉
21日 SpaceX・ファルコン9、スターリンク(6-10)(ケープカナベラル空軍基地)
21日 ウクライナ2023年上半期貿易統計発表
21日‐91日 情報通信技術の犯罪目的使用への対処に関する包括的国際条約策定特別委員会、第6回会合(ニューヨーク)
21日‐91日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会 作業部会Bおよび非公式・専門家会合、第60回会合(ウイーン)
22日24日 第15BRICSサミット(南アフリカ共和国・ダーバン)
22日26日 第41ASEANエネルギー大臣会議 (バリ)
23日 ロシア17月鉱工業生産指数発表
23日 ジンバブエ大統領選
23日24日 ASEAN首都総裁・市長会議 (ジャカルタ)
24日 ウクライナ独立記念日
24日 OECD2023年第2四半期G20貿易統計発表
24日25日 G20貿易・投資相会合(インド・ジャイプール)
25日 SpaceXNASA商業クルー計画(NASA CCP)・ファルコン9Crew-7(ケネディー宇宙空軍基地)
25日 8月の東京都区部消費者物価指数(総務省)
26日 ガボン大統領選

828‐93日〉
8月
28日 メキシコ7月貿易統計発表
28日 経団連北海道経済懇談会
28日‐91日 UNDP/UNFPA/UNOPS理事会 第2回定例会合(ニューヨーク)
28日‐91日 人権理事会 恣意的拘禁作業部会 第97回会合(ジュネーブ)
29日 メキシコ第2四半期GDP発表
29日 7月の労働力調査(総務省)
29日 7月の有効求人倍率(厚労省)
30日 米国2023年第2四半期GDP発表(改定値)
30日 8月の消費動向調査(内閣府)
30日31日 独家電見本市IFA報道公開
31日 メキシコ7月雇用統計発表
31日 ブラジル7月全国家計サンプル調査発表
31日 ドイツ7月労働市場統計発表
31日 インド2023年度第1四半期GDP発表
31日‐94日 ローマ教皇がモンゴル初訪問

9月
1日 ウクライナ17月鉱工業生産指数発表
1日 4~6月期の法人企業統計(財務省)
1日 米国8月雇用統計発表
1日 ブラジル第2四半期GDP発表
1日 米国2024会計年度開始
3日 第43ASEAN首脳会議に向けたASEAN経済共同体(AEC)理事会(ジャカルタ)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問